変態と変人と
イグニス視点です。少し短いです。
「へックシュ!!」
俺は唐突に鼻がムズムズし、次いでひとつくしゃみをした。
「……………チッ!こんな時に」
鼻の下を乱暴に払うと、キョロキョロと周囲を見回しながら足早に通りを走る。
現在俺は猛烈に焦っていた。
シャワが字を習いたいと言ったので、学舎へと連れて来たのだが、危険な奴に目をつけられた。
その危険な奴というのはフィアーという女で、昔から賢しい奴であり、俺とは犬猿の仲であった。
そんなフィアーは知的好奇心が旺盛で、己の欲望に忠実な変態であった。
最近最も身近な変態女といえば、カルネラであるが危険度でいったらフィアーはその上を行く。
流石に殺しはしないだろうが、痛い目ぐらいは見る可能性がある。
先ほど見たフィアーの目は、常軌を逸していたからだ。
そんなフィアーから逃げるように言って、シャワを部屋の外へと出したまでは良かったのだが、フィアーを気絶させてから外に出ると、学舎の近くにシャワの姿は無かった。
どこへ行ったのだろうか?
この周辺は学舎があるので比較的に安全なのだが、何せシャワは希少なエルフの幼体だし、その上あんなにも可愛いのだから安心は出来ない。
興奮するフィアーを気絶させるのに、少々手間取ってしまったのもいけなかった。
普段は理性的なフィアーであったが、自分の興味がある物や者には一切我慢しない一面がある。
今後はカルネラとフィアーに煩わされると思うと、頭が痛い。
フィアーへはシャワに手を出したら、俺に痛い目に合うと、身体に教え込んだからもう無茶はしないだろうが、カルネラがな………アイツ馬鹿だからな…………またシャワにちょっかい掛けに来るんだろうなぁ………。
ハァ……………。憂鬱だ。
***
周辺に居る奴らに、エルフの幼体であるシャワを見なかったかと聞き込みながら進むと、直ぐに何人かの目撃者から話を聞くことが出来た。
どうやらシャワは、年若い竜たちと追いかけっこをしているらしい。
わーわー騒ぎながら通りを駆けていったらしく、老齢な者などは「子供は元気が1番じゃ。フォッフォッフォッ!大変よろしいのぅ……」などと、楽しそうに微笑んでいたほどであった。
その話を聞き俺はとても嬉しく思った。
シャワがついさっき会ったばかりの子供たちと、楽しそうに遊ぶという事に微笑ましさと、一抹の不安が浮かぶ。
このままシャワが満足するまで、遊ばせてやりたいのは山々なのだが、家への帰り道などが心配なので、迎えに行く事にする。
目撃情報から、マズルカ通りの裏路地へと走って行ったとの情報を得たので、そこへと向かうためゆっくりと歩き始めた。
「は、は、はっくしぇんっ!!」
「………………姉さん、大丈夫かい?」
「あ………あーーーズルッ……大丈夫よぉ!このカルネラ様は無敵よ!」
「む、無敵!? 」
「そうよ!愛しのシャワーちゃんに、仕上がったばかりのこのドレスを着せてハァハァするまでは無敵なのよ!」
「意味が分からない上に気持ち悪い」
「ふぉぉぉ……………待っててねぇっ!シャワーちゃーーーん!!!」