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Vol.088【ダーク・インビテーション】

挿絵(By みてみん)


沙羅「でも……

漓久に黙ってる訳にはいかないよ?」


ケンジ「……時が来たら、必ず話す。」


ケンジは静かに煙草へ火をつける。


ケンジ「来夢が、

“過去の事で詫びを入れたい”

って言ってきた時——

俺は漓久にも付いてきてもらった。」


沙羅「……うん」


ケンジ「来夢に対して俺の歯止めが効かなくなった時は、漓久に止めてもらうつもりだった。」


沙羅「それが正解だったのかもね。」


ケンジ「本当はあの時……

俺と来夢と空央が、同じ児童養護施設で育った事。

俺達が、どんな幼少期を過ごしてきたか。

そして……俺がネバーランドで、空央のアバター“あお♡”や、SoRaと繋がっていた事。

少しでも漓久に、“施設時代の俺達”を理解して欲しかったんだよ。

でもやっぱり話せなかった!

話そうと思うとアイツの言葉がチラつく!

俺は何度こんな事を繰り返してきたのか。」



沙羅「アイツって……。」


ケンジ「……」


沙羅「どうしても言えないんだね。」


ケンジ「今はな……」



そして小さく呟く


一生に1度の願いか……

俺はアイツの目を見て信じた。



ケンジは苦笑する。



ケンジ「沙羅とみつき、お前達にはいつかすべて話さなくてはいけない時がくるだろうな!」



沙羅「ケンジ……」



ケンジ「結局、漓久には隠し事ばっかりだ。

情けねぇよな……

最低の親友だよ、俺は。」


沙羅「そんな事ない。」



沙羅は優しく首を振った。



沙羅「漓久なら、ちゃんと分かってくれるよ。」


沙羅「ケンジしか居ないじゃん。

“親友”って呼べる相手。」


ケンジ「……あぁ。」



ケンジは小さく頷く。



ケンジ「そう願いてぇな。」


沙羅「今日は、ケンジの事たくさん聞けてよかった。

ありがとう。」


ケンジ「あぁ。」


沙羅「ねぇ、ケンジ?」


ケンジ「いつか絶対話すんだよ!?

私とみつきに!」



ケンジは少しだけ柔らかい顔になる。



ケンジ「あぁ!わかってる。

お前も色々大変だったな。

今日はもう帰って休め。」


沙羅「うん、わかった。」


______________________



2時間後


トゥルルル……トゥルルル……

ガチャ!


ケンジ「……なんだ。」


来夢「お前と沙羅……やっぱ俺、許せねぇわ。」


ケンジ「来夢……お前、一体!」


来夢「沙羅は頂く。」


ケンジ「……!!」


来夢「永遠にな。」



来夢の笑い声が、電話越しに不気味に響く。



来夢「沙羅は、俺のモンになるんだよ。」


ケンジ「どういう事だ!!おい、来夢!!」


来夢「そういう事だよ、ケンジ。

“永遠”だ。」


ケンジ「待て来夢!!お前が恨んでるのは俺のはずだろ!!

やるなら俺を狙え!!」


来夢「ざけんな!!!!」



突然、来夢の怒声が響き渡る。



来夢「お前に……お前に俺の何が分かるんだよ!!」


ケンジ「来夢……」


来夢「お前は!!俺から何もかも奪いやがった!!

何もかもだ!!」


ケンジ「奪ってなんか——」


来夢「俺の過去も!!心も!!沙羅も!!

全部、お前が狂わせたんだよ!!」


ケンジ「それはお前が!!」


来夢「うせぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!」


ケンジ「っ……!!」


来夢「……だが、もう許してやる。」



来夢の声色が、不気味なほど静かになる。



来夢「最後の試練を、クリア出来たらな。」


ケンジ「……何だと?」


来夢「今から200万持って、神奈川の秦野市まで来い。」


ケンジ「秦野……?ここからだと1時間以上かかる!」


来夢「それでいいんだよ!俺が今派遣されてる、“白木建設”の木材置き場だ。

ナビで調べりゃ出る。」


ケンジ「何考えてやがる……!!」


来夢「これをクリアしたら、今後、沙羅には手ぇ出さねぇ。」


ケンジ「な、なんだと……!?」



ケンジは思わず息を呑む。



ケンジ「そんな大金、急に用意出来る訳ねぇだろ!!」


来夢「知るかよ。」



来夢は冷たく吐き捨てた。



来夢「タイムリミットは12時。」


来夢「それを過ぎたら——沙羅を殺る。」


ケンジ「っ……!!」


来夢「俺は本気だぜ?」


ケンジ「来夢……お前……!!」


来夢「早く来ねぇと、時間なくなるぞ?」



ガチャ!!

通話が切れる。



ケンジ「クソッ!!!!」



ケンジは勢いよく壁を殴りつけた。



ケンジ「お前って奴は……どこまで卑劣なんだよ!!」



ケンジは震える拳を握り締める。



ケンジ「沙羅には、指一本触れさせねぇ……!!

絶対に!!」

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