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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第99話、アデン攻略作戦


 ところかわってインド洋、アフリカ。ケニアはモンバサにあるキリンディニ港。マダガスカル島攻略作戦の失敗で、敗走したイギリス艦隊残党が駐留していた。


 戦艦『ラミリーズ』に将旗をあげるエドワード・サイフレット少将は、先任参謀と顔を見合わせていた。


「――本国は何も言ってこないんだな」


 サイフレット少将が言えば、先任参謀は首をわずかにかしげた。


「待機しろ、とは言っていますよ」

「それがもう半月だ」


 指揮官は顔をしかめた。


「本来の予定なら、我が軍はマダガスカル島を攻略し、艦隊は地中海に戻っているはずだった」


 地中海戦線。北アフリカの戦いを左右する補給線、その攻防の拠点となるマルタ島の救援。何もかも上手くいっていれば、その救援船団が編成され、東洋艦隊を除くアイアンクラッド作戦参加艦艇は、その護衛で地獄の地中海を行く予定であった。


「ここは静かでいいですな」


 先任参謀は言った。


「ドイツやイタリアの爆撃機に悩まされることはない」

「日本軍がいるぞ」


 サイフレットは嘆息した。


「あの機動部隊が襲いかかってきてみろ。我々はアメリカ人がパールハーバーでやられたように、吹き飛ばされるに違いない」

「飛行場に戦闘機を回してくれれば、少しは安心できるんですがね」


 先任参謀が皮肉げに言うと、サイフレットは目を回してみせた。


「ここの飛行場は、艦隊航空隊用だ。その肝心の航空隊は、マダガスカルの海に沈んでしまったよ」


 RAFモンバサは、空母航空隊用の飛行場であり、空母が停泊している間、航空隊はそこに預けられる。つまり、空母がいなければ、飛行場も空に近い状態ということだ。


 今あるのは、偵察機と故障修理のために残された予備機くらいなものだろう。日本の空母の航空隊が襲ってきた場合、対抗できるものではない。


「いつ日本軍が、ここに向かってくるか。私は気が気でないよ」

「喜望峰辺りがやられてましたからね」


 サイモンズタウン、ポートエリザベスなどなど南アフリカの南端とも言える拠点や港がやられた。ケニアもアフリカ東岸ではあるが、マダガスカル島を挟んだ反対側というべき位置にある。


「だがそれも二週間ほど前だ。彼らが今度は北の我々を目指しても、何ら不思議はない」

「演習にかこつけて、海に出ますか?」


 先任参謀は提案した。少なくとも港で座り込んでいるよりは、いざという時動ける。サイフレットは苦笑した。


「海の上だろうと、この『ラミリーズ』が日本軍の空襲を生き延びられるとは思えないな。……悲観論じゃない。事実だ。このフネの姉妹艦は、実際やられている」


 アイアンクラッド作戦中止、そして撤退。その近くを航行していた護送船団には、姉妹艦の『リヴェンジ』が護衛についていた。だが彼女も、日本軍航空隊の猛爆を受けてモザンビーク海峡に沈んだ。


「港なら、大破着底。もちろん死傷者は出るだろうが、果たしてどちらの方が、犠牲は少ないだろうな」

「興味深いですな」


 先任参謀が言った時、通信兵が駆け込んできた。


「サー! 緊急電を傍受しました。アデン港ならびに近隣飛行場が、日本軍航空隊の攻撃を受けています!」

「何だと!?」


 サイフレットは驚いた。まさか自分たちよりさらに北にある友軍が攻撃されるなど、予想だにしていなかったからだ。その本音を先任参謀が吐き捨てるように言った。


「我々は、眼中にないということですな」


 なめられたものである。日本軍は、『ラミリーズ』以下残存艦艇をまったく脅威と見ていないと、彼らは受け取ったのである。



  ・  ・  ・



 特破隊インド洋遠征艦隊、第二戦闘群――アデン攻略艦隊は以下のようになる。



●日本海軍特破隊アデン攻略部隊:指揮官、佐々山 久雄少将


 戦艦  :「肥後」

 巡洋戦艦:「愛鷹」

 空母  :「黒竜」「雷竜」

 哨戒空母:「大鶴」

 重巡洋艦:「妙義」

 軽巡洋艦:「奥入瀬」「石狩」

 駆逐艦 :「凍風」「旋風」「瑞風」「真風」「青雲」「天雲」

 護衛駆逐艦:「桑」「桐」「杉」「八重桜」「矢竹」「桂」「若桜」

 強襲揚陸艦:「敦賀」「須佐」

 潜水艦 :「伊710」「伊711」「伊712」「伊713」「伊714」



 潜水艦による偵察、監視。そしてアデン湾に設置された転移中継ブイを使って、アデン攻略部隊は転移した。


 これがマダガスカル島からアデンまで、連合軍に察知されることなく移動したカラクリである。


「第一次攻撃隊、発艦!」


 空母『黒竜』『雷竜』から、九八式艦上偵察戦闘攻撃機が発艦。哨戒装甲空母『大鶴』から、ウォーホーク、バンシーといった鹵獲航空機が発進した。


 それらはアデンの飛行場を急襲する。アデン司令部のフレデリック・ジョージ・ダービー・ハーズ空軍中将は、ただちに反撃と航空機の空中退避を指令したが、すでに手遅れであった。


 それだけ日本軍航空隊の攻撃は素早かった。彼らの空母は、マ式レールカタパルトというレールの上に載った機を加速、発艦させる装置があり、これにより飛行甲板の航空機が連続射出された。


 そしてその航空機は、空中集合することなく、そのまま目標へ一気に飛んだ。


 上空を警戒していたホーカー・ハリケーン戦闘機2機がただちに迎え撃ったが、多勢に無勢であった。


 たちまちP-40ウォーホークの部隊に押しつぶされて退散させられると、九八式艦偵、A-24バンシーの爆撃が、飛行場や地上部隊の駐屯地に襲いかかった。


 防空飛行隊は、後続機を出す間もなく、ブレニム軽爆撃機を装備する第8飛行隊、ハドソン双発爆撃機を有する第459飛行隊も為す術なく、地上で破壊された。


 アデンの空を日の丸が飛ぶ。イギリスのラウンデルはそこにはなかった。


 そしてアデン港に、戦艦『肥後』率いる水上打撃部隊が迫ると、スループほか武装艦に艦砲を見舞った。

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― 新着の感想 ―
転移戦術の恐ろしさですねえ。しかも、鹵獲米軍機に叩かれる皮肉。
いくら戦艦があるとはいえ、戦略目的に合致しなければ無視されるのも当然ですかね(苦笑) そして特破隊は、転移を使って時間と燃料を節約して目標を襲撃と! 連合艦隊の慢心している参謀連中に見せてやりたいです…
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