Vol.052【安藤 雫 vs SoRa 】
安藤「芹沢さん、これを見てください!」
芹沢「なんだ!?」
安藤「高校へ進学した頃から書き始めたと思われる、桜沢空央のもうひとつの日記が見つかりました!」
芹沢「もうひとつの日記?」
安藤「南漓久だけのことを綴った、自身のダイアリーですね!
この日記は、別の場所に隠すように保管されていました。」
芹沢「一部破られているな。」
______________________
4月1日
漓久君と同じ街に来た!
学校も近いし、いつも漓久君を見られるから嬉しい!!
______________________
7月19日
夏休み!!
漓久君は今日も部活頑張ってるなー!
______________________
10月16日
明日は文化祭。
漓久君の学校へお邪魔しちゃお~!
______________________
10月17日
…………………………
…………な…で?な…?漓………緒…真…
の?どう…て漓久…ったの!?ど………
近づい…!?や……に黙っ………私に……て!!!繭!!!
さな…さない許さない…ない許さな…
さない許さ…さない…ない!
______________________
芹沢「17日の破られている箇所がわからん!」
安藤「重要な箇所が!」
芹沢「10月17日に空は何かを知った。」
安藤「最初の日記で私が芹沢さんに話した私の言い方では、『SoRa』と『あお♡』は以前は仲が良かったと思いましたよね?」
芹沢「そうだな!以前はな。
しかしいつからか仲が悪くなった!」
安藤「この10月17日の文化祭の日こそが、空が繭に対して復讐を決意した日だと思われます。」
芹沢「じゃあ、復讐のために自分の気持ちを押し潰して、繭と会ってた日もあるというのか!?」
安藤「そこまではわかりません!!
本人がもうこの世に居ない以上、彼女がどこまで繭に気持ちを隠していたのかは闇に包まれたままです。」
芹沢「SoRaを詳しく調べれば繭の居場所がわかる!!」
安藤「ネバーランド関連を調べたとき、それを同時進行しましたが、SoRaというアバターを操る人物は特定できませんでした!!
アカウントを持ち歩いていて、一定の端末からネバーランドを立ち上げていません!」
芹沢「どういうことだ!?」
安藤「考えられるのは……
ネットカフェを転々としている可能性があります。」
芹沢「なんだと?」
安藤「PCにもインストールできるため、利用後はアプリを削除する!
繭はこれらのことを全てわかった上でネバーランドをしています。
決して正体がばれないように!
常に移動している。」
芹沢「決してバレないようにか……」
安藤「かなり頭がいいようですね、SoRaは。
ネットカフェの場合、同じ場所から何回もログインすると足がつきますよね?」
芹沢「仕組みはよくわからんが、特定はできるみたいだ。」
安藤「SoRaが普通ではないのは、事件前と事件後の動きが全く違うことなんです。」
芹沢「事件前と事件後?」
安藤「はい。
ネバーランドのSoRaのログイン状況は、事件前はある一定の場所からログインされていました。」
芹沢「ならすぐ探せるのでは?」
安藤「はい!
まずネバーランドにアクセスしたネットカフェのPCがあるとします。
1件につき大型のカフェなら、数十台から100台近くはあるでしょう。」
芹沢「そんなにあるのか?」
安藤「はい!
しかしこの場合、台数は関係ありません。」
芹沢「なぜだ?
どのPCを使ったかわからないじゃないか!」
安藤「わかるんですよ。
どのPCがネバーランドへアクセスしたかが。」
芹沢「どういうことだ!
俺はそっちはちんぷんかんぷんだ!」
安藤「各PCには必ずIPアドレスというものが付いています。
そして、その中からネバーランドへアクセスしたIPアドレスのPCを探し当てます。」
芹沢「ふむふむ」
安藤「そのネットカフェの中にネバーランドへアクセスしたPCが何台かあったとして、次はSoRaがアクセスした時間帯を特定します。
その時間帯にネバーランドへアクセスしたIPアドレスのPCがSoRaということになります。」
芹沢「なるほど!
その時間帯にそのPCを使っていた者を、防犯カメラで突き止める!」
安藤「そういうことです!」
芹沢「ならSoRaは見つかるのでは?」
安藤「私がSoRaが只者ではないと思うのは、防犯カメラの保存期間を知って行動していることです!
SoRaがよく利用していたネットカフェの防犯カメラ映像は約2週間で上書きされます。
事件前のデータは全て消えていました。」
芹沢「では事件後は?」
安藤「事件後のSoRaは主にモバイルPCを持ち歩いている可能性があります!」
芹沢「発信場所は?」
安藤「かなり転々としています!
ただ発信場所を特定するのに極めて困難な方法を取っているようです!」
芹沢「極めて困難?」
安藤「モバイルなら通常、Wi-FiアクセスポイントやGoogle等の位置情報で、かなりの確率で発信場所がわかるのですが……
なかなか足取りがつかめないんです。」
芹沢「位置情報サービスをOFF、あるいはアプリのアクセス拒否をしているとか?」
安藤「位置情報をOFFにしても、インターネットに接続している限り痕跡は残ります。
ネットワークの接続元が自宅Wi-Fiなのか、公共Wi-Fiなのか、またはテザリングなのか。
Mac等のApple製品には端末固有の識別番号があり、外で接続しても、そのエリアにあるWi-Fi基地局のルーターに、その識別番号のPCが接続していたという裏付けができます。」
芹沢「ならSoRaは逃げられんじゃないか!」
安藤「位置情報をOFFにしても、ネバーランドへログインした通信サービスのIP履歴から、間接的にどのエリアにいたかなどの痕跡は残ります。」
芹沢「パソコンさえ押収できればな。」
安藤「まさに……
それならフォレンジック捜査ができますから。
結論から言えば、位置情報をOFFにしてもネバーランドに現在地を知られることは防げますが、通信の痕跡を消すことは絶対にできません!」
芹沢「ならどうやってSoRaは痕跡を消している!?」
安藤「SoRaはかなりできる人物です!」
芹沢「可能なのか?そんなことが!」
安藤「ゼロではありませんが、VPNの使用、要するに仮想専用線。
Torブラウザの使用。
USBメモリから起動し、使用後に全ての痕跡を消去するプライバシー特化型OSの使用。
使い捨てのプリペイドSIMや、契約者情報の不要な古い公衆Wi-Fiスポットを転々と利用する方法など……
これらを使われると、私共もかなり不利になりますね。」
芹沢「まったくわからん!」
安藤「厄介なんです!
こういう知識がある人を探し当てるのは。」
芹沢「でも、なぜSoRaはそこまで!」
安藤「ひとつの仮説を立てるなら、白石繭はもう存在していない。
過去を捨て、新たな人間としてどこかで生活している!」
芹沢「お前がいくら優秀でも、そこまでは……」
安藤「私が思うに、繭は……
SoRaは南漓久の近くにいる人間ではないかと思います!!」
芹沢「な、なんだと!?お前!!」




