Vol.081【カルマ】
2017年3月24日
トゥルルル……トゥルルル……
ガチャ!
ケンジ「もしもし?」
漓久「ケンジ?どうした。」
ケンジ「お前に頼みがある。」
漓久「なんだよ、改まって。」
ケンジ「今日、昔のダチと飲むことになったんだけどよ……
一緒に来てくれねぇか?」
漓久「……今からか?」
ケンジ「急で悪ぃ!」
漓久「急すぎるだろ。
なんで俺がお前のダチと飲まなきゃなんねぇんだよ。」
ケンジ「一人じゃ会いづれぇ相手なんだよ……頼む、漓久。」
漓久「……」
ケンジ「ホント頼む。」
漓久「珍しいな、お前がそこまで言うの。」
ケンジ「まぁな……」
漓久「女絡みじゃねぇんだろ?」
ケンジ「違ぇよ。」
漓久「なら、まぁいい。
行ってやる。」
ケンジ「マジか!?悪ぃ、助かる!」
漓久「で?どんな奴なんだよ、その相手。」
ケンジ「施設にいた頃の腐れ縁だ。」
漓久「腐れ縁?」
ケンジ「あいつが問題起こすたび、俺が止めてた。
だから昔っから俺のこと恨んでんだよ。」
漓久「……恨まれてる相手に呼び出されたのか。」
ケンジ「あぁ。」
漓久「危なくねぇか、それ。」
ケンジ「正直、俺もそう思ってる。」
漓久「けど、そいつが悪さしてたんなら、注意されて当然だろ。」
ケンジ「そんな理屈が通じる相手じゃねぇんだよ。」
漓久「じゃあ、なんで今さら会うんだ?」
ケンジ「詫び入れたいって言ってきた。」
漓久「詫び?」
ケンジ「あぁ。昔のこと全部。」
漓久「……信じてねぇんだな、お前。」
ケンジ「なんか裏がある気がしてならねぇ。」
漓久「だから俺を連れて行くのか。」
ケンジ「そんなところだ……
巻き込んで悪ぃ。」
漓久「別にいい。」
ケンジ「……」
漓久「お前なりに理由あんだろ。」
ケンジ「今はまだ話せねぇんだ、漓久。」
漓久「そうか。」
ケンジ「……悪い。」
漓久「今回は何も聞かねぇよ。」
ケンジ「え?」
漓久「ただし、いつかちゃんと話せ。」
ケンジ「……」
漓久「お前のこと、心配してんだよ。」
ケンジ「……ありがとう。」
漓久「場所は?」
ケンジ「歌舞伎町第三番街。
『BAR LOOP』、夜7時。」
漓久「歌舞伎町かよ……
そいつらしい場所選びだな。」
ケンジ「だろ?」
漓久「そりゃ、お前も気ぃ張るわ。」
ケンジ「とにかく油断ならねぇ奴なんだ。」
漓久「わかったよ。」
ケンジ「ホント、すまねぇ。」
漓久「お前が余計なことしねぇように、横で見張っててやる。」
ケンジ「……おう。」
漓久「じゃ、準備して向かう。」
ケンジ「ありがとな、漓久。」
ガチャ――
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ケンジは静かにスマホを握りしめた。
胸の奥に残る、
拭いきれない嫌な予感。
来夢がそんな簡単に過去を水に流す男ではないことくらい、
ケンジ自身が一番よく分かっていた。
それでも――
逃げるわけにはいかなかった。
過去から。
そして、自分自身からも。
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2017年3月24日 PM6:45
漓久「ケンジ!こっちだ!」
ケンジ「悪ぃな、漓久。
本当なら、お前とゆっくり飲みたかったんだけどよ。」
漓久「気にすんなって。
で?『BAR LOOP』ってこの辺なんだろ?」
ケンジ「あぁ。
調べたら、かなり昔からある老舗のバーらしい。」
漓久「……来夢が選ぶ店にしちゃ、妙に渋いな。」
ケンジ「だろ?」
漓久「逆に不気味だぜ。」
ケンジ「……」
漓久「まだ警戒してんのか?」
ケンジ「当たり前だ。
来夢は昔から何考えてるかわかんねぇ。」
漓久「まぁ、お前がそこまで構える相手ならな。」
ケンジ「漓久……
もし来夢が突っかかってきたら、俺、多分歯止め効かねぇ。」
漓久「……」
ケンジ「その時は止めてくれ。
頼む。」
漓久「安心しろ。
今日は殴り合いしに来たわけじゃねぇんだろ?」
ケンジ「あぁ……そのつもりだ。」
漓久「けど、向こうが複数で来てたら厄介だな。」
ケンジ「いや。
来夢には、そんな仲間すらいねぇよ。」
漓久「……」
ケンジ「あいつは、そういう奴なんだ。」
漓久「なるほどな……」
ケンジ「……あ、ここだ。」
漓久「『BAR LOOP』……間違いねぇな。」
ケンジ「時間ぴったりだぜ。」
漓久「行くか。」
歌舞伎町のネオンが、
夜の街を妖しく照らしていた。
その光の奥で、
三人の止まっていた時間が、
静かに動き始めようとしていた。




