Vol.091【オオカミと呼ばれた男】
2017年4月4日 未明
青柳来夢殺害事件、発生。
神奈川県警。
被害者は派遣会社勤務、
青柳来夢(23)男性。
第一発見者は、神奈川県秦野市山中にある白木建設の木材置き場から数キロ離れた山林で、早朝、木材確認に来た社員だった。
傷口は鋭利な刃物によるもので、刃は心臓部まで達していた。
死因は失血死。
また、遺体発見現場とは別の場所で殺害された可能性が高く、死体遺棄されたものと見られている。
衣服には争った痕跡がほとんど見当たらない。
被害者があまり抵抗していないことから、顔見知りによる犯行が濃厚。
しかし――
凶器は未だ発見されておらず、被害者の携帯電話も見つかっていない。
犯人が男か女かすら、現時点では断定できない状態だった。
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被害者・青柳来夢の身辺を調べた結果、小学生までは児童養護施設『ひめぐりの家』で過ごしていたことが判明。
その後、農業関係の高校へ進学するも中退。
そして、その原因となったと思われる人物が浮かび上がってきた。
高校時代の交際相手、三奈月沙羅 22歳。
彼女が大学進学を決めた際、被害者は強く反対していたという。
さらに、三奈月沙羅の知人女性からの証言では、別れ話をきっかけに、被害者の付きまとい行為は異常なほどエスカレートしていたらしい。
その後――
東都渋谷署へ、三奈月沙羅本人からストーカー被害届が提出されていた。
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捜査員A「三奈月沙羅が犯人の可能性は?」
捜査本部長「可能性は……あるかもしれない。
今後、この件について捜査本部を設ける。
管理官は立道駿だ。
事件解決に向かって頑張って頂きたい。」
捜査員B「おい……
あの立道さんが今回の管理官か!」
捜査員A「らしいな!
この事件も早期解決だろうな!」
新人捜査員C「どうしてですか?
そんなに凄い人なんですか?立道さんって……」
捜査員A「お前、新人だから教えといてやるよ。
どんな事件でも、暴力団絡みでも、神奈川県警の立道に追われたら終わり――
そう言われてる。」
捜査員B「闇の世界じゃ有名なんだよ。
“立道に追われた奴は逃げ切れない”ってな。」
新人捜査員C「そ、そんなに……」
捜査員A「あぁ。一見すると紳士的な人だ。
だが、その捜査手法は見た目とは真逆だ。」
捜査員B「本部長クラスになれば普通は指揮中心だが、あの人は違う。基本、単独で動く人だ。」
捜査員A「勘と嗅覚、そして異常な行動力。
毒を以て毒を制す――
あの人はそういうタイプだ。」
捜査員B「だから裏じゃこう呼ばれてる。」
神奈川県警のオオカミ
別名、
“オオカミと呼ばれた男”だ。
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カツ……
カツ……
静まり返った捜査本部に、革靴の音が響く。
高身長にダークグレーのスーツ。
鋭い眼光。
その男が部屋へ入った瞬間、空気が変わった。
立道 駿 54歳
神奈川県警 刑事部 捜査第一課 管理官。
数々の凶悪事件を解決してきた男。
立道は机の上へ事件資料を置き、ゆっくり口を開く。
立道「……妙だな。」
捜査員達が一斉に立道を見る。
立道「死体の傷。
争った痕跡の少なさ。
凶器なし。
携帯なし。
まるで、最初から誰かをハメる為に作られた事件みたいだ。」
新人捜査員C「ハ、ハメる……?」
立道「普通の痴情のもつれなら、ここまで綺麗にはならない。」
立道は青柳来夢の写真を見つめる。
立道「この被害者、死ぬ覚悟を決めてた目をしている。
だが同時に、“誰かを道連れにしたい目”でもある。」
その言葉に、捜査員達の表情が変わる。
立道は煙草を取り出し、窓の外の夜を見つめた。
立道「面白いな……。
この事件、ただのストーカー殺人じゃ終わらないぞ。」




