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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第28話、特破第二戦闘群、豪州西海岸で待ち伏せる


 オーストラリア東海岸での悲劇。戦艦『ウォースパイト』の沈没をよそに、オーストラリア西海岸、フリーマントルでも、ささやかながら、しかし恐るべき悲劇が迫りつつあった。


 じわじわと、着実に。


 その前兆、いや始まりは、バタビアからフリーマントルを目指していたSM2船団、二隻の輸送船『ワン・プー』『ケーブル・エンタープライズ』が2月19日、フリーマントル手前で消息を絶った。どちらも全長100メートル以下の小型船であったが、翌20日に、後続していたSM3船団『アドラ』『アドラストス』が緊急電を発して以後、行方不明となった。

 フリーマントルから確認に向かった哨戒機も連絡が取れず、フリーマントルの連合軍将兵は大いに不安に苛まれた。


「まさか、日本軍がここまで……?」


 航空機であれば、爆撃前に敵機の報告くらいできるのでは――では潜水艦の待ち伏せか。

 そして警戒を強める中、2月23日、バタビアからフリーマントル行きSM4船団、『セイルスタッド』『ピーク』の輸送船2隻がやられた。



  ・  ・  ・



 特第二戦闘群は、フリーマントルよりやや距離を取りつつ、通商破壊を行っていた。

 旗艦である戦艦『肥後』。佐々山 久雄少将は口を開く。


「寄港する場所の近くにいれば、待ち伏せも楽ではある」


 船は、港に寄るものだ。その手前にいれば、いつかは船の方から近付いてきてくれるという寸法だ。


「だが敵も馬鹿じゃない。哨戒機を盛んに飛ばすし、護衛艦を派遣して捜索してくる。港に近ければ近いほど、発見される可能性は高くなる」

「まあ、そうですな」


 阿畑 洋吉参謀長は相槌を打った。


「だから、狩り場は移動させる、というわけですな」

「ほどよく、ローテーションを組むように」


 狙撃手が一発撃ったら、潜伏場所を変えるのと同じだ。こちらは空母や水上機母艦の偵察機を飛ばして遠方の索敵を行うので、多少、ポイントを変えても船団を探し出せるのである。


「そういえば、聞きましたか?」


 阿畑が話題を変えた。


「ラバウルに敵空母が奇襲を仕掛けようとした話」

「第四艦隊が全力で迎え撃とうとしたやつな」


 佐々山が返せば、参謀長は頷いた。


「そうですそうです。敵機動部隊を撃滅せんと、南洋艦隊総動員ですよ」


 今月二十日の、ニューギニア沖海戦。結果としては米空母のヒットエンドランを先制攻撃にて阻み、離脱させた戦いであったが、南洋艦隊こと第四艦隊は、この空母の追撃に動いた。


 第四艦隊司令長官の井上 成実中将は旗艦『鹿島』、第六戦隊の『青葉』『衣笠』『古鷹』『加古』、第十八戦隊の『天龍』『龍田』、敷設艦『沖島』を率いてトラックを出た。

 さらに軽巡洋艦『夕張』指揮する第六水雷戦隊、航空機輸送任務を実施していた空母『祥鳳』、駆逐艦『帆風』にも集結を命じた。


「それで、どうなったんだ? 米空母は捕捉できたのか?」


 佐々山は首をひねった。これといって続報を耳にしていないので、第四艦隊が米空母をやっけられたのか気になったのだ。


 ――だが空母は『祥鳳』1隻だけなんだろう。米機動部隊の空母は、たぶん1、2隻だっただろうが、大型空母相手では……。


 最悪返り討ちに遇うのではないか、と佐々山は危惧する。追尾しているのが神明大佐の特第一戦闘群の空母であったなら、たとえ30機程度の艦載機の改装空母であってもやりようはあるのだが。


「どうも空振りに終わったみたいです」


 阿畑は眉を下げて、口元を歪めた。


「第七潜水戦隊の潜水艦も捜索に加わったみたいですが、敵を発見できなかったと通信を拾いました」


 第七潜水戦隊といえば、第四艦隊所属の部隊だ。


「つまり、第四艦隊の全力捜索にもかかわらず、米機動部隊はまんまと逃げおおせたわけだな」

「米空母は33ノット出せる高速艦ですからな」


 阿畑は真面目ぶった。


「巡洋艦と駆逐艦もそれくらい出せますから、低速艦も含まれる第四艦隊では捕まえられなかったと」

「米軍は、一撃離脱に徹しているな」


 佐々山は渋い顔になる。


「真珠湾攻撃で戦艦を失っているんだ。残っている空母をフルに活用するしか反撃しようがないわけだ」

「あとは潜水艦ですな。ぼちぼち、輸送船に被害も出ているようで」

「神明曰く、米軍の潜水艦が使う魚雷は、主力型が不良多数。旧型が普通に刺さるんだそうだ」

「どういうことです?」

「南方作戦絡みで被害が出ているのは、旧式潜水艦の旧型魚雷ってことだ」


 佐々山は皮肉っぽく口元を緩めた。阿畑は首をかしげる。


「どうしてそれがわかるんですか?」

「どこぞで米軍魚雷を回収したらしい。その調査の結果、MK14魚雷がとんだポンコツ欠陥魚雷だったんだそうだ」


 本当は前世での米軍資料から知っていただけだが、神明本人はそれは佐々山には言わなかった。


「ともあれ、アジアに展開している米軍というのは、そうした旧型が多いから、油断するなということだな」

「はっ」


 阿畑は背筋を伸ばした。特第二戦闘群は、オーストラリア西海岸、フリーマントル近辺で通商破壊を展開している。

 南方作戦も順調であり、このままジャワを攻略できれば、スラバヤ辺りから逃げてくる連合軍艦艇や船舶もまた、フリーマントルに下がってくるかもしれない。


「しばらく退屈はしなさそうだな」


 佐々山は相好を崩すが、そういえばと一つ思い出す。


「神明の第一戦闘群が、そろそろ向こうでも一騒ぎを起こしているんじゃないか?」


 米豪分断作戦の一環、米軍が補強している南東太平洋海域における一撃を与える作戦が進行していた。

 西の第二戦闘群、東の第一戦闘群。北では連合艦隊がラバウルを押さえ、ニューギニアへの圧迫を強めている。


 海を封鎖すると共に、整備される飛行場、進出する航空機への攻撃もまた、通商破壊部隊の任務の一つであった。

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