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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第66話、迫る空母


 その艦は、種別においてどれに分類されるか、まだ決まっていなかった。


龍飛(たっぴ)』。

 元は、イギリス海軍初の護衛空母『オーダシティ』である。


 この船は欧州大戦が始まった後の1940年、イギリス軍がドイツの商船『ハノーファー』を鹵獲、貨物船として使っていたところを補助空母に改装されたものだ。

 飛行甲板を載せた以外、航空機用の格納庫もエレベーターもないという、短期間の工事で前線に送り出してやるといわんばかりの突貫工事空母であった。目的が船団護衛で使えればよしという都合上、艦載機は飛行甲板に露天駐機されている分だけで充分と考えられたからである。


 そしてこの『オーダシティ』は、マートレット――アメリカのF4Fワイルドキャットを運用して、船団護衛に活躍したが、1941年12月21日に沈没。その後、沈没艦回収をしていた魔技研の回収艦によって拾われる。


 基準排水量5540トン。全長144メートル、全幅17.1メートルという、空母とするには小型過ぎる船体。機関出力5200馬力、最大速力15ノットと、まさに船団護衛のための速度性能をもっていた。


 これを魔技研は改装した。格納庫のない空母という点で、オーダシティ――『龍飛』は、大型客船改装の哨戒空母と同様、基地航空隊を転移で飛行甲板に呼び寄せ、発艦させる海上発着艦として使われるのである。


 といっても、やはり実験艦としてまず運用ということになった。大型客船改装のものと違い、長さも幅もない。

 普通であれば大型の航空機を転移板を使って移動させると、翼端などが艦上構造物に衝突してしまうところだが、『オーダシティ』はマストさえ折り畳めれば、艦橋が飛行甲板下のために引っかかるものがないという特徴があった。


 故に、小型艦である『龍飛』も、零式哨戒機のような大型航空機も転移板を経由させての発進させること自体には支障はなかった。……もちろん、着艦は無理ではあるが。


 ともあれ、この実験的小型の空母――航空支援艦なのか哨戒空母なのかは、そのうち確定するとして、現在、伊豆諸島沖を航行し、魔技研の新鋭航空機などの運用テストを行っていた。


 もっとも、『龍飛』側は、何もしない。ただ定められた海域を遊弋し、転移板で突然現れる航空機の発艦の様子を眺めるだけである。


「試作局戦が発艦します!」


 龍飛の艦橋、転移室経由でやってきた連絡士官が報告し、日置艦長は頷いた。合図すると、『発艦』を告げるブザーが艦内に響いた。

 飛行甲板に駐機されている機が飛び立つわけではないので、手すきの者たちで見送りというのは基本的にない。


 だが何もわからないまま突然、発艦されるのも乗組員たちの作業や確認作業の会話を妨害してしまうこともあるので、事前に航空機が『通過』することを知らせるのである。

 そして後ろのほうからレシプロ航空機とは異なる轟音と共に、機が乗組員たちの頭の上を通過し、そして飛行甲板から飛び出した。


「朝からご苦労なことだ」


 日置は思わず呟いた。そして連絡士官に振り返った。


「機は問題なく、発艦」

「了解しました」


 確認を終えて、連絡士官は転移室へ。そこから九頭島飛行場の司令部に報告に帰っていった。

 日置は、今日の予定表を見やり、一息いれても問題ないかと考えたところで、通信兵が通信室から顔を出した。


「艦長、監視艇『第二十三日東丸』より緊急電! 我、空母を含む敵艦隊見ゆ!」


 普通に漁船のような名前だ――日置は思ったが特設監視艇が、どこの海域を見張っているかを思い出し、青ざめた。


「おいおい、本土近海に、敵空母だと!?」



  ・  ・  ・



 4月18日、日が変わり、まだ夜の闇の中にあった中、空母『エンタープライズ』の対水上レーダーが、光点を確認した。

 報告に飛び起きてきたウィリアム・ハルゼー中将は、SBDドーントレスを飛ばして、正体を確かめさせた。


「索敵機より入電。敵の哨戒艇です!」

「さすがに、ジャップも本土の警戒は厳重ってことか」


 ハルゼーは唸る。半ば予想はしていた。いくらスニークジャップでも、見張りくらいはする。皮膚が痒くてたまらない――ハルゼーは痒みに触れて紛らわせる。

 ここから敵もどう反応するか。場合によって中止や、予定時間の変更もあり得る。B-25爆撃機を運ぶ僚艦『ホーネット』の護衛に、エンタープライズはついている。


「航空隊にもスタンバイさせろ。ホーネットは守り抜く」


 そして朝、第16任務部隊は、水平線に日本の特設監視艇を視認した。


「『ナッシュビル』を動かせ。沈めるんだ!」


 ハルゼーは命じた。護衛につくブルックリン級軽巡洋艦『ナッシュビル』は、15.2センチ三連装砲を5基15門を搭載する重砲撃型だ。ひとたび砲撃をはじめれば、小型船などあっという間だろう。


「待機中のワイルドキャットを何機か出して、敵哨戒艇を機銃で蜂の巣にしてやれ」


 他にもいたり、あるいは敵機が現れた時に即応できるように、戦闘機も出しておく。


「こちとら、駆逐艦がいなくて、手が足りないからな」


 ハルゼーは呟く。

 第16任務部隊は、今のところ空母『エンタープライズ』と『ホーネット』のほか、重巡洋艦『ソルトレイクシティ』『ノーザンプトン』『ヴィンセンス』、軽巡洋艦『ナッシュビル』のみである。


 昨日の4月17日、給油艦から補給を受けた後、駆逐艦『バルチ』『ファニング』『ベンハム』『エレット』『グウィン』『メレディス』『グレイソン』『モンセン』と艦隊給油艦と共には東へ離脱したのだ。


「こりゃ、いっそ周りも一掃してしまうか。……ブローニング!」

「イエス・サー」


 マイルズ・ブローニング大佐は背筋を伸ばした。


「SBDも出せ。予定では爆撃は夜間だ……」


 いまは朝になったばかりである。たっぷり半日も時間がある。


「その間に、敵哨戒艇に貼りつかれても面倒だ。日本本土まで約750マイル……。面倒を呼び込む前に、こちらから片っ端から沈めてしまえ」

「アイアイ・サー!」


 ハルゼーの命令はただちに実行に移された。

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