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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第79話、東洋艦隊、壊滅す


 能力者によって弾道を修正された九一式徹甲弾は、本来なら散らばる砲弾を一点に収束させた。

 その効果は、すぐに証明された。


 戦艦『マレーヤ』に激震が走った。艦長のジョン・ウィリアム・アシュリー・ウォーラー大佐は、艦に走った直撃弾の衝撃と、艦橋周りを取り囲む水柱に目を白黒させる。


「馬鹿な、初弾だぞ!」

「落ち着きたまえよ、艦長」


 ジェームズ・サマヴィル中将は声をかけた。正直、遠距離砲撃で初弾から命中弾が複数出たことには、彼もまた驚いていたが、顔には出さないように心がけた。


「艦長、これが我々の敵だ」


 つい最近まで、第一海軍卿の海軍補佐官であったウォーラー大佐である。久々の前線の艦長であるが、『マレーヤ』に着任して、まだ半月しか経っていないのだから、彼もまた不運であったかもしれない。


 表情を引きつらせるウォーラー。だが何かいう前に、激しく金属を引き裂く大爆発の音が響き、衝撃波が『マレーヤ』に吹き荒れた。


「やられたな」


 サマヴィルが顔をしかめた時、報告が飛び込んだ。


「『レゾリューション』轟沈!」


 R級戦艦『レゾリューション』が、最初の斉射で爆沈した。戦艦『土佐』の砲弾8発が、艦橋を叩き割り、煙突を粉砕、A砲塔、X砲塔の天蓋を貫通し、弾薬庫が誘爆した。


「フッドの悲劇、再び、か……!」


 1941年5月のライン演習作戦――ドイツ戦艦『ビスマルク』と交戦したイギリス巡洋戦艦『フッド』が砲戦開始後、約8分で轟沈してしまった。あれはラッキーパンチによる一発だったのだろうが、そんなものを繰り返されて愉快な気分にはならない。

 参謀長は声を上ずらせた。


「提督、敵はコンゴウ型ではないような――」

「だろうな。14インチ砲の砲撃で、ああも簡単に沈まない」


 戦艦というものは、得意砲戦距離で、自艦の主砲が命中しても装甲を貫かれない装甲を持っている。

 R級にしろクイーン・エリザベス級にしろ、金剛型戦艦の砲弾を数発受けたくらいで装甲を貫通されるようなものではない。


 戦艦というものはそういうものだ。ドイツの新型のシャルンホルスト級戦艦が、船団護衛についていた旧式のR級戦艦に恐れをなして戦いを避けるのもそうだ。

 大砲を積んだ軍艦のもっとも価値を見いだすならば、積まれている砲の威力と、それに耐える装甲を持っているか否かだ。


 我が海軍の偉大な先達、かの戦艦ドレッドノートを生み出したジョン・アーバスノット・フィッシャーは、『速度は最大の防御』という持論のもと、巡洋戦艦を送り出したが、ユトランド海戦で装甲に劣る巡洋戦艦が次々に爆沈したことで、その価値は大きく減じた。


 やはり戦艦は、火力と装甲を備えなくてはならない。速度は有利なポジションを占めるために重要な要素だが、巡洋艦が戦艦と正面から殴り合って勝つのが困難なように、速ければいいというものでもない。


「だが砲と装甲の差は、戦艦同士の戦いでは致命的なものだ。なあ、諸君――」


 戦艦『マレーヤ』に砲弾が降り注ぐ。三隻の41センチ砲弾は、全長195メートル、幅約32メートルの艦体の中に収束し、唯一稼働状態にあったクイーン・エリザベス級戦艦に致命傷を負わせた。



  ・  ・  ・



 敵戦艦、爆沈!

 戦艦『土佐』の艦橋にもたらされた報告。神明 龍造大佐は無感動な目で、水平線上に浮かぶ爆発煙を見つめた。

 先任参謀の諏訪 将治少佐は口を開いた。


「我が『土佐』の命中精度はさすがの一言です」


 レゾリューション、そしてマレーヤ撃沈に『土佐』の砲弾が貢献している。神明は言った。


「真に賞賛されるのは、正木大尉の実力だろう」


 砲弾を修正し、目標に命中させる能力者である正木 初子大尉。彼女の能力なくば、戦艦は当たるまで無駄弾を撃ち続けていた。


「そして、我が方の火力が敵戦艦より勝っていた。戦艦というものは、実にシンプルなものだ」


 たとえば、これが41センチ砲搭載戦艦ではなく、金剛型や扶桑型といった35.6センチ砲戦艦だったならどうか? 正木 初子の腕前なら、それでもR級戦艦を追い込み、大破させていただろうが、ああも簡単に沈めるのは難しかったに違いない。


 それを聞いた諏訪は、かすかに頷きつつ、話題を切り替えた。


「ともあれ、これで、東洋艦隊も撃滅できそうですな。当初の予定どおりに」


 重巡洋艦『妙義』、『筑波』が、英軽巡洋艦に砲撃を浴びせている。強力な28センチ砲が、装甲などあってないような状態の敵巡洋艦を叩く。


 果敢に突撃を試みるイギリス駆逐艦も、『奥入瀬』『渡良瀬』の15.2センチ三連装速射砲の猛撃によって、蜂の巣にされ、青雲型駆逐艦――トライバル級駆逐艦改装――から12.7センチ砲――対空・対艦砲弾である一式障壁弾を撃ち込まれ、艦体を両断され轟沈していった。


 また、水上打撃部隊の頭上を、九八式艦上偵察戦闘攻撃機の編隊が飛び抜けていった。第二次攻撃隊――もう1隻いるイギリス装甲空母――『フォーミダブル』を沈めるべく向かっているのだ。


 東洋艦隊水上部隊から分離して間もないので、英空母は離脱することはできないだろう。これでこの戦いはほぼ決着がついたと言っても過言ではない。


「第一航空艦隊は主力を捕捉できませんでしたが、我々は案外簡単にやれましたね」

「相手が上陸作戦をしようとしていたところだったからな」


 神明はそっけない。


「この状況では逃げるに逃げられない。我々はそのタイミングで仕掛けただけだ」


 上陸部隊の護衛のためにも東洋艦隊は、艦隊保全などと言っていられない。セイロン島の時は、日本軍が上陸戦を仕掛けなかったから、あっさりと離脱することもできた。

 もしセイロン島に陸軍を上陸させる作戦だった場合、一度は姿を消した東洋艦隊も、背後から奇襲するべく隙を窺っていたかもしれない。


 南雲中将の第一航空艦隊から逃れた東洋艦隊は、しかしその約一カ月後、マダガスカル島近海で、壊滅したのであった。

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― 新着の感想 ―
やはり、案の定というか想定通りというか、見事なまでにあっけない結末でした(苦笑) 恐らく、特破隊側にはほとんど損害はないんでしょうね(苦笑) それにしても、能力者による砲弾収束って、ほんとヤバいですね…
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