Vol.105【みつきの緊急搬送】
篠原「ネバーランドで南漓久のアバター“Kaito”を調べてる時に、まさかとは思って、お前にもカマをかけたつもりだったがな……」
みつき「さすがだよ……篠原さん……
やっぱり私の雇った探偵だよ……」
篠原「まぁな!
しかし、みつきも大したものだ!
あの時の“しらふ”な素振りは、やはりお前がSoRaだったからこそ出来た芸当だ!
恐れ入ったぜ!」
みつき「だから……
こんな身体で、
こんな状況でも……
そこまでして篠原さんに依頼したい気持ち……
わかるでしょ?」
篠原「……そうだな。」
みつき「ゴホッ……ゴホッ……
ぅぅ……」
篠原「みつき?
お前、もう限界なんじゃ……!」
みつき「かなり意識が朦朧としてきたから……
率直に言うね……?」
篠原「わかった。」
みつき「最後の依頼……
お願いします……」
篠原「最後か……
けど、“依頼”じゃなく、
全部を明かしたお前からの“頼み”って事で聞いてやるよ。
具合の悪い奴から金なんか取れねぇしな。」
みつき「ありがとう……
篠原さん……!」
篠原「で、頼みって何だ?」
みつき「……ゴホッ……
ゴホッ……
お、お姉ちゃんを殺った犯人を……
見つけて……!!」
篠原「な、なんだと!?
それは警察の仕事だろうが!!」
みつき「はぁ……
はぁ……
たぶん……
篠原さんじゃなきゃ……
出来ない……
いずれわかる……
篠原さんじゃなきゃ、
お姉ちゃんを殺した犯人には辿り着けない……」
篠原「なんでそうなる!?」
みつき「私は……
私は……
犯人を……
篠原さんに探してほしい……
私からは……
絶対に言えない……
警察にも言えない……
だから……
お願い……」
篠原「お前……
まさか犯人を知ってるのか!?」
みつき「……
私が言えない理由を察して……
お願いだから……
はぁ……
はぁ……」
篠原「みつき……
お前の“言えない理由”……
警察に逮捕させるんじゃなく、
俺から犯人に自首するよう説得してほしい……
そういう事か?」
みつき「お願い……
篠原さん……
これ以上は……
何も……
私の正体を見破った篠原さんなら……
必ず辿り着ける……」
篠原「しかし……
時間が……」
みつき「記憶を……
彼の記憶を……
取り戻して……
ぅぅっ……
う……
ぅ……………………」
篠原「おい、みつき!?
お前、声が――」
その瞬間だった。
みつきの視界が、
大きく揺れる。
耳鳴り。
激しい吐き気。
身体の感覚が、
急速に遠のいていく。
みつき「……ぁ……。」
携帯が、
力なくベッドへ落ちた。
ガタンッ――!!
篠原「おい!?
みつき!?
どうした!!
おい!!」
返事はない。
みつきの身体が、
ゆっくり横へ崩れ落ちる。
ピ――――――ッ……
モニター音が、
不規則に乱れ始めた。
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2017年4月6日 AM7:45
看護師「綾瀬さん!?」
白かった腕には、
無数の内出血斑が広がっている。
唇からは、細い血が滲んでいた。
看護師「先生呼んで!!
早く!!」
慌ただしい足音が、廊下へ響く。
ガラッ!!
田所「綾瀬さん!!」
田所は駆け込むなり、
みつきの状態を確認する。
田所「意識レベル低下!
酸素投与急いで!!」
看護師「はい!!」
田所「SpO2は!?」
看護師「88まで低下してます!!」
田所「血圧は!?」
看護師「急激に落ちてます!!」
田所の表情が、険しく変わる。
田所「再生不良性貧血ステージ4による全身状態悪化だ……。」
みつきの呼吸は浅く、
肩が小刻みに震えていた。
田所「綾瀬さん!!
聞こえますか!!」
反応はない。
ピッ……
ピッ……
ピッ……
モニターだけが、無機質に鳴り続ける。
看護師「先生!
皮下出血、さらに広がっています!」
田所「くそっ……!!
搬送チームへ連絡!!
旭川中央総合病院へ状態共有!!
医療ジェットを急がせろ!!」
看護師「はい!!」
田所は、みつきの細い腕を強く握る。
田所「綾瀬さん……!!
まだ終わるな……!!」
だが――
みつきの意識は、
静かに暗闇へ沈み始めていた。
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篠原「みつき……」
みつきは、
意識が遠のいていく中で、
篠原に全ての想いを託した。
漓久やケンジ、沙羅に、
もう一度会いたいという願い。
そして――
もうこの世にはいなくなってしまった、
姉・空央への想いを胸に抱きながら……。




