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Vol.079【リユニオン】

挿絵(By みてみん)


2017年1月


来夢「………」


人材センター「はい!短期派遣で、ツインライトプロダクション情報部になります!よろしくお願いします。」


来夢「わかり……ました……」


うぜぇ……!!

やっぱ真面目に働くなんて性に合ってねぇ!


今までやったバイトも、すぐ喧嘩して辞めちまうし……

同じ場所で長く働くとか無理なんだよ!


けど、働かなきゃ食っていけねぇ……

ったく、世の中クソだぜ!


働きたくねぇ奴にも愛の手を差し伸べろってんだ!!


______________________



ツインライトプロダクション

情報部部長 島田克之(45)


島田「今日から約1ヶ月半、情報部をサポートしていただく青柳来夢君だ!

みんな、よろしく頼むぞ!」


来夢「青柳……です。

よろしくお願いしま……っす。」


______________________



ったく、ダルい空気だぜ……


しかしこんな俺でも雇ってくれる場所はあるもんだな。

世の中ナメ腐ってる俺ですら、働き口くらいはあるらしい。


まぁ、これも池谷のオッサンのお陰か。


フッ……

まさか、派遣された会社の人事部に池谷のオッサンがいるとはな。


昔馴染みってだけで採用に小細工しやがって……

ほんと、世の中甘すぎるぜ。


______________________



派遣から1週間後


池谷「どうだ?来夢。ちゃんとやってるか?」


来夢「どうだかな。

オッサンも知ってんだろ?俺がまともな人間じゃねぇって。」


池谷「だからこそだ。」


来夢「は?」


池谷「大人になれば責任が伴う。

お前はそこを理解しなきゃいけない。」


来夢「説教かよ。」


池谷「俺はお前にチャンスを与えたんだ。

少しは社会に慣れろ。」


来夢「チッ……。

優秀な人間ばっかじゃねぇんだよ、世の中。」


池谷「相変わらず捻くれてるな。」


来夢「うるせぇ。」


池谷「少しは空央ちゃんを見習え。」


来夢「……空央?」


池谷「ああ。仕事に対して意欲的だし、飲み込みも早い。

かなり優秀だぞ?」



来夢「空央?誰だそりゃ。」


池谷「昔馴染みのお前だから教えといてやるよ。

4月に桜沢空央って娘が入社してくるんだ。」


来夢「へぇ。」


池谷「かなり可愛い子だぞ?」


来夢「はぁ?

オッサン、また目ぇ付けてんのかよ!

相変わらずだな、ウケるぜ。」


池谷「空ちゃんだよ。」


来夢「……は?」


池谷「白石空ちゃん。」


来夢「白石……空って、ひめぐりにいた空か!?」


池谷「あぁ。4月からこの会社に入る。」


来夢「マジかよ……!

俺が辞めた後じゃねぇか……クソが。」


池谷「おいおい、何か企んでたのか?」


来夢「別に。どうでもいいだろ。」


池谷「まぁ、お前も当時はいろいろ問題起こしてたからな。

特にケンジとは。」


来夢「………………」


池谷「ケンジも今、この街にいるぞ。」


来夢「……なんだと?」


池谷「まだ引きずってんのか?子供の頃の喧嘩だろ。」


来夢「……」


池谷「俺は配達係だったから施設全体の事情までは知らなあえ。

けど、お前とケンジのことは大久保さんから何度も聞かされたよ。」


池谷「大人になれば、ガキの頃の喧嘩なんて少しは笑い話にできるもんだろ?」


来夢「……ケンジの居場所、知ってんのかよ。」


池谷「知ってたらどうする?殴り込みでも行くのか?」


来夢「そんなことしねぇよ。

ただ……気になってただけだ。」


池谷「ほぉ?」


来夢「俺もよ、悪態ばっか吐いてたからな。

ケンジには少しくらい謝りたい気持ちはある。」


池谷「本当か!?

お前も少しは大人になったじゃないか!」


来夢「……そうさ。こうして働き口も見つけてもらったんだ!俺だって、もうまともに生きたいさ!」


池谷「ほ、本当なのか、お前!俺は今のお前の言葉、本当に嬉しいよ!」


来夢「なに大袈裟にいってんだよ!」


池谷「よし!わかった!お前が改心したんなら俺も文句は言わない!教えてやるよ。ケンジも喜ぶだろ。」


来夢「あぁ。」


池谷「これが連絡先だ。電話でもしてやれ。」


来夢「…………」


______________________



ケンジ……

やっと見つけたぜ。


ひめぐりでは、ずいぶん俺をコケにしてくれたよな。


ほんと、お前って奴は昔からムカつく野郎だった。


俺が何かやる度に、お前は真っ先に殴りかかってきた。


そのたびに、ひめぐりの連中は笑いやがる。


「ゴミ」

「カス」

「嫌い」

「消えろ」


……そして最後には、


「死んじまえ」だ。


毎日毎日、お前に叩きのめされるたびに、

そんな言葉を浴びせられた。


俺の親父は裏社会の連中とつるみ、

お袋は親父以外の男と酒浸り。


そのうえ夫婦そろってヤク中だ。


俺に金を盗めと言ったかと思えば

俺が万引きひとつしただけで、

自分たちの腐った犯罪は棚に上げて、

一晩中、俺を殴り蹴りしやがった。


親にとっちゃ、

俺はただの憂さ晴らし道具だったんだよ。


そんな地獄みてぇな家から逃げて、

ひめぐりに来た。


少しはマシになると思った。


少しは、この弱っちい施設で頭張れると思った。


なのによ……


ケンジ、

お前は俺に、あの家と同じ苦しみを与えた。


空の親だって、俺の親と変わらねぇ。


ギャンブル、窃盗、暴力……

親ぐるみの犯罪者だ。


なのに、お前はいつも空を助けた。


空ばかりをな。


それがムカつくんだよ……


心が腐っちまうくらい、

ムカつくんだよ!!


俺はもう、自分がどうなろうと構わねぇ。


ほんの少しの希望だった紗羅に捨てられたあの日から、俺の中で何かはとっくに壊れてる。


失うもんなんて、もう何もねぇんだよ。


だからこそ――

俺はお前を引きずり落とせる。


たとえ、この先

俺自身がどうなろうが構わねぇ。


全部終わった後に、

笑ってる奴が誰もいなくなったとしてもな。


ケンジ……


今度は俺が、

お前に“あの頃の地獄”を味わわせてやる。


待ってろよ。

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