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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第3話、偵察・戦闘・攻撃機


 九八式艦上偵察戦闘攻撃機――


 名前が長いので略称は艦偵ではあるが、特破隊においては主力航空機であった。

 魔力冷却式エンジン『冬風』9気筒1700馬力1基を装備するその機は、一見すると液冷式機のように空気抵抗を抑えられる細長い機首を持っている。


 冷却を構造を支える素材に用いた特殊金属にした結果、空冷や液冷のエンジンと異なり、専用の冷却装置を必要とせず、大幅な軽量化を実現。オーバーヒートと無縁のエンジンはその小型シンプル構造ながら出力を向上させることが可能であり、完成時の1937年時点で離昇1500馬力を発揮でき、現在では1700馬力にその性能を引き上げていた。

 防弾装備を備えた上で、爆装が可能な九八式艦偵は、1941年時点で最高時速580キロを長時間出せる高速戦闘爆撃機であった。


「なあ、知っているか、種田?」


 九八式艦偵攻撃隊指揮官の藤島 正大尉は操縦桿を握りながら言った。


「魔技研じゃあ、自動で判断できる機械の操縦員を作っているらしいぞ」

「自動ですか……」


 後座に座る測定士の種田少尉は、気のない返事をした。マ式レーダーによる空中索敵、航法など後座の仕事は割と忙しい。これが戦場ともなれ、対空監視、誘導爆弾などの誘導任務なども加わる。


「何でそんなものを作っているんです? 楽がしたいんですか?」

「まあ、楽になるって言えばそうなんだろうが、一番の理由は人員不足ってやつだろう」


 あー、と種田は納得したような声を発した。


「特破って、慢性的に人いないですもんね」

「艦艇も自動化と、ゴーレムっつー人形で補っているからなぁ。航空機のほうも人員を増やすためなんだろうよ」

「増えるんですか?」

「そりゃあお前、パイロットと測定士、それぞれの仕事をこなせる自動操縦員が配備されれば、単純に使える機が倍になるだろう?」


 二人の九八式艦上偵察戦闘攻撃機なら、一個中隊九機、十八名。これが一機一人になれば、十八機が使えることになる。


「それぞれの仕事ができるってことは、自動操縦員だけの機もできるわけで、一人前に搭乗員を揃えるより早く、補充ができるようになる。何なら機体ができたら放り込んで、即前線ってことも可能なわけだ。戦力は二倍どころかもっと増えるかもな」


 日本海軍はアメリカとの戦争を短期決戦で終わらせると考えている。

 一方で、長期の持久態勢を整えるという矛盾した行動を取っている。潜在的に長期戦になった場合に備えてはいるが、その準備は非常に手ぬるく、短期決戦思考が幅を利かせている。

 パイロットである藤島からすれば、開戦時点で、航空機搭乗員の数が不足していると感じている。


 真珠湾攻撃で空母六隻を集中運用するしないで揉めたのも、空母搭乗員の不足が根底にある。内地に小型空母が残っているのも待機といえば聞こえはいいが、練度、機材カツカツで積極運用できないだけである。


 始まった時点で予備戦力がないというのはどういうことだ、という話である。真珠湾を叩いた精鋭、第一航空艦隊の搭乗員は世界最高峰の熟練者が揃うが、彼らが消耗した時、それを補うレベルの搭乗員はいない。陸上基地航空隊ならともかく、空母搭乗員としては練度不足の新人しかいない。

 それを考えれば、自動操縦員を作り、それをパイロットの代わりにしようという魔技研――正確には神明 龍造大佐の言には一定の理解はできるのである。


 もっとも、現役搭乗員たちからすれば、それは案山子より役に立つのかと、大いに疑問ではあったが。

 そんなこともあって、連合艦隊ではまず使わないし、特破隊で運用して実績を積もうというのである。


「大尉。マ式レーダーに反応」


 種田がレーダースコープを睨む。


「通報のあった米艦隊と思われます」

「了解!」


 仕事だ。藤島はカチッと歯を噛みしめた。顎を動かす、戦闘前の彼の儀式である。

 種田の誘導に従い飛ぶことしばし、洋上に航跡が見えてきた。小石のようにちっぽけなそれは、戦艦の単縦陣。さらに小さく周りに見えるのは駆逐艦だろう。


 米戦艦、それも第一次世界大戦から戦間期の頃のものは、標準化が推し進められており、艦級の新旧問わず、同じ最高速度、同じ旋回性能になるように作られている。クラスは違えど、さぞ艦隊行動はとりやすいだろう。


『阿弥陀一番へ。こちら阿弥陀四番』


 通信機から第二小隊を預かる島根中尉の声がした。


『周りの駆逐艦は、我ら第二小隊にお任せを』

『こちら阿弥陀一番、了解だ。第二小隊、任せるぞ!』


 特破航空隊にいて、まさかの大物である敵戦艦を攻撃する状況。隊としての優先順位は低いが、そう指導されていても、やはり戦艦は海軍の顔。機会があれば沈めたいと思うのがパイロットというものである。

 その中で、島根中尉は逸る他のパイロットたちの気持ちを酌んで、駆逐艦狩りを率先した。


 正直に言って、藤島もできれば戦艦を攻撃したかったのだが、第一戦闘群のボスである神明 龍造大佐が『第一目標、駆逐艦』をかがげる御仁なので、誰にこの役をふるかで悩んでいたのだった。

 気持ちを酌まれたのは、オレの方だったかもしれん――よくできた部下に感心しつつ、しかし駆逐艦は四隻で、こちらの小隊は各三機。一機分足りないがどうしたものか。


 敵艦隊上空に、航空機はなし。狙いをつける分、そして測定士が攻撃を誘導するには、うってつけの状況だ。

 よほどのへまをしなければ、駆逐艦四隻撃沈確実。戦艦一隻は仕留められるかもしれない。

 第二小隊が速度を上げて、先行した。そして腹に抱えた600キロ対艦滑空誘導魚雷を投下した。


 敵艦隊との距離、おおよそ10キロメートル。魔技研の新兵器、誘導弾である。元々通商破壊部隊であるから、大型貨物船や貨客船、重巡洋艦程度までが対象なので、戦艦相手には若干威力が不足しているかもしれない。


 が、駆逐艦にはこれ一発で轟沈間違いなしだ。

 測定士が魔技研製マ式誘導装置を使い、滑空魚雷を目標へと飛ばす。対象を誘導装置の照準器に捉え続けなければならないため、発射後も機はあまり派手に動かせない。パイロットと測定士で分かれているのも、この誘導弾を確実に命中させるために必要なことだった。


 敵艦隊もさすがに、こちらの接近に気づいているか。だが高角砲や対空機銃が届かない位置からすでに攻撃は行われている。そして攻撃に気づいて、回避運動をしたところで、誘導からは逃れられない!


「当たれよ!」


 思わず声に出す藤島。点のように小さくなった誘導弾はロケットを切らし、海面に着水。回避をし始めた敵駆逐艦に魚雷が伸びていき、そして水柱を突き上げた。


「ようし、これで戦艦を狙えるぞ! 阿弥陀一番から第一、第三小隊! 最後尾の戦艦を攻撃だっ!」

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