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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第43話、第44任務部隊、襲撃される


 特破第一戦闘群別動隊の空母『瑞鷹』『白鷹』から、九八式艦上偵察戦闘攻撃機が発艦した。

 各9機ずつの計18機が、発見された米豪混成艦隊へと飛ぶ。


 その敵艦隊を発見した偵察の九八式艦偵が、位置情報を知らせてくる。雲は多いが天候に問題なし。艦隊上空に、敵機の姿なしともマ式通信にして伝えた。

 瑞鷹攻撃隊、第一中隊の藤島 正大尉は部隊を誘導し、やがて、眼下に複数の航跡を認めた。


「いやがったな。目標の敵艦隊だ」


 敵が友軍に戦闘機の支援を呼ぶ前に決着をつけてやるとしよう。


「阿弥陀一番より、白蛇一番」

『こちら白蛇一番』


 白鷹攻撃隊の指揮官、鳶田 辰郎中尉が返事をした。


『阿弥陀一番、どうぞ』

「こちらで重巡洋艦をやる。駆逐艦とタンカーの処理は任せる!」

『了解、阿弥陀一番。……よかったんですか、大尉。駆逐艦とタンカーはポイントが高いですよ? あたしらに譲ってしまって』

「構わん構わん。最上級者は、貧乏くじを引くのも仕事よ」


 でかいのをやっつけるのが趣味なだけだ、とは思っても口には出さない藤島である。


「種田! 滑空魚雷、用意!」

「宜候!」


 瑞鷹攻撃隊、そして白鷹攻撃隊がそれぞれ攻撃位置につく。

 その動きを、米豪混成艦隊――第44任務部隊も察知していた。



  ・  ・  ・



「敵で間違いないんだな?」


 ジョン・グレゴリー・クレース少将は確認した。恐ろしく太い眉毛の持ち主である。オーストラリア出身の王立海軍士官の声に、旗艦である重巡洋艦『オーストラリア』の艦長であり参謀長であるハロルド・ファーンコム大佐は頷いた。


「味方ではありません」


 軽巡洋艦『パース』、重巡洋艦『キャンベラ』、そして『オーストラリア』艦長と、オーストラリア海軍の巡洋艦を乗り継いできたがっちりした体躯の艦長は言った。


「第一、方向が違います」

「なんてことだ……」


 クレースは、生唾を飲み込んだ。彼の脳裏に昨年12月の出来事が過る。

 その時、彼は重巡洋艦『キャンベラ』に将旗を掲げており、軽巡洋艦『アキリーズ』『パース』を従え、アメリカの重巡『ペンサコラ』が護衛するペンサコラ船団に合流するべく行動していた。


 しかし、彼らが到着する寸前、日本海軍の艦載機部隊が襲来し、重巡『ペンサコラ』と輸送船7隻がやられ、クレース少将らオーストラリア海軍巡洋艦3隻も、続いて飛来した第二次攻撃隊によって沈められたのだった。


 日本軍は誘導爆弾ないし魚雷を使う。意思を持った生き物のように向かってくる飛翔体を思い起こせば、自然と震えが込み上げてくるのだ。


「ブラウン中将に至急の電文を打て! 日本軍の空母艦載機の襲撃を受く。大至急、戦闘機を派遣されたし! 平文でいい! 急げ!」


 正直に言って、あの追いかけてくる爆弾を使われたなら艦艇側からでは対処のしようがない。10.2センチ単装高角砲では飛翔体を撃墜はほぼ不可能。40ミリポンポン砲などあてにならず、20ミリ機関砲がせいぜいだが射程は短いし数も少ない。


 巡洋艦や駆逐艦が全速力で逃げたとて、おそらく逃げ切るのは難しい。だがそれも叶わないだろう。

 第44任務部隊は、『ネオショー』『カスカスキア』という2隻のシマロン級給油艦を抱えている。

 基準排水量1万1315トン、満載排水量2万4830トン。全長169メートルの船体は、最大速力18ノットが精々である。


 第44任務部隊は北上する。少しでも日本機から逃れようとするが、それは無理な相談であった。


 九八式艦上偵察攻撃機は二手に分かれ、攻撃を開始した。投下された滑空誘導魚雷は、ロケットモーターによって高速で飛行。海面近くへ高度を下げつつ、母機の測定士が誘導し、洋上の艦艇に迫った。


 高角砲、対空砲が盛んに火を噴く。しかし打ち上げられるそれらを狙って落とすには目標が小さ過ぎた。

 それらはロケット部を切り離すと、海面に突入、深く突入することなく、そのまま今度は海面下を高速で突っ込んでくる。こうなっては対空砲ではどうにもならない。


 狙われた駆逐艦が、急角度で変針する。しかし誘導された魚雷はそれでも追いすがり、その艦尾に命中、後部を抉り取った。


「『ハムマン』、被雷! あっ、『ヒューズ』もやられました!」


 アメリカ海軍のシムス級駆逐艦が水柱を上げて、その後行き足が止まる。

 全長106メートル、最大幅10.9メートルの艦体が全体の三分の一から半分を引き裂かれ、海へと引きずり込まれる。本来なら38ノットの高速を発揮できるそれらも、給油艦と併走していては、その足も活かせない。

 38口径5インチ砲5門、12.7ミリ機銃4門では、誘導弾に対して満足な迎撃など不可能であった。


「給油艦に命中!」


 見張り員の報告に、クレース少将は歯噛みする。『ネオショー』、そして『カスカスキア』が相次いで被弾し、そして重巡洋艦にも――


「『シカゴ』に魚雷命中! 1、いえ2本!」

「……奴らだ」

「提督?」


 ファーンコム艦長が見れば、クレースは怒りと絶望のない交ぜになった表情を浮かべていた。


「『キャンベラ』もああしてやられたんだ。まず1本が命中し――」

「本艦右舷に敵弾着水!」

「面舵いっぱい!」


 艦長は叫んだ。被弾面積を減らすべく、艦を魚雷に対して縦にする。しかしクレースは構わず続けた。


「――その命中した場所に、もう1本が入り込んで、艦体を引き裂く……!」


 ひどきわ大きな水柱と爆発が起きた。重巡『シカゴ』が、2本目の魚雷を艦内に受けて真っ二つに避けたのだ。


「衝突警報!」


 ファーンコムは怒鳴った。ケント級重巡洋艦『オーストラリア』の9800トンの艦体が衝撃に震えた。

 やられた――だが、轟沈はない。そう安堵するのもつかの間、もう一本の魚雷が『オーストラリア』の破孔に飛び込み、その破壊力を解放した。

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