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Vol.076【私立探偵 篠原の推理の時間】

挿絵(By みてみん)


さて、ここまで俺が掴んだ情報を

まとめてみることにしようか。


2016年8月9日。

綾瀬みつきという依頼主が、桜沢空央を調べてほしいと言ってきた。


依頼内容は……

桜沢空央の今後の動き、そして過去の経歴。

だが、みつきはその桜沢空央を「全く知らない」と言っていた。

この時点で、この依頼は通常の捜査として考えるべきではない。

みつきは、対象である空央がとある会社から出てきたスナップ写真を持ってきた。


この写真は明らかに盗撮だ。


知らない相手の情報を得るために、ここまでの行動を取っている。


つまり、

みつきは「知らない」のではなく、意図的に空央を追っている。


そして、空央が出てきた会社。

ツインライトプロダクション、映像会社だ。

人事部の池谷さんは、以前からの俺の情報提供者だ。

その池谷さんの情報によると、空央は以前からこの会社に訪問していたという。


異例の早さの就職活動。

ここから一つの事実が見える。

空央はこの会社に対して

「強い目的意識」を持っている。



空央は、「容姿端麗」「頭脳明晰」。

このスペックなら、より条件の良い企業を選べるはずだ。

それでもこの会社に執着する理由。

そこには、合理では説明できない

“個人的な動機”がある。



さらに、池谷さんからの情報で、空央が過去に児童養護施設にいたことを知る。

俺は現地に赴き、施設長・大久保に接触した。


だが、情報提供は完全に拒否された。



情報を得られないまま時間だけが過ぎる。

冷たく追い返され、施設の玄関先で立ち尽くす俺の前に一人の女性が現れた。


明るい髪、派手な服装。

とても施設職員には見えない外見。

だが彼女こそが空央の最も近くにいた存在。


児童養護施設職員、生田美麗。

探偵に憧れていた彼女は、

「弟子にする?」という条件と引き換えに、

空央の情報を提供した。



そこで得た情報は大きかった。

空央には双子の妹がいる。

名前は繭。

空と共に養護施設へ辿り着いた直後、その姿を消した。

この時点で既に異常だ。

だが、さらに重要なのはその後だ。

大久保の反応。

繭の話題になると、明らかに態度が変わる。

そして美麗の証言……

警察関係者と思われる黒いスーツの男たち。

その存在以降、

大久保は美麗に対してさえ口を閉ざした。

ここで浮かび上がるのはひとつの可能性。

大久保が本当に隠しているのは――

空央ではなく、繭。


ここで注目すべきは、拒否の“質”だ。

単なる警戒ではない。

質問を避けるのではなく、

“触れてはいけないもの”として遮断している。

しかもそれは個人の判断ではない。

外部からの圧力。

そしてその圧力は、警察レベルのものだ。


一つ、質問に対する過剰な防御反応

二つ、依頼主への異常な警戒

三つ、話題自体を遮断する態度


これらは明らかに

「知っているが話せない人間」の反応だ。


つまり……

施設側には外部に出せない情報が存在する。


さらに言えば、それは個人の判断ではなく

“何らかの圧力”によって制限されている可能性が高い。




さらに、空央が想いを寄せている人物。

南漓久。

そしてその男はツインライトプロダクションに所属している。


ここで全てが繋がる。


空央がこの会社に執着していた理由。


それは――

南漓久に近づくため。


そして、もうひとつ。

見逃せない有力な情報がある。

池谷さんも口にしていたコミュニティアプリ、

「ネバーランド」の存在だ。

美麗の話によれば、

空央は南のアバター(Kaito)を、繭から教えてもらったという。


この話が事実なら……


空央と南は、現実だけでなく“仮想空間でも繋がっている”ことになる。

俺は南のアバター(Kaito)そして空央のアバター(あお♡)、そして繭のアバター(SoRa)、この3人のアバター名を入手済みだ!


つまり、調べるべき場所は二つ。


現実世界と、もうひとつは、ネバーランドの中だ。


……。


裏社会の人間を追うのとは訳が違う。

相手は姿も実体もない“アバター”。

架空の世界での捜査……

正直、現実味なんてものは欠片もない。


だが、この案件の核心がそこにあるのなら、俺は踏み込むしかない。


しかし、またここで新たな疑問が生まれる。

依頼主・みつき。

彼女はなぜ、ここまでして空央を調べようとしているのか。

知らないはずの人物を追跡し、盗撮までしている。

これは通常の興味ではない。

執着だ。

では、その執着はどこに向いているのか。

空央か。

それとも空央の周囲の人物か。


ここでひとつの仮説が立つ。

みつきは空央に直接興味があるのではない。

空央を通して、別の誰かに繋がろうとしている。

その対象は……

南漓久。


もしこの仮説が正しければ、


みつきは南漓久という男を知っている。

あるいは、強い関係性を持っている。


本来、依頼人を調べることはしない。

だが、今回の依頼は明らかに異質だ。

みつきの行動は読めない。

このままでは、俺自身が何かに巻き込まれる可能性がある。


だからこそ、依頼人も調べる必要がある。



……待てよ。

みつきが契約時に書いた書類。

あの時、美麗と話している最中は確信までは持てなかったが。


もう一度確認する必要がある。

………………………………!!!!

やはりな。


依頼された情報は確実に渡す。

だが、依頼されていない情報は別だ。

それは“追加価値”になる。


つまり、金になる。


みつき……

アンタがそれを知りたいかどうかはわからない。

だが、もし知りたいなら、オプション料金で教えてやってもいい。

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