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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第38話、発動、K作戦


 連合軍がジャワ海海戦と呼び、日本側がスラバヤ沖海戦と呼称した戦いは、日本海軍の勝利で終わった。


 ABDA艦隊は実質、壊滅した。スラバヤにて戦える艦艇は、駆逐艦『ポープ』『ヴィテ・ディット』の2隻のみ。他にアメリカ駆逐艦4隻が残っていたが、魚雷を撃ちつくした上に、補給もなく戦闘には耐えられなかった。


 巡洋艦群は全滅し、事ここに至っては、どう脱出するかが重要であり、日本軍輸送船団攻撃どころではなかった。


 連合軍海軍司令部のヘルフリッヒ中将は、米駆逐艦を含めた残存艦艇をバリ海峡経由でオーストラリアへ脱出させることとし、2月28日にスラバヤを出航させた。

 これら駆逐艦群は、バリ海峡で3月1日夜間に、日本海軍に発見されてしまう。


 第21駆逐隊の『子日』『若葉』『初霜』、測量艦『筑紫』である。距離は4500メートル、砲撃を開始する第21駆逐隊だったが、『ポープ』を除いて魚雷もなく、退避を優先させた駆逐艦群は最大速度で離脱し、日本海軍駆逐隊を振り切った。


 かくて海峡を突破したのだが――オーストラリア、ポートダーウィンにたどり着く前に、日本軍特破第二戦闘群の『雷竜』航空隊に襲撃され、誘導爆弾の餌食となった。


 ABDA艦隊の脅威が取り除かれ、日本軍はジャワ島への上陸を開始した。メラク方面甲、乙、そしてパンダム湾に船団は侵入、陸軍を揚陸した。

 パンダム湾では、オランダ軍の監視艇や砲艦といった小型艦があって、駆逐艦『吹雪』『初雪』『春風』といった艦がこれらを砲撃し、擱座させた。


 上陸した第16軍は、オランダ軍と交戦。一方で海軍は、ジャワ島から逃げる連合軍残存艦や船舶の掃討に活動した。


 3月1日、オランダ駆逐艦『エヴェルトセン』を、第12駆逐隊の『白雪』『叢雲』が接触、砲戦の末、一旦は逃すも『エヴェルトセン』は浅瀬にて擱座、その後、爆発、沈没。


 同日、南雲機動部隊は、フリーマントル方面へ移動する給油艦『ペコス』を偵察機が発見。加賀、蒼龍の艦爆隊が給油艦を攻撃し、これを撃沈した。


 3月2日、バリ島南方にて、第二艦隊の重巡洋艦『愛宕』『高雄』は、米軽巡洋艦を発見し、これを撃沈。マーブルヘッドと思われたが、この巡洋艦は、実は駆逐艦『ピルスバリー』で、同じ四本煙突の艦を誤認したのであった。


 翌日3月3日、『愛宕』『高雄』は、重巡『摩耶』、駆逐艦『嵐』『野分』と合流、チラチャップ沖でタンカー含む船団と遭遇し、これを全滅させている。


 そして3月4日には、次の作戦――アンダマン諸島の攻略に備え、ジャワ島攻略に参加した海軍艦艇は、順次、シンガポールやカムラン湾へと移動を開始した。



  ・  ・  ・



 3月4日、どころ変わって中部太平洋。日本時間0時25分、ウオッゼ島より2機の二式大艇が飛び立った。

 目指すはハワイ、オアフ島真珠湾基地。


 2機は半日かけて、北西ハワイ諸島――カウアイ島からミッドウェー諸島までのおよそ2200キロメートルの間にある珊瑚礁や岩礁など33の島を形成する――の中で、最大の環礁であるフレンチ・フリゲート礁に辿り着く。

 そこには潜水艦『伊15』と『伊19』が待機しており、燃料を補給する。およそ2時間の作業ののち、16時に離水。二式大艇はオアフ島へと向かった。


 同じ頃、ハワイ諸島南方より日本海軍特破隊、第一戦闘群挺身隊が北上していた。

 戦艦『土佐』を旗艦とする挺身隊は哨戒空母『大鶴』を伴い、攻撃位置につきつつあった。

 その攻撃隊は、『大鶴』――ではなく、内地、九頭島飛行場にあった。


「K作戦」


 特破隊、特殊爆撃隊。通称、特爆隊の飛行隊長、菊丸 昌時大尉は、部下たちを見回した。


「真珠湾基地の復旧活動を妨害し、敵の士気をさらに低下させるため、爆撃を行う」


 搭乗員たちは、張り出されたで真珠湾泊地の地図を見やる。


「本来は、二式大艇を使った空襲作戦だったが、予定の機体数が揃わず、それでは攻撃も限定的になるという危惧から、我々特破隊に協力要請がきた」


 元は軍令部の発案だったが、連合艦隊が担当部隊に作戦を検討させた結果、軍令部直轄部隊である特破隊に増援を求めるという、ずいぶんと遠回りした参集であった。


「ということで、我らがボスは、K作戦に特爆隊の投入を決めた」


 一瞬、搭乗員たちの視線が、仲間の一人――神明 光太郎少尉に向いた。我らがボスとは、光太郎の養父である神明 龍造大佐だと理解しているのである。

 もっとも、光太郎自身が作戦の立案にかかわっていないので、見られても何もないのだが。


「そして我々が行くということは、徹底的に真珠湾を叩くということだ」


 菊丸は黒板を叩いた。


「こんなことを言うのもなんだが、当初の二式大艇の爆撃程度で、作戦目的が果たされるとは思えない」


 250キロ爆弾を数発、2機の水上爆撃機が落としたところで、それで復旧活動の妨害になるのか? 


 欧州の前線では、旧式の複葉機が夜間敵地上空に侵入して、嫌がらせに爆弾を落としていく、いわゆるハラスメント攻撃をやっている。しかしここハワイで、その程度の効果を、たった一日やったところで何になるのか。


 二式大艇という長距離飛行可能な航空機があるから、それを使って何かやろうと軍令部の作戦課の参謀たちが思いつきで考えた程度ではないのか――と、菊丸は否定的に考えるのである。


「まあ、そういうわけだ」


 そうでなければ特殊爆撃隊が出撃する意味がない。


「今回、電波吸収塗料が機体に塗られている。魔力式には関係ないが、電波式レーダーには映らないようになっているから、敵機が上がってきても、目視でしかおれたちを見つけることはできん」


 そこで菊丸は専用のゴーグルを指した。


「安心の魔技研製暗視ゴーグルを使用する。夜間でもこれで丸見えだ。……光度調整には気をつけろ。いきなりまぶしい光を直視して失明するのはごめんだからな」


 搭乗員にとっては、それは最悪だ。空を飛ぶ者にとって視力は、何より大事なものである。


「爆弾も砲弾もたっぷり用意してある。軍港に在泊する艦艇、工廠施設、燃料タンクなど、目につくものは大体破壊するつもりでやる。……何か質問は?」


 ない――搭乗員らは首を横に振った。


「よろしい。我々の出撃は一九〇〇だ。搭乗員は30分前には集合。それまでは自由時間とする。……あー、わかっていると思うが外部との連絡はなしだ。以上、解散!」

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