Vol.082【ミクスト・テキーラ】
2017年3月24日 PM7:10
漓久とケンジは静かに店のドアを開けた。
薄暗い照明。
古びた木のカウンター。
煙草とアルコールが混ざった、歌舞伎町特有の匂い。
店に入ってすぐ右側の席で、
来夢はすでに酒を飲んでいた。
ケンジ「来夢!
約束通り来てやったぜ。」
来夢「よぉ〜!!ケンジ〜!!
久しぶりじゃねぇか!!会いたかったぜぇ?」
ケンジ「今日は電話で話したダチも一緒だ。
南っていう。」
来夢「アンタがケンジのダチか!
こりゃまたイケメン様だな!」
漓久「イケメンではないですけどね。
来夢さん、今日はよろしくお願いします。」
来夢「ハハッ!
イケメンで謙虚たぁ完璧じゃねぇか!
俺ぁ、気に入っちまったぜ!」
来夢はニヤつきながら、
二人に向かって席を指さした。
来夢「まぁ座れよ。
好きなもん飲んでくれ。」
ケンジ「……なぁ来夢。
詫び入れるだけなら、別に歌舞伎町じゃなくてもよかっただろ。」
来夢「おっと〜!
相変わらず冷てぇなぁケンジ〜!」
ケンジ「……」
来夢「最高のおもてなしじゃねぇか。
眠らない街・歌舞伎町でよ。」
ケンジ「今日はお前ひとりか?」
来夢「あははっ!
俺が仲間連れて、お前ボコるとか思ったか?」
ケンジ「……」
来夢「そんなことしねぇよ。
今日は詫び入れに来ただけだ。」
ケンジ「だったらさっさと済ませろ。
俺たちも暇じゃねぇんだ。」
来夢「ったく……
お前は昔っから態度が硬ぇよな。」
来夢は視線を漓久へ向けた。
来夢「親友さんまで黙っちまってるじゃねぇか。」
漓久「俺のことは気にしなくていいっすよ。
ただの幼なじみなんで。」
漓久「南漓久です。」
来夢「俺は青柳来夢。」
来夢「まぁ、俺もケンジとは幼なじみみてぇなもんだが……
アンタは、それ以上みてぇだな。」
漓久「……」
来夢「今日はよろしく頼むぜ。」
ケンジ「コイツは俺の親友だ。
無理言って付き合ってもらってる。」
ケンジ「用が済んだら帰る。」
来夢「そぉかよ〜!
だったら今日は、その親友さんとも楽しく飲ませてもらうぜ。」
ケンジ「…………」
漓久「ケンジ。」
ケンジ「……あ?」
漓久「来夢さんも、ちゃんと詫びたいって言ってるんだ。
今日は飲んで、和解すればいい。」
ケンジ「あぁ……」
来夢「さすが親友さんだ!!
話がわかるじゃねぇか!」
来夢は店員を呼び、
グラスを指で軽く叩いた。
来夢「さぁて、何飲む?」
漓久「あ……じゃあ俺、Mixtosを。」
来夢「おっ!
漓久さん、強ぇ酒いくんだな!」
漓久「まぁ、嫌いじゃないんで。」
来夢「ますます気に入ったぜ!」
ケンジ「……来夢。」
その瞬間――
来夢の口元だけが、
ゆっくりと歪んだ。




