↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/102

第100話、強襲連隊、突入す


 アデン港は混沌の中にあった。第二戦闘群の戦艦、巡洋艦がアデン港内の英国艦艇に砲撃を浴びせて掃討する。小型艦艇には過剰な一撃は、たちまち戦闘力を奪い去り、航行不能に追いやる。


 上空には、A-24バンシーが周回し、港にある防衛設備や砲を発見すると地上掃射を仕掛けた。


 沈黙まで、さほど時間はかからなかった。第二戦闘群水上部隊の後方にいた強襲揚陸艦『敦賀』と『須佐』に、出番がやってくる。


「ようし、では、港より一気に市内へ突入する!」


 特破陸戦隊、第一強襲連隊長、東堂 角一大佐は、『敦賀』の飛行甲板にいた。これより突撃する上陸艇に、指揮官の姿はある。


「強襲艇団! 発進っ!」


 軍刀を指揮棒のごとく正面に突き出す。


 彼を載せた上陸艇は、浮遊板により数メートル浮かび上がると、マ式推進器により空中を前進した。まるで見えない波の上を行くがごとく、空中を滑るように移動しはじめる。


 同じく飛行甲板に並べられていた上陸艇が、次々に浮かび上がる。そして飛行甲板の切れ目に差し掛かると、操縦員が浮遊板の高さを調整。海面から数メートルを急に落ちないようにする。


 浮遊板は高度を設定しているので、高さが変われば急に落ちたり、逆に飛び上がったりするのである。


 飛行甲板と海面の高さの切り替わる寸前に、高さを合わせて、あまり上下しないように飛ばすのが操縦員の腕の見せどころである。


 だが、航空機が飛行甲板のギリギリで離れた時に、沈み込むように若干落ちる程度は普通なので、多少の『揺れ』は許容される。正直、海面の上を浮遊している時が上下運動が激しいまであった。


 波による抵抗を受けない上陸艇は、高さ5メートルの位置になるよう設定。波に揺られるように動きながら、アデン港へ滑るように突き進んだ。


 上陸艇は全長13メートル、全幅4メートル。浮遊飛行速度55キロを発揮する。武装は、船首に7.7ミリ航空機銃が1門、側面に各1門の計3門。


 歩兵40名を載せるのが基本だが、特破陸戦隊では、多様なゴーレム兵も運用するため、装備や兵器によって定数は変わる。


 鉄帽を被った東堂は、機関銃手の後ろにいて、近づきつつあるアデン港を眺める。港から逃げるは地元のイエメン人か。


 突然、戦場となったのだ。それまで日常にあった者たちが、慌てて避難する。盾付き7.7ミリ機銃に取り付いた機関銃手が、ちらと振り返る。


「大佐! 頭をあげないで」


 撃たれますよ――の意味で言った瞬間、ピュンと音がした。イギリスの水兵か。ライフルで接近する上陸艇に撃ってきたのだ。


「まだ、まとまった部隊は来ていないようだな!」

「大佐ァー!」


 機関銃手が怒鳴った。指揮官が撃たれたらどうするんですか、と言わんばかりである。


 右隣を進む上陸艇の機関銃が火を噴いた。銃をもった敵兵を見つけたのかもしれない。その間にも、操縦員が浮遊板の高さを調整し、載せている兵たちがすぐに陸地に降りられるようにする。


 スムーズな兵の展開もまた、操縦員の腕の見せどころであった。


「突入ーっ!」


 上陸艇は、港に入り込む。そして推進器の速度を落として、桟橋やその他陸地にて停止する。浮遊板の高さも10センチにし、左右展開口が開いた。


「突撃ィィー!」


 陸戦隊が上陸艇から飛び降りた。その主力はゴーレム(人形)兵――人間とほぼ同じ大きさの乙型兵が小銃や機関銃を手に、周囲を威圧しつつ前進する。


 日本兵が港から上陸したことで、逃げ遅れた人々が悲鳴を上げて遠ざかろうとする。しかし中には、武器を手に撃ってくる者もいる。


 乙型兵は、三八式小銃をスムーズに構えて発砲。あっさりと撃ってきた者を一撃で打ち倒した。


 水が床に広がっていくように浸透していく人形兵。その様子を東堂は眺める。事前の計画通り、各小隊長の指示を受けて兵と人形兵の混成部隊は動く。


 まさに、訓練通りの動き。始まったばかりではあるが、東堂は出だしのよさに頬を緩めた。


 守備隊が動き出しているだろうが、どう動くだろうか。イギリスと現地軍は、飛行場や都市の外の戦いは想定しているだろう。アデンに上陸作戦を仕掛けてくる敵を予想していたかは大いに疑問ではあるが、東堂たち強襲連隊は、敵の想像の外の位置からの上陸を仕掛けていると考えている。


 つまり、防衛態勢の急所を無理やり作り出して、乗り込んでいるのだ。そこは必然的に、防御力が低い。 


「さて、我々の戦い方がどこまでやれるか」


 多少強引であっても、抵抗する敵を正面から叩き潰す。ユダヤのゴーレム、それを現代にアップグレードされた近代的人工兵器がどこまで通用するか、よく見ておかなくてはいけない。


「アデン司令部へ、進撃せよ!」


 律儀に敵が準備を整えるのを待つまでもない。どうせ敵はやってくるのだから、こちらからも動くのである。


 せっかくの奇襲である。それを活用せねばもったいない。


 乙型兵の他、大型人形兵――甲型兵も動き出す。高さ2.5メートルの、いかにもゴーレムといった姿をした大型。それらは乙型兵より数は少ないが、重盾を持っていたり、7.7ミリ機銃を機関砲のように携帯したり、迫撃砲を背中に担いでいたりと、重装備である。足は早くないが、装甲車のように突入戦力として使える代物である。


 さらに丙型兵――もはや人型ですらない、動く機関銃や迫撃砲が、前線に随伴する。


 上陸艇は機関銃を武器に、歩兵の支援を行う。普通の軍隊であったなら、後続部隊を前線に運ぶために、揚陸艦と往復するのだろうが、特破陸戦隊のやり方は違う。


「連隊長! ポータル設置完了です!」

「よろしい。やれ!」

「はっ!」


 上陸艇が運んできたポータル――同じポータル同士を繋いで、転移する門を作る装置が、光る出入り口を形成。そこから強襲揚陸艦に待機していた第二陣の兵を送り込んできた。


 さらには特破の戦車である零式戦車がポータルを経由して上陸を果たす。


 このアデンのイギリス軍に装甲車両はないと聞いているから、少々大人げないかもしれない。それに市内での戦車は、あまり使い勝手はよくないのだが、現地兵の士気を下げる効果はあるだろう。要するに、はったりだ。


 かつて特破陸戦隊、その尖兵たる強襲連隊は、一気にアデン港とその都市を攻略した。東南アジアの島々の攻略の時以上に奇襲だったらしく、守備隊は半日は、抵抗したもののあっさりと降伏するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
100話おめでとうございます。 敵守備隊からすれば文字通り悪魔の軍団だよね、これ・・・。半日で陥落したなら殆ど外に伝えられた人間はいないだろうし、言っても信じて貰えないだろうし。
この上陸艇、ホバークラフトよりも高性能では!? それに加えて、人型ゴーレムというロボット兵に全高2M超の巨人兵と自走する機関銃や迫撃砲という、英国兵や現地人からしたら”悪魔の軍団”とか思われてるかも?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。