↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
94/101

第94話、軍令部員、マダガスカル島駐留艦隊を視察


 マダガスカル島、ディエゴ・スアレス港。


 ヴィシー・フランスの潜水艦や武装商船をよそに、日本海軍の大戦艦――『肥後』が停泊している。


 ドイツのビスマルク級戦艦の改修艦――その元となった名を知れば、フランス人たちはどういう反応をしただろうか? 艦艇の顔ともいうべき艦橋は、日本海軍特有のパゴダマスト。武装その他艤装は、日本のものなので、言っても信じられるかは別であるが。


 特破隊インド洋遠征艦隊こと、第二戦闘群が駐留するその港に、内地から軍令部員が視察にやってきた。


「いやはや、ここは夏ですなぁ」


 某総統を真似てチョビ髭を生やしたその男の名は、神(かみ) 重徳(しげのり)という。


 軍令部第一部第一課 兼 大本営海軍参謀 兼 陸軍参謀本部参謀。開戦前に海軍大佐となった。


「いやいや、暦の上では、秋みたいなものだよ」


 第二戦闘群参謀長の阿畑 洋吉大佐は、朗らかに答えた。


「南半球だからね。もう2、3ヶ月もすれば、短い冬がきて、半年後にはガンと暑い夏がくる……らしいよ」

「らしい、ですか」

「僕も、ここにきたばかりだからね。聞きかじりさ」


 阿畑は港を歩く。それについていく神。


「転移というのは便利なものですな。東京からわずか1分でマダガスカル島とは」

「君も転移連絡網の偉大さがわかったか」


 阿畑は皮肉げな笑みを浮かべる。


「どいつもこいつも、瞬間移動なんて夢物語だって笑い飛ばすが、いざ体験するとこれほど楽なものはない」

「まったくですな。これを縦横無尽に活用すれば、オーストラリアや米本土に直接乗り込むこともできましょう! いや、まずは手近なところでセイロン島を落としますか」


 神は鼻息荒い。転移の素晴らしさに、様々な使い方が浮かんで興奮が収まらないのだろう。彼は第一部第一課、つまり作戦課の人間なのだ。

 しかし阿畑は苦笑する。


「転移するのは一瞬だがね。準備するまでが大変なんだよ」


 その転移を中継する艦艇だったり、ブイだったり、装置だったり。その転移場所に配置しなくてはならない。味方勢力圏ならともかく、敵地やその近くとなれば、接近するのも苦労するのである。のべつ幕なしにできるものではない、と暗に告げる。


「それに肝心の陸軍がついてこないよ」

「しかし、この転移の有効性を理解すれば、陸軍も話に乗るでしょう。船舶や補給の問題で難色を示したセイロン島攻略も、今度は陸軍も無理とはいいますまい」


 それでも渋るなら臆病者だ、と神は強い言葉を使った。阿畑は、停泊する強襲揚陸艦の方へと足を向けながら、同伴する神を見た。


「うちのボスは、セイロン島は無視する考えらしい」

「何故です? そこを抑えれば、インドも目と鼻の先でしょうし、英軍のインド洋での活動の息の根を止められます」

「島を占領するには、大規模な戦力が必要になるからだ」


 阿畑は答えた。一瞬、彼の言葉が神明のそれと重なった。


「戦力は増加傾向にあるが、抑えるべき場所はそれこそ山ほどある。敵と正面からぶつかって戦力を消耗するのは避けたいんだよ。日本には人がいないからね。大事に使わないと、息切れして戦えなくなる」

「はぁ……」


 要領を得ないという顔の神である。阿畑は笑った。


「つまりだ。敵の少ないところを狙って、そこを抑える。10人を使って、2、3カ所を占領するより、10人で10カ所を占領しようという考え方だ」

「10人10カ所……」


 神は、目から鱗が落ちたような表情になった。それができたら何と効率的なことか。


「そういえば、遠征艦隊の次の目標は、アデンだそうですな」

「そうだね。そこを獲れば、独伊の戦う北アフリカ戦線、その英軍は完全に補給を絶たれ、戦えなくなる。そして紅海の出口を押さえれば、実質、スエズ運河を封鎖するようなものだからね」


 少ない戦力で大きな効果を上げる要衝。それがアデンだ。


「確かに狙い目ではあるかもしれませんが、陸軍は協力しないんですよね」

「ここに来ているのは、我々特破だけだからね」


 阿畑は、強襲揚陸艦を見上げる。


「だが我々には、海上から上陸する陸上戦闘群がある。君も編成くらいは見ているだろう? それが実際に使えるかどうか、アデン攻略ではっきりするというわけだ」


 強襲揚陸艦の『敦賀』と『須佐』。特破隊の、遠征艦隊の編成にしっかり組み込まれている二隻の艦である。


 神もまた、手前の『敦賀』を見上げる。阿畑は言った。


「排水量1万7000トン……だったかな。フランスのオーシャンライナー『ショルジュ・フィリパー』を改装したフネで、全長は165メートル、幅は21メートルあるかないか。陸軍さんの特殊船の『あきつ丸』みたいなものだな」


 1942年1月30日に陸軍の『あきつ丸』は就役しているが、あれに比べて若干大きい。飛行甲板があって、一見すると空母に見えなくもない。


「空母としても使えるんですか?」

「一応ね。物質輸送のスペースを利用すれば、空母としても使えなくはない」


 阿畑は答えた。神は首をかしげる。


「ちなみに、強襲揚陸艦という名前は初めてなんですが、兵員輸送艦とは違うんですよね?」

「ああ。上陸部隊を展開しつつ、航空機で対地支援の爆撃や制空戦闘の補助もこなせる母艦。簡単に言えば、上陸支援型空母……うんまあ、厳密には違うかもしれないが、そういうものという認識でいいんじゃないか」

「実は阿畑さんも、よくわかっていなかったり?」

「大体のところはわかっている。僕は新しいモノ好きだからね」


 警備の兵と敬礼を交わして、阿畑は舷梯を登る。神も続く。


「近くで見ると大きいですが、空母としては小さい部類ですな。航空機の搭載数が少ないんじゃないですか?」


 せっかくの対地支援とやらも、中途半端になるのではないか。


「そこは実際にやってみないと多いのか少ないのかわからん」


 阿畑は正直だった。


「ただまあ、飛行甲板に転移板を仕込んで、基地航空隊を使えるようにって構想もあるそうだ」

「哨戒装甲空母と同じように?」

「そうそれ。ただ島型艦橋の上に飛行甲板は広くないから、大型機は使えないが……ほら、鹵獲した急降下爆撃機(バンシー)とかで、対地支援をやる分にはできるって話でしょうよ」


 さあ、案内しよう――阿畑は言った。


「我らが特破が保有する特破陸戦隊を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
転移と強襲揚陸艦とか、殴り込み精神に思い切り刺さりそうな組み合わせだなあ・・・。
マダガスカルを攻略した特破隊の視察に来たのがあの神重徳!? ヒトラー信奉者というだけあって、やはりちょび髭なんですね(笑) そんな彼が案内されたのが強襲揚陸艦。 多分当時の日本海軍にはない構想の船です…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。