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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第2話、特破隊、西海岸沿岸進出


 ハワイからアメリカ本土を目指していたのは、12月8日の日本軍の真珠湾攻撃を受けたが、本土への回航が可能な戦艦3隻と、その護衛の駆逐艦4隻であった。

 その編成は、戦艦『テネシー』『メリーランド』『ペンシルベニア』、駆逐艦『カミングス』『コニンガム』ほか2隻である。


 真珠湾攻撃では、『テネシー』が800キロ爆弾二発被弾。三番砲塔を損傷、二番砲塔の砲身に命中。その破片が隣に配置されていた『ウェスト・バージニア』のベニオン艦長を死亡させたという不運もあったが、それを除けばそこまで酷いダメージを受けたようには見えない。が、損傷と火災で船体の装甲が歪んだことで継ぎ目やリベットの緩み等、本格的な修理を必要とした。


『メリーランド』は二発の装甲貫通爆弾。こちらは割と深くで爆発したが損傷自体は軽微であった。


 太平洋艦隊司令長官、ハズバンド・キンメル大将の旗艦であった『ペンシルベニア』は、攻撃当時、真珠湾のドライドックで改装中であった。爆弾が一発命中した程度であったが、むしろドライドックにあった駆逐艦の爆発や注水騒動での被害のほうが大きかったかもしれない。

 といっても、損傷自体はこちらも軽微であり、アメリカ本土での修理に回されることになった。


 これらは12月20日に、真珠湾を出航。『テネシー』『メリーランド』はピュージェット湾を目指し、『ペンシルベニア』は途中で別れてサンフランシスコのマレアイランド海軍造船所に向かうことになっていた。


 だが、この本土への回航組を、遠くアメリカ西海岸にまで遠征してきた日本海軍特殊通商破壊部隊――特破第一戦闘群が捕捉したのであった。



  ・  ・  ・



 異世界人の侵略に備えて、密かに軍備を整える。日本海軍軍令部は魔法研究所、通称『魔技研』と組んで、沈没艦を再生、異世界技術と魔術を融合させることで新たな戦力を整えていた。

 しかし、その異世界人は、この世界には現れなかった。結果、密かに準備されていた軍備は、日本がアメリカを中心とする連合国との戦いに対して向けられることになった。


 特殊通商破壊部隊――特破隊は、海軍が戦前より考察していた対米戦に魔技研が独自の研究によって考案、整備された部隊である。

 艦隊決戦主義の偏重から脱却し、海軍が本来なすべき通商保護、通商破壊を重視する軍隊であった。


 それを主導したのが、神明 龍造大佐。前世で異世界人と戦い、今世で第二次世界大戦を戦うことになった男である。

 特破隊は、軍令部直轄部隊であり、連合艦隊とは別部署となる。それは特破が使う兵器が、あまりに従来のものとかけ離れていて、それが本当に実戦で使えるのか疑問に思われていることも影響する。基本軍人とは保守的であり、実績のあるものを重視する。机上の空論、妄想に付き合っていられるほど暇でもないのだ。


 そんな妄想じみた兵器、戦術もやってみないことにはわからない。ならば実験部隊としてやりましょう、というのが特破隊でもある。予算を食い合わない限り、そのことに文句を言う者はいない。どうぞ勝手にやってください、上手くできたら採用しますから――人は自分に迷惑が被らなければ口出ししないものである。


 そうやって連合艦隊や大半の海軍軍人が怪しげな魔技研、特破隊に見向きもしない間に、その戦力はどんどん膨れ上がっていった。

 ほんの一部であるが、1942年12月の開戦時の第一戦闘群の編成は以下の通り。



●特第一戦闘群

 通商打撃戦隊:戦艦「土佐」、重巡「妙義」、駆逐艦「青雲」「天雲」

 空母戦隊  :空母「瑞鷹」「白鷹」

  防空戦隊 :軽巡「狩野」「秋野」、防空駆逐艦「雪月」

        駆逐艦「深雪」「晴雪」「斑雪」

 前哨警戒隊 :潜水駆逐艦「氷雨」「白雨」「早雨」


 第三一潜水戦隊:潜水母艦「薩摩」、護衛駆逐艦「柿」「樺」

  潜水艦  :「伊700」「伊701」「伊702」「伊703」「伊704」

       :「伊705」「伊706」「伊707」「伊708」「伊709」



 戦艦1、重巡洋艦1、軽巡洋艦2、駆逐艦11、潜水母艦1、潜水艦10が、41年12月時点のハワイ、米西海岸沿岸通商破壊に投入された戦力である。


 なお、現在、アメリカ本土を目指す米艦隊を捕捉した第一戦闘群は、戦艦『土佐』の通商打撃戦隊の4隻の他は、空母『瑞鷹』、軽巡『狩野』、駆逐艦『雪月』『深雪』の計8隻であり、前哨警戒隊の潜水駆逐艦は艦隊の前方に進出。潜水戦隊は、二隻ずつで広く展開し獲物を捜索していた。


 改装空母『瑞鷹』。1930年に完成したダラー・スチームシップ・ラインの豪華客船『SSプレジデント・フーバー』――1937年12月に台湾沖で座礁、全損判定されてサルベージ待ちだったものを回収、空母へと改装したものである。


 排水量約2万2000トン、全長を187メートルから199メートルに延長、全幅24.7メートル。最高速度22ノット、20ノットで1万4400海里の航続距離を持つ。最高速度は低速ではあるものの、巡航速度が20ノットから21ノットと、1940年当時、巡航速度で18ノット基準の日本海軍のそれらと比べると高速であるという、やや赴きの異なるフネである。


 艦載機搭載数は最大30機前後。12.7センチ連装高角砲二基、ほか対空砲を装備する。規模としては新田丸級貨客船改装の『春日丸』よりやや大型であるが、性能としては近いものがある軽空母である。

 その飛行甲板では、艦載機である九八式艦偵9機が出撃態勢に入っていた。


 飛行隊長である藤島 正大尉は、複座である愛機の操縦席に乗り込んだ。

 魔技研と協力体制にある武本重工が開発した複座のレシプロ航空機。九八式艦上偵察戦闘攻撃機――のちの世で言うマルチロールファイターとして作られた機体である。


「いきなり戦艦を沈められるとは、ツイているな!」


 藤島が叫ぶように言えば、後座にいる測定士の種田少尉が淡々と返した。


「第一目標は、駆逐艦ではなかったのですか? あなた、そういいましたよね?」

「言ったとも」


 命令を受けて、部下たちにそう指示を伝えた。


「我々特破隊の攻撃目標は、一に駆逐艦、二に輸送船、三、四が空母、巡洋艦、戦艦だ。だが四機で駆逐艦四隻を仕留めれば、残っているのは戦艦だ。一隻くらい喰っても問題あるまい?」

「問題は、五機で戦艦をやっつけられるか、ですよね?」


 種田は怪訝な調子で言った。アメリカの戦艦はとかく、防御が優れていると聞く。いくら真珠湾攻撃や続くマレー沖海戦で、航空機が戦艦を仕留めたとはいえ、特破航空隊は少数精鋭故、米戦艦を撃沈できるかは怪しかった。


「やるだけやる! やれずとも、戦艦、潜水艦がトドメを刺してくれる!」


 藤島は豪胆に笑った。


「先手を打てるんだ。先鋒らしく、やってやるぜ!」

『阿弥陀一番へ。発艦準備はどうか?』


 空母『瑞鷹』の管制所から確認が飛ぶ。藤島は無線機に答えた。


「阿弥陀一番、準備よし! 阿弥陀隊、いつでも行ける!」

『了解、阿弥陀一番。レールカタパルトより順次、発艦せよ!』

「阿弥陀一番、発艦!」


 九八式艦偵が飛行甲板上を滑り出した。米本土を目指すアメリカ小艦隊に向けて、9機の攻撃隊が飛び立ったのだった。

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