Vol.071【そばかすの天使】
「あの……」
篠原「はい!?」
俺の前に、いきなり現れた女性。
それはこの施設で働く施設員だった。
今日は休みで出掛けていたのか、普段の施設の服装とは違っている。
施設員「本当に探偵さん……なんですか?」
篠原「名刺をお渡ししておきます!なんなりとご用命を!!」
施設員「ほ…本当だ!!凄い!!本物の探偵さんだ!!」
篠原「ねぇねぇ、君……だれ??」
施設員「あ!失礼しました!!
私、このひめぐりの家で施設員をやっている
生田美麗っていいます!よろしくでっす!」
篠原「は、はぁ……よろしく、でっす。」
美麗「大久保さんとのお話、チラッと聞いちゃいました……空ちゃんのこと、聞きたいんですよね?探偵さん!」
篠原「空ちゃん?誰それ??俺が聞きたいのは
桜沢空央さんのこと!空ちゃんじゃないよ!
っていうか、めちゃくちゃ馴れ馴れしいな君は!」
美麗「あはは(笑)!でもでも!空ちゃんだって!桜沢さんのお家の里子になって桜沢空央っていう名前になったんだもん!」
篠原「な…なんだと?」
美麗「私ね?昔からこのひめぐりの家に時々、たまーに何回も何回もお世話になってたんだよ。」
篠原「おいおい!“何回も何回もたまーに”って、それはたまーにじゃないだろ!」
美麗「まぁまぁ、細かいことは気にせずに!ね!」
篠原「ま、まぁいいよ……で?」
美麗「でね、空ちゃんとずっと友達だったの!で、今はここで働いてるんだよ!あはは!」
篠原「な、なんだと?お前、空央さんの友達?本当かよ!」
美麗「嘘なんてつかないよ!そりゃ……」
美麗は篠原から受け取った名刺の名前を確認する。
そして再び篠原に話しかける。
美麗「篠原さん?うん、篠原さんが得体の知れない人なら何も言わないよ?でも探偵さんじゃん!」
篠原「でもいいのか?美麗さんはこの施設のスタッフだろ?施設長が黙秘してる以上、美麗さんも黙ってた方が賢明なんじゃないのか?」
美麗「そりゃそうだよ!黙ってた方が賢明だよ。」
篠原「じゃあなんで空央さんと友達なんて言ってくるんだよ!意味がわからんぞ!」
美麗「うん!だよね?意味わかんない!」
篠原「あのなぁ!俺はお前と遊んでる暇はないんだよ!どうせ話さないんだろ?法律で守られてるからな!」
美麗「確かに!施設長は法律でペラペラ話しちゃいけないことになってる!」
篠原「なら他の手を考えるしかねぇ!お前もとっとと中に入れ!」
美麗「探偵さん!?バカじゃない?」
篠原「な、なんだとこの野郎!」
美麗「私のこの格好、見てよ!」
篠原「はぁ?お前の格好?」
美麗「そそ!私の格好!」
篠原「か、可愛らしいじゃねぇか!」
篠原「クソッ!!俺は何を言ってんだよ!」
美麗「そうなのです!私は今日、可愛らしいのです!」
篠原「お、お前!ふざけてんのかよ!」
美麗「真剣だよ?」
篠原「な……」
――次の瞬間、美麗の表情が変わった。
美麗「探偵さん。今日私は可愛らしいのです。お出かけしてきましたから。」
篠原「ど、どうしたんだよ急に……」
美麗「ってことは非番です。」
篠原「非番だと?警官みたいな言い方しやがって!」
美麗「だから、プライベートです!」
篠原「え!?」
美麗「篠原さん。あなたが探偵としてここに来てるってことは、空ちゃんを調べてる依頼者がいるってことですよね?」
篠原「あ、あぁ!まぁそうだな!」
美麗「で、名刺の裏、見ました。業務内容書いてありますよね?」
篠原「あぁ。」
美麗「浮気調査、所在調査、家出人探し、いじめやストーカー調査、個人・企業の信用調査、盗聴・盗撮機器の発見……などなど!」
篠原「読み上げるんかい!」
美麗「篠原さんはいい人です。」
篠原「は?なんでわかるよそんなこと!性格悪いかもしれないし、金にも汚いぞ!」
美麗「でも悪い人じゃない。私はそう思いました。」
篠原「ぐっ……」
美麗「さっき、私めんどくさい話し方したでしょ?」
篠原「た、確かに!」
美麗「それでもちゃんと受け答えしてくれた。そういう人ってこと。」
篠原「人の話を聞くのが仕事だからな。」
美麗「でも私は依頼者じゃない。」
篠原「俺を試したのかよ。」
美麗「だね。だって空ちゃんを守ってくれるかもしれないし。」
篠原「守るだと?俺は調べる側だぞ?」
美麗「空ちゃん……もうすぐ壊れるかも……」
篠原「な、なんだと!?どういう意味だ!」
美麗「今日は非番。そしてあなたは悪い人じゃない。だから今は施設員じゃなくて、空ちゃんの親友として話す。」
篠原「ほ、本当か!?教えてくれ!!」
美麗「うーんとねぇ……あのねぇ……ひとつ条件あるー!!」
篠原「またその口調か……しかも条件?」
美麗「うん!条件!」
篠原「わかった!!何でも聞くから教えろ!!」
美麗「私を弟子にして?今日から相棒だよ!」
篠原「無理だろそれは!!」
美麗「無理なら無理ー!教えない!!」
篠原「な、なんだと!」
――篠原優、心の中――
(落ち着け……落ち着け俺……
コイツは情報を持ってる……絶対に持ってる……
施設長以上に持ってる可能性すらある……
“うん”と言えばいいだけだ……)
……仕方ねぇ!!
篠原「わ、わかったよ!弟子だ弟子!!
お前は今日から俺の弟子だ!!だから早く言え!!」
生田「えーーーー!なにその適当な言い方!」
篠原「頼むから教えてくれ!!」
生田「ぱふぇ……」
篠原「え?」
生田「ぱふぇ……今度どこかで食べさせて?ね?」
篠原「ぱふぇ!?……わかったから!!パフェでもパンでも何でも食わせてやる!!」
生田「ほんと!?じゃ、なんでも聞いて?」
――やれやれ……
可愛い“そばかすの天使”が現れたが、
本当に情報をくれるのやら……
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生田美麗(21歳)
児童養護施設ひめぐりの家職員。
好奇心旺盛で明るく、空央とは幼い頃からの大親友。
私立探偵に強い憧れを抱き、助手になることを夢見て、篠原に情報提供者として関わるようになる。
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