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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第59話、捜索するも……


 コロンボへ放った攻撃隊、その総指揮官からの通信は、第一航空艦隊に届いた。第二次攻撃隊でトドメということである。

 南雲 忠一中将は振り返り、航空参謀の源田 実中佐を見た。


「航空参謀」

「偵察機は敵東洋艦隊を発見しておりません。待機している攻撃隊の雷装を転換し、第二次攻撃隊として送り出しても問題はないかと」

「うむ、ではそうしよう」


 南雲の命令はただちに実行され、艦上攻撃機の魚雷は、爆弾へと換えられる。その最中、新たな報告が飛び込む。


「利根偵察機より、機動部隊西方にて敵巡洋艦らしきもの見ゆ」


 司令部に緊張が走る。ここにきて東洋艦隊が現れたのか。たった1隻だが、それは前方偵察を目的とした先遣艦で、その後ろに艦隊が存在するのではないか。


「追加の索敵を出しましょう、長官」


 源田は直立不動の姿勢で言った。


「前言を撤回するようで申し訳ありません。敵艦隊の可能性が高まった今、爆装に換装中の攻撃機を雷装に戻しましょう」

「東洋艦隊の主力の戦艦や空母が現れれば、爆弾では不安だな」


 大型の艦艇を沈めるには、魚雷が不可欠だ。元が水雷屋であったこともあって、南雲としては魚雷装備の攻撃機が必要というのは理解が早かった。

 格納庫では、魚雷から爆弾に変えていたら、また魚雷に戻せと命じられて、整備兵たちが不満の表情を浮かべた。指示が二転三転するのは、どのような職にあっても嫌なものである。


 一方、今度は軽巡洋艦『阿武隈』の水上偵察機が一報をもたらす。


『敵は駆逐艦の模様。その他に艦影は確認できず』


 駆逐艦……? 空母『赤城』の艦橋はざわつく。


「ほかに敵がいない……?」

「ただの哨戒艦だったか」

「長官――」


 先任参謀の大石 保中佐が発言する。


「敵が単艦の駆逐艦であれば、これに構うよりもコロンボ港への第二次攻撃を優先させるべきではないでしょうか? 港に残っている敵船舶にトドメを刺すべきと考えます」


 その言葉に、ピクリと源田の頬がへこんだ。そしてそれを南雲は見逃さなかった。


「航空参謀、どうかね?」

「たかだか1隻ですが、海上戦力には違いありません。輸送船よりも武装している戦闘艦を叩くのを優先すべきと考えます」

「……うむ。そうだな」


 武人であるならば、丸腰の商船、貨物船よりも武装している駆逐艦と戦え、である。


「二航戦より意見具申!」


 観測員が声を張り上げ報告した。


「『攻撃隊発進の要ありと認む』」


 第二航空戦隊の山口 多聞少将が催促してきた。とっとと攻撃隊を出せ、と。南雲の視線が源田へ動き、その源田はすぐに姿勢を正した。


「相手が駆逐艦であれば、急降下爆撃機で充分です。出しましょう」


 雷装に換装しているのは、五航戦の九七式艦上攻撃機部隊であるが、一航戦『赤城』、二航戦の『蒼龍』『飛龍』で待機しているのは、元より爆装をしている九九式艦上爆撃機である。

 南雲は頷いた。


「よろしい。急降下爆撃機隊、発進せよ」



  ・  ・  ・



 その後、発見されたイギリス艦が、駆逐艦なのか巡洋艦なのかで擦った揉んだありつつ、その正体がケント級重巡洋艦と判明。

 重巡『ドーセットシャー』は、江草 隆繁少佐指揮する九九式艦爆隊の猛攻によって、あっさりと撃沈された。


 日本の索敵機は、さらに敵艦隊の姿を求めるも発見できなかった。

 この頃、ジェームズ・サマヴィル中将率いる英東洋艦隊は、南雲機動部隊の南方に位置していた。


「戦うふりをして、ふらふらしているのは割と難しいものだ」


 サマヴィル中将は皮肉げに言う。


「適度な距離感というものだ。遠すぎず、近すぎず、機会を窺う。アウトボクサーの戦い方だ」

「ボクシングはお好きなのですか?」


 参謀長が場を和ませるような調子で尋ねた。正直、日本の機動部隊は、情報より強力な可能性があって、昼間に戦いとなってしまえば不幸な結果しか想像できなかった。それ故、艦隊の空気は重かった。


「どちらでもないな。紳士は常にストレートだよ」


 サマヴィルもまた冗談のような口調だった。


「夜間航空雷撃、これ一本にすべてを賭ける。昼間に攻撃させなければ、夜は我々のターンだ。航空隊の射程に踏み込み、強烈なストレートで沈める。本物の敢闘精神とはどういうものか、日本人に指導してさしあげる」


 海軍本部からは、戦いは避けて艦隊保全に務めろ、と言われてはいるが、少しは戦ってみせねば戦いを知らない素人がうるさい。英国海軍が勇敢なる海の戦士であると信じている者たちにとっては。


「……まあ、問題は見つけられるかどうかだがね」


 この広いインド洋で、ちっぽけな艦隊を見つけるというのは難しい。

 その言葉を証明するかのように、東洋艦隊も南雲機動部隊も、相手の姿を捕捉することはできなかった。

 互いに航空機の姿は見つけていた。東洋艦隊も、敵機の発見を聞き、夜間攻撃を仕掛けるべく機動する。


 一方で、南雲機動部隊でも、接近する偵察のソードフィッシュ雷撃機を発見。『飛龍』から零戦が出て、うち1機を撃墜。しかしもう1機は取り逃がす。

 近くに東洋艦隊がいる――第一航空艦隊でも、盛んに偵察機を飛ばして英艦隊の発見に務めたが……やはり見つからなかった。


 サマヴィルの東洋艦隊も、再三日本艦隊を捜索するが、もはや偵察機も日本空母の姿を見つけられず、さらに本国からの電報が届く。

 東洋艦隊は、もはや日本軍に圧力を与えられない。艦隊はセイロン島への帰港を禁止。R級戦艦は東アフリカに派遣せよ――という命令であった。


「ここまでだな。日本艦隊の追撃は中止。アッドゥ環礁に向かえ」


 サマヴィルは命じた。

 東洋艦隊は戦域を離れ、それを捜索していた南雲機動部隊も、敵機動部隊はおらずと判断した。

 そして日本軍機動部隊は、セイロン島北部トリンコマリーへ空襲を行った。

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