Vol.051【残像のイノセンス】
2017年4月6日(木) PM18:40
そろそろケンジと約束した時間か…
俺はケンジと待ち合わせすることになっていた居酒屋へ、少し早めに来てしまった!
はやる気持ちを抑えきれない。
いつも楽しくツルんでる奴が、今日は別人に見えるかもしれない。
そんな不安に駆られながら、俺はケンジを待ち続ける。
10分後
ケンジ「よう漓久!!待ったか!?」
漓久「ケンジ…俺も今来たとこだ。」
ケンジ「調子はどうよ!!ヒデぇ目にあったな!!心配したぜ!!」
漓久「あ、ありがとなケンジ!!もう大丈夫さ!!」
ケンジ「どうしたお前!?顔色悪いぞ!!」
漓久「いや、そんなことねぇ…心配ないよ。」
ケンジ「ならいいけどよ、疲れてるだろ?」
漓久「まぁな…今日1日、警察に振り回されたからな。」
ケンジ「そかっ!けどまぁ気を取り直して!!まずは生ビールっと!!漓久は何にす……る…漓久?」
漓久「昨日、あれだけ桜沢とネバーランドのことで電話で話して、SoRaのことで言い争いになって、桜沢が逆上して、朝になったら殺されてたなんてよ……」
ケンジは疲労しきった漓久を心配そうに見ていた。
漓久「俺さ、もう訳わかんなくて。」
ケンジ「漓久……」
漓久「俺のことを昔から知ってたって、そんなことわかる訳ないっつーの!」
ケンジ「とりあえずよ、漓久!今は気が動転してるから仕方ないけど、ほんの少しだけ忘れようぜ!」
漓久「あ、あぁ……俺も今はもう何も考えたくないさ。」
ケンジ「だったらとりあえず飲んで忘れようぜ!な?すいませ~ん!!生ビール2つっ!!」
ケンジ「お前もいくだろ?」
漓久「あぁ。」
ケンジ「おいって!ホント大丈夫か?でよ、かなり警察には絞られたのか?」
漓久「絞られたってもんじゃねぇ!容疑者だよ、俺は!」
ケンジ「は!?なんで先輩っちゅうだけで容疑者になるんだよ!意味不明だな!!」
ケンジ「まぁ、お前の部下が殺される前にお前と何らかのトラブルがあれば容疑者になっちまうけどよ。」
漓久「話せば長くなるんだけどな。俺は桜沢とはなんの関係もないし、ただこの4月に入社したばかりの新入社員の上司ってだけだ。」
ケンジ「その間に色々あったんだな。」
漓久「あぁ。」
ケンジ「お前のことを知った上での入社だ。ワケありなのは確かだぜ。」
漓久「ところでよ、ケンジ?お前にちょっと聞きてぇことあんだけどよ。」
ケンジ「おお!!なんだ!?」
漓久「お前さ、ネバーランド、やってる?」
ケンジ「は!?お前がハマってるあのスマホゲームのネバーランド?」
漓久「そう。」
ケンジ「んな訳ねーじゃん(笑)ウケるなお前!あははは!」
漓久「本当か?」
ケンジ「どうしたんだよお前!」
漓久「じゃあちょっとこれを見てくれよ。」
ケンジ「ん?」
俺は自身の携帯のネバーランドを立ち上げ、問題のコメントメッセージをケンジに見せた。
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▶KenJi 2017年4月3日 9:32
SoRa?今日はリアで仲良くしてる友達が急に入院しちまってな!まぁ元気そうで良かったけどな(笑)SoRaも急な病気には気を付けてくれよな(^^)
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漓久「みつきが倒れた日に、沙羅と俺とお前とで見舞いにいっただろ?その日、帰宅してネバーランドにログインしたんだよ。そこで俺のフレンドの日記に入ってたコメントを見たんだ。」
ケンジ「うん、それで?」
漓久「このKenJiって名前のアバター、そしてコメントのシチュエーションは偶然なのか?あまりにも俺達の状況に似てたからさ。ただ時間はわからねぇ!このアプリの特性上、時間はAMかPMかはわからねぇんだよ。」
ケンジ「偶然って……おいおい待てよ!KenJiって?ネバーランドのフレンドって誰よ?」
漓久「ネバーランドで俺がずっと探してるアバター、SoRaっていう人だ……そしてお前が可愛いと言い、殺されてしまった桜沢空央のアバターにも、同じアバターからコメントが入ってたんだよ。」
漓久「それがこれだよ。」
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KenJi 2017年4月1日
あおちゃん♡今日は入社式だね~(^^)応援してるから頑張ってね~(❁´ω`❁)無性にツレがムカツク!!(>_<;)
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漓久「ツレって、俺のことか?」
ケンジ「漓久!ちょいと話を整理させてくれよ?」
漓久「あぁ!」
ケンジ「まずお前がやってるネバーランドには、お前がハマっているSoRaというアバターがいる!」
漓久「そうだ!」
ケンジ「そしてお前の会社に入社し、殺された桜沢空央もネバーランドをやっていた!」
漓久「そう!」
ケンジ「で、SoRaのアバターと桜沢空央のアバターにKenJiというアバターがコメントをしてる!」
漓久「ああ!」
ケンジ「それが俺って?」
漓久「そうだ!」
ケンジ「お前バカか!!なんで俺がKenJiなんだよっ!!」
漓久「違うのか?」
ケンジ「あのねー、お前いくらコメントの内容が俺達の状況に合うからって、考えすぎじゃね?」
漓久「偶然にしちゃでき過ぎじゃね?」
ケンジ「俺はやってねーし、大体時間も曖昧なんだろ?」
漓久「そう…だな。」
ケンジ「なぁ漓久!人間、気になる女ができると前が見えなくなる!ましてやそれがこんな訳のわからねぇSNSの世界の中だ!!ちょっとしたコメントでも悪い方に考えちまうんだよ!すぐに考え込み、マイナス思考になっちまう!人間、面と向かって話し合うのが一番なんだよ!!」
漓久「そ、そうなのか?」
ケンジ「お前、SoRaが来てから変わっちまったな!なんかこう、人間嫌いで嫌な奴だったけど、持ってるものはちゃんとあった!」
漓久「俺にはわからねぇ。」
ケンジ「それがいまやお前は腑抜けだよ!」
普段は温厚なケンジが、これほどまでに俺にダメ出しをしている。
そんなケンジの言葉に、俺は返す言葉が見つからなかった。
ケンジ「けどな漓久?それは悪友の俺が思うこと!沙羅やみつきからしたら、お前は確実に今までになかった『優しさ』を持つ人間になってる!」
漓久「今までになかった優しさ?」
ケンジ「そうだ!聞いたぜ?沙羅やみつきから色々と!」
漓久「な、何をさ?」
ケンジ「みつきに見知らぬ男がいればそれを心配してやってる!沙羅が不審な人物に追われていたらすっ飛んで探しに行ったり、みつきが入院した時はマジで心配してた……あの二人を心底嫌ってた以前のお前からは、想像もできない絶対あり得ない光景だよ!」
漓久「心配、優しさ、俺に?」
ケンジ「あぁ!SoRaに出会って、いつしかそういう気持ちを少しずつ取り戻してきたのかもしれないな!まぁ、俺は以前の冷酷なお前が好きだけどな!(笑)」
ケンジ……
俺、何やってんだろう。
そして、俺は思った。
これだけ俺のことを気にかけてくれて、
心配もたくさんしてくれて。
俺、思った。
ケンジは俺の本当の親友だ!
小さい頃から、ずっとずっとたった一人の親友で、
共に色んなことを乗り越えてきた。
ケンジが7歳の時に両親が交通事故に遭い、
養護施設に行き、離れ離れになった時は本当に悲しかった。
それでも毎日一緒に遊びたくて、一緒に居たくて、
どんなに家が遠くても、バカばっかやっていたくて、
毎週必死になって会いに行ったんだ。
俺と同じ小学校に行くと言ってくれて、
里親になった斉藤さんや、周りの大人たちを必死に説得してくれた!
そんな奴を、どうして俺は疑っちまったんだ!!
ごめんな、
ケンジ……




