Vol.049【ストイック・ルーティン】
芹沢「空の手に握られていたもの……」
安藤「これがその写真です!担当者の方にメールで転送して頂きました」
芹沢「メモ書き……」
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空チャンヘ
いつも私のために
アリガトウ
もう
私はイナイから
ゼンブ
空チャンのモノダ だよ
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芹沢「繭からの手紙……」
安藤「ろくに学校へ行けなかった繭は、字があまり書けなかったのでしょうか。
ひらがな混じりのあどけない文字。密かに覚えたカタカナや簡単な漢字が少し書けるようになった繭が、子供ながらに空に報告したかったのかもしれません。小学5年生が書いた文面だと思うと胸が張り裂ける思いです。」
芹沢「学校に行けなかったとは……空はそれなりに書けたのか?」
安藤「はい。空はかなり努力したみたいです。元々何事に対してもストイックなところが子供ながらにあったみたいです。」
芹沢「しかし学校にも行けずに……」
安藤「小学校といえど、それなりに学費はかさみます。あの姉妹の親がそんな費用を出すわけがない!学校側も教育委員会もかなり説得したみたいですが……。」
芹沢「なんという……」
安藤「学校で勉強することに対し、繭は我慢できたと言いますが、空はどうしても勉強がしたかったようです。憧れていた隣人の大学生に親のいない間に密かに教えてもらってたようですが。」
芹沢「だからそこそこ学年レベルまではついていけてたのか!繭は教えてもらってなかったのか?」
安藤「ですね!元々空はIQはかなり高いようで要領よく基礎を教えてもらい、あとは復習でまかなっていたと思います。繭の方は空ほど、勉強については執着がなかったようですね。明るい性格だったみたいなので勉強より遊ぶ方が楽しかったみたいです。」
芹沢「うーむ……考えさせられてしまう!で、この手紙を見て空はどう受け止めたんだ?」
安藤「子供にこんな現実は受け止められません!!
ずっと一緒に居られると思っていた繭に裏切られた気持ちがあったのではないかと思います。
繭の空を想う行為が裏目に出てしまった。」
芹沢「裏切り?」
安藤「見ず知らずの施設に一人取り残された空の気持ち。
空はこの頃から繭に対しての恨みが少しづつ芽生え始めていたんじゃないのかと、今は思ってしまいます。」
芹沢「なんて、悲しい……。」
安藤「しかし驚くことに、繭から年に何回かは空へ連絡が来ていたそうです!
そして会うこともあったとか。」
芹沢「空は繭を恨んでいて、怒ったりはしなかったのか?」
安藤「はい。やっぱりそこは産まれた時から一緒にいた姉妹なんですね。繭からの電話は嬉しかったみたいです。ただ……」
芹沢「ただ?」
安藤「勝手に自分を置いて出て行ったことに対しては許していなかったみたいです。」
芹沢「なるほどな……で?そんなある日、二人はとある写真展で南漓久の作品を見たんだな!?」
安藤「日記に書いてあったことは憶測ではなく、この話と繋がります。」
芹沢「うむ!」
安藤「写真展で南漓久のダイヤモンドダストの写真に惹かれた二人の心の中に、とても小さな光が生まれた!!
希望という名の光が。
二人は必死にこの写真を撮影した人物を探し、そこに居合わせた写真を出展した人物、南漓久の父親に会い話を聞いた!
写真を撮影した人物が自分らより一つ歳上の中学生と聞き、二人の心は揺らいだ!
思春期の少女二人が憧れを経て、この恋に落ちるまでそう時間はかからなかったでしょう。」
芹沢「同じ年に同じ人を同じ時間に……
まさに悲劇の運命だ!」
安藤「空と繭は年に何回か連絡を取り合っていましたが、繭が話すのはいつも南漓久のことばかりだと綴ってあります!
空は自身の感情を犠牲にして話を聞いていたんでしょう」
芹沢「今まで愛することを知らなかった二人が本気で恋に落ちたわけだ!
空は感情を隠し、繭は感情をさらけ出す。
皮肉にもその感情は大人になって逆転してしまった」
安藤「繭は自分より勉強ができる空をいつも羨ましがっていた!
そんな浮かれた話ばかりする繭に、空が見せつけたかったものが学歴かと!」
芹沢「学歴?」
安藤「空のプライドは南漓久に対する気持ちはもちろん、勉学にも向けられました!
同じように育ってきた二人だからこそ、空が頭一つ飛び出すために頑張れることは唯一、桜沢家に引き取られ勉強に励める環境に自身があったということ!
結果、偏差値75という成績で青陵学院高等部へ進学し、その中でも常に成績トップで生徒達のカリスマ的存在となった。
これを見る限り、アルバムの寄せ書きは彼女を褒め称えるクラスメートばかりです」
芹沢「いい大学を出て、さぞかし仕事もできたんだろう!」
安藤「彼女の学歴ならツインライトプロダクションより、もっと大きな大企業に入れたでしょう!
それをあえてしなかった。
入社の計画性の疑いはここからきています!」
芹沢「しかしお前!この情報、ここだけの情報ではないな」
安藤「芹沢さん!SNSは聞き込みだけでは辿り着けない情報の宝庫なんです。
どんな小さな違和感でも、私は見逃しませんから!」
芹沢「この事件に関しては、まるで別人みたいだ……安藤」
安藤「許せないんですよ、こういう事件って」
芹沢「なんでだ?」
安藤「見えない狂気、それは見える凶器と同じです!
姿が見えなければ何を言っても何をしてもいい。
そういう腐った今の世の中が許せない!……とでも言いましょうか」
芹沢「お前がサイバー犯罪対策課に入った気持ちがわかったよ」
安藤「芹沢さんも、随分遠回しに皮肉を言いますよね(笑)」
芹沢「まぁ……これでも褒めてるんだ(笑)」
安藤「とにかく芹沢さん!
私は南漓久の懐に入り、内面から彼を探っていこうと思ってます!
彼の持ってる闇も想像以上に深そうですから!」
芹沢「わかった!お前がそう言うなら俺はなんも言わん!」
安藤「ありがとうございます!
絶対に犯人を捕まえてやりますよ!!」




