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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第71話、MI作戦


 ミッドウェー作戦が連合艦隊から提案されたのは、米爆撃隊が本土を狙って攻撃してくるより前の話だった。


 連合艦隊がインド洋作戦を提案した時、当初はセイロン島攻略を含むものであったが、これに歩兵を供出することになる陸軍が反対した。

 それでなくても戦線が拡大し、その輸送に関して問題を抱えていた陸軍は、セイロン島の攻略に自信がないという点で反対したのであった。


 セイロン島の攻略が不可能で、英東洋艦隊の撃滅ということでしかインド洋作戦が展開できなくなった連合艦隊は、第二段作戦が開始されるまでの残された時間で代替となる作戦案を策定しなくてはならなくなった。


 しかし、連合艦隊の参謀たちは、戦争を早期に終わらせる作戦の立案に難儀した。山本長官も、対米戦は短期決戦でしか勝機はないと公言し、その幕僚たちも理解するところであるが、それをどう実行するかについては暗中模索といったところであった。


 かくて、元々案としてあったハワイ諸島攻略を念頭に作戦の立案を開始した連合艦隊司令部であったが、軍令部は難色を示す。

 はっきり言えば、反対だった。


 日本の国力からしてハワイの攻略と維持は不可能である。であれば、インド洋作戦を重視し、イギリスの打倒、同盟国ドイツを支援し、その方面からの戦争の決着を図るほうがまだ可能性があると考えがあった。


 しかし、連合艦隊司令部は、ここでミッドウェー作戦――MI作戦を提案する。ハワイ攻略までの繋ぎだが、目と鼻の先にある同地を攻撃すれば米空母群が出てくるに違いない。そしてこれを叩ければ、以後のハワイ作戦の成功もまた可能性が高くなる。


 だが軍令部は頷かない。彼らはあくまで米豪遮断を重視し、フィジー方面の攻略を計画していた。

 FS作戦――フィジー、ニューカレドニアの攻略を重視する案を強く推していた。


 連合艦隊と軍令部の意見は対立したのだ。

 そこで連合艦隊司令部は、真珠湾攻撃を軍令部に承諾させた手を取る。黒島 亀人先任参謀、渡辺 安次戦務参謀は、軍令部作戦部長の福留 繁少将に対して、その切り札を切った。


「この作戦が認められないのであれば、山本長官は連合艦隊司令長官の職を辞任するとのことです」


 しかし第一部作戦課は動かなかった。これ以上の交渉も見込みなしと判断した渡辺は、軍令部次長の伊藤 整一中将に直談判した。ミッドウェー作戦について説明し、山本の意志を伝えれば、伊藤は部内で検討するとその場は収めた。


 結果は、双方の案をまとめた、妥協の産物となった。ミッドウェー作戦をやる、その後、FS作戦もやるというものだ。当初のFS作戦から修正は必要であったが、軍令部としての立場と、実行部隊である連合艦隊の面子の双方を立てる落としどころで落ち着いた。


 永野 修身軍令部総長も認めたこの作戦が内定したのは4月の5日。ドゥーリトル爆撃のおよそ2週間前のことである。


 海軍の次期作戦構想が定まったことで、陸軍にもそれは伝えられた。ミッドウェー攻略については海軍が単独で行うものであるが、可能であれば陸軍が兵力を出すことを希望するとした。最悪でも海軍だけでやるのであればまあ……、と陸軍参謀本部は、半ば蚊帳の外だったこともあり特に反対はしなかった。もちろん、乗り気でもなかった。



   ・  ・  ・



 MI作戦に対して積極的なのは連合艦隊のみであり、軍令部も陸軍も乗り気ではなかったが、ここでその潮目が変わる出来事が起きる。


 4月18日、ドゥーリトル空襲である。

 被害はなかったとはいえ、日本本土に米空母が近づき、一歩間違えれば東京が空襲されたかもしれないという事実は、日本陸海軍を動揺させた。


 これまでしきりに米空母を捕捉撃滅すべしと叫んでいた山本 五十六であったが、このアメリカの奇襲に、その危機感はますます強くなった。

 そしてこれまで渋っていた海軍軍令部、陸軍までが、二度とアメリカに本土への攻撃を許さないためにミッドウェー攻略の支持に回った。


 陸軍は制圧部隊を派遣し、軍令部もまたMI作戦を完全なものとするべく、策を巡らせた。……以前から反対していた理由――ミッドウェーを制圧したとて、米機動部隊は出てくるか、いまいち確証がない。占領した後になって補給線を攻撃してくれば維持が難しい――への不安を払拭すべく、米軍を確実に出撃させ、これを叩けるように北方、アリューシャン方面への陽動攻撃案をまとめた。日本軍が大攻勢に出たとみれば、国内世論的にも米軍は動かざるを得ない。山本長官が望む米空母撃滅も確実なものとなるのではないか、という考えである。


 そしてMI作戦、ミッドウェー上陸を気象条件などを鑑み、6月7日に決定した。

 4月28日、連合艦隊旗艦である戦艦『大和』にて、1週間をかけて「第一段階作戦戦訓研究会」と「第二段作戦図上演習」が行われた。


 特に第二段作戦図上演習は、5月1日から実施され、ミッドウェー攻略からハワイ攻略までが検証された。

 図上演習については3日の午後に終わった。


 結果は、目を疑うようなものだった。日本軍を示す青軍に対して、米軍(赤軍)は、ミッドウェー攻略中に米機動部隊を突入させ、交戦。その結果、日本機動部隊は作戦続行が困難になったが、審判を務める連合艦隊参謀長、宇垣 纏少将がサイコロをやり直させ、被害を軽くして作戦を続行。沈没判定された『赤城』を復活させ、その後も日本側有利な裁定を続け、最後にはミッドウェー攻略を成功に終わった。

 ……計画期日より占領までに遅れたり、それにより燃料が不足したり、座礁した駆逐艦があったなど、正直問題だらけだったが。


 宇垣参謀長は、この結果を踏まえ、「実際はこうはならないように連合艦隊は作戦指導を行う」と締めくくった。



  ・  ・  ・



 なお、この頃、4月23日にて発令されたポートモレスビーおよびツラギ島攻略を目的としたMO作戦が実行に移され、5月3日未明、ソロモン諸島ツラギに日本軍が上陸、そして占領した。


 続いてポートモレスビー攻略に向けて第四艦隊、第五航空戦隊を中心とした部隊が進撃を行う。


 だが、この時、遠くインド洋でも一つの戦いが行われる。

 舞台は、インド洋西にあるマダガスカル島。ヴィシー・フランスの勢力圏に対して、イギリス軍が侵攻を開始したのだ。


 アイアンクラッド作戦の発動である。

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― 新着の感想 ―
この世界でも宇垣はサイコロ修正させたか・・・。本編世界だと有能な鉄砲屋でしたけど、参謀長としては・・・。
ドゥーリトル爆撃が引き金になって、これまで対立していたもの同士が協調というより妥協してミッドウェー作戦実施が決定とは、またなんとも(苦笑) まあ、決まったからには徹底的にやるとしても、図上演習を自軍有…
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