Vol.040【芹沢勇二 × 安藤 雫=バディ、始動。】
■芹沢勇二(56歳)
東都渋谷署 刑事部 捜査第一課 強行犯係
数々の凶悪事件を解決へと導いてきた、定年を間近に控えるベテラン刑事。今回、桜沢空央が何者かに殺害された事件を、部下の安藤とともに追うことになる。SNSが絡む特殊な事件のため、サイバー犯罪対策課の安藤が特別に加わり、芹沢は彼女を導く立場として捜査にあたる。常に冷静沈着で、状況を見極める確かな眼と経験を持つ。
■安藤雫(23歳)
東都渋谷署 刑事部 サイバー犯罪対策課
ネット解析係
父は警視監。恵まれた環境で育ちながらも、それに甘えることなく警察学校に進学。幼い頃から気性が激しく、感情が先走る一面を持つが、同時に人一倍強い正義感を併せ持つ。警察学校を首席で卒業後、警察官となり、サイバー犯罪対策課に配属。卓越した解析能力で数々の事件解決に貢献し、若手ながら頭角を現している。
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俺は芹沢と安藤という二人の刑事から、桜沢の件で聞き込みを受けている。
失血死。
彼女が死んだなんて、とても信じられない。
芹沢「南さん、率直に伺います!!
あなたと桜沢さんの関係は果たして部下と上司という関係だけだったんでしょうか?」
疑っている。俺は完全に容疑者だ!!
一昨日のLINEの履歴を見れば、ただの上司と部下の関係とは思いにくいだろう。俺ははっきりと言った。
漓久「単なる部下ですよ。」
芹沢「ほー!
桜沢さんはあなたのことをかなり気に留めていたと思われますがね?」
漓久「彼女と話すまでは知りませんでした。」
芹沢「あなたと桜沢さんのお話は全て把握しています!」
漓久「そうでしょうね……」
芹沢「安藤!!
ここからはお前の出番だ!
あっちの世界はお前の方が詳しい!
期待してるからな!
俺は少し、捜査本部に今の情報を共有してくる!」
安藤「はい!
任せてください。」
芹沢「では、あとはよろしく!!」
芹沢「それでは南さん、私はひとまずこれで失礼します。
また何かあれば署まで同行していただくやもしれませんので、その時はご協力のほどよろしくお願いします。では!」
俺は思った。
芹沢という刑事は、よほどこの安藤という若い女刑事を信頼しているようだ。
どうやらSNSに長けた人物なのか?
さっきの冷たい言い回しも気になる。
安藤「南さん?」
漓久「はい!」
安藤「SoRaさんって誰ですか?」
漓久「うっ!!」
安藤「私どもからはこの人物にコンタクトを取ることができない!」
漓久「な、なんでですか?
警察ならなんでもできるでしょう!」
安藤「居場所がわからない。
これが結論です。」
漓久「警察でもですか?」
安藤「不定期に電波を飛ばしてます。
しかも一定の場所にはいない!」
漓久「なんだって?」
安藤「通常、あなたのようにネバーランドを同じスマートフォンで使う人なら、一定場所にいなくてもすぐにあなただと特定できます!」
漓久「なぜだ、どうしてわかる!」
安藤「各スマートフォンやPCにはIPアドレスというものがついていて、あなたのIPアドレスで追跡します。
ネバーランドへのアクセス、位置情報、利用時間、そしてそれがあなただと特定。」
漓久「SoRaはスマートフォンを何回も変えていると?」
安藤「そんなことは現実的じゃないですよね?」
漓久「ならどうやって」
安藤「なかなかの頭脳の持ち主だと思いますよ、SoRaさんって!」
漓久「SoRaの頭脳があんたより上ってことか?」
安藤「ですね。
でも私もこういう修羅場はかなりくぐってきたので、ある程度のSoRaさんの行動範囲は掴んでますが、特定とまではいかないですけど。」
漓久「特定したらSoRaが誰だかわかるんだな?」
安藤「特定は簡単じゃありません。
仮に場所が分かったとしても、それだけじゃ踏み込めないんです。
確証がなければ令状は下りない。
だから今は、関わったあなたから情報を引き出すしかない。
わかりますよね?」
漓久「情報ってSoRaのですか!?」
安藤「そうです!!」
漓久「俺が知るわけがない!!
俺だってSoRaが誰かを知りたいんですから!!」
安藤「なるほど!」
漓久「SoRaも容疑者の一人ですか?」
安藤「怪しい人物がいるなら少しづつ証拠を潰していくのが警察ですよ!
しかし私の見解からすると、SoRaさんは無実です!」
漓久「なら、なぜSoRaを知りたがる!?」
安藤「真実は誰でも知りたいでしょう?
私もあなたと同じ人間ってことですよ。」
漓久「アンタ……
刑事が私情を挟むのかよ!」
安藤「大事なのは桜沢さんを死に至らしめた犯人が誰かってことです。
あなたと桜沢さんの話はこうです。
桜沢さんとSoRaさんは二卵性の双子。
思春期に二人で見に行ったあなたの写真に惹かれ、二人は同じ時間に同じ人、あなたに恋をしてしまった!
それまで仲の良かった二人はいつしか心がすれ違い、特に空央さんは過去の記憶から自身だけが恵まれない環境だと錯覚してSoRaさんを恨むようになった。」
漓久「あの桜沢のダイアリー……
あの写真はやっぱり!」
安藤「あなたと空央さんの通話履歴は全て見せていただきました。」
漓久「やたら詳しいわけだ!」
安藤「驚くのはまだ早いですよ?」
漓久「どういうことだ!」
安藤「あなたが知らないSoRaさんと空央さんのことを、もっと詳しく教えてあげましょうか?」
漓久「なんだと?
容疑者の俺にそんな情報流していいのかよ!」
安藤「犯人を捕まえるためなら!」
漓久「アンタ、いったい何を……」
安藤「空央さんとSoRaさん。
二人は幼少期に虐待を受け、小学4年生のときに両親の元から離れ、とある施設に空央さんは迎え入れられていました。
しかしSoRaさんはすぐに行方不明になっています。養護施設にすら存在がわかっていません。SoRaさんは自身がいるがために姉である空央さんが犠牲になることは耐えられなかった。
そう思い、同じ養護施設から姿を消したと思われます。」
漓久「安藤さん!
アンタなんでそこまで知ってるんだ?
そこまでわかってるならSoRaの本名だってわかるはずだ!!」
安藤「本名……
もちろんわかりますよ!
しかしこの名前に今はなんの意味もありません!」
漓久「どういうことだ!!」
安藤「過去と名前をすべて消し、新たな人物として生まれ変わり、密かに生活をしているからです。」
漓久「そんなことは戸籍謄本上できない!!」
安藤「こう考えたらどうですか?
ある夫婦の子供が行方不明。
何年も何年も行方不明。
死んだかどうかもわからない。
そんな夫婦の元へ一人の過去を捨てた子供が現れる。
身寄りのない子供を引き取り、自身の子供として育てる……」
漓久「そんなバカな!!
できっこない!」
安藤「確かに……
でもありうるってことです!
子供の生活は大人が守れば保障されるってことですよ!!
ただ大人になり、一人で生活をするとなれば過去を隠し通すことはできない!
色んなリスクが伴うんです。」
漓久「ひとつわからないことがある!」
安藤「なんでしょうか?」
漓久「なぜ二人で俺の写真を見に来る事が出来たんだ?」
安藤「二人でコンタクトを取り合って再会したんでしょうね。
それまではお互いを気遣う仲のよい姉妹だった……
しかしあなたのことを二人が好きになってから、何らかの歯車が狂い始めた。
空央さんに何かひとつだけでも欲しいものがあるとしたら……
それはあなただったんでしょう。」
漓久「そんなこと……
俺にはわからねぇ!」
安藤「当然です!
しかし、空央さんがこのまま暴走したらもっと悲惨な結果が生まれていたかもしれません。」
漓久「どういうことだ?」
安藤「桜沢さんの部屋から見つかった日記です。
あなたがSoRaさんとネバーランドでコンタクトを取っていたのを彼女は知っていました。
SoRaさんが初めてあなたにコメントをした夜、凄まじい殺意を抱いた文章がその日の空央さんの日記に書かれていました。
SoRaさんは以前、ネバーランドを窮地に追いやられるコメントをされていました。
そしてそれが空央さんの仕業ともわかっていたようです。
SoRaさんはとても人気があり、その癒された文章で来る人達に安らぎを与えていたようです。
もはやネバーランドの救世主とも言われていました。
人を思いやる奥深い優しさ、空央さんにはとても真似のできない天性の癒し。
それがSoRaさんにはあったようです。
自身を犠牲にしてまでSoRaさんに何もかも捧げた空央さんには、もう憎しみと妬みしか生まれてこなかった……
残ったものは復讐です。」
漓久「SoRaが初めて俺にコメントをくれた日……
その裏で、空央は完全に壊れていた。
そして空央は攻撃を仕掛けてきた。
SoRaは他のフレンドがメッセージを残せるよう、お祝いの通知をひとつだけ残して、それ以外のダイアリーはすべて削除。
信頼できる10人だけを残し、部屋には鍵をかけた……」
安藤「しかしその信頼していた10人の中に、空央さんのサブアバター、YuMeがいたってことですね。」
漓久「ネバーランドの中ではアバターの後ろに誰がいるなんてわからない!
空央は少なくとも2つのアバターを操っていたんだな?」
俺はふと、初めてSoRaがダイアリーにコメントをくれた日のことを思い出した。
漓久「そうか……
そうだったのか……
だからSoRaはあんなメッセージを俺のダイアリーに!
ただの氷の結晶がダイヤモンドダストではないとわかっていながら……」
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ダイヤモンドダスト、
キラキラしてとっても素敵。
ねぇ?
この世界に何かを感じてる?
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カタカナばかりで、あの時はこのメッセージの意味がわからなかった。
SoRaはSoRaなりに、この世界を感じていたんだな。
安藤「SoRaさんにとって、あなたは希望だったのかもしれないですね。」
漓久「安藤さん……アンタ……いったい!」




