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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第140話、多忙なる男


 ミッドウェー島を攻略した日本軍は、次の攻撃を南太平洋に定めた。

 アメリカとオーストラリアの連絡線の遮断。ABDA包囲網を形成していた一国、オーストラリアを孤立させ、この戦争から脱落させる。


 そのために、陸海軍中央協定で定められたF作戦を実施する。……というのだが、実行する連合艦隊は、これまでの連戦による消耗から整備と再編成を必要としており、F作戦は実行するが、そのスケジュールは遅らせることとなった。


 それは、F作戦の補助、支援役になるはずだった特破隊が、ニューカレドニア作戦――二号もしくはNK作戦を担当することになったことから見ても明らかである。


 本来、ニューカレドニア攻略に始まり、フィジー作戦――フ号もしくはFI作戦、サモア作戦――サ号もしくはSA作戦の順で行われる予定であったが、特破隊がニューカレドニア、連合艦隊がフィジー、そしてサモア攻略を担当することになった。


 かくて、特破隊第一戦闘群を率いる神明 龍造大佐は、F――海軍ではもっぱらFS作戦と呼んでいるそれ、その先鋒を務めるに辺り、作戦を検討していた。


 予定では、陸軍が編成した第17軍が、この方面の上陸、攻略戦力として参加する。神明たち第一戦闘群は、南海支隊――歩兵3個大隊を護衛、上陸支援をし、占領までの援護をするのである。


「これでも、まあマシか」


 開戦以来、特破隊はFS作戦の舞台となる島々の周りで通商破壊を行ってきた。オーストラリアや、ニュージーランド、そしてニューカレドニアなどに配備される敵の陸上戦力を師団ごと葬ってきた。


 もしそれがなければ、FS作戦の見積もりは甘いといわざるを得ないほど、敵兵力が増大していたかもしれない。


 航空支援、艦砲で援護できれば、現状の陸軍戦力でもニューカレドニアは攻略できるだろう。ただ、蘭印の時のような簡単に占領はできないだろうが。


 このFS作戦は、構想段階で東南アジアでの戦いを基準にしているフシがある。あまりに作戦間のスケジュールが短めなのも、そういうところが原因だろう。


 開戦から半年以上、アメリカ軍がこれらの島々の防備や兵力強化を進める時間はあったわけで、そう簡単に陥落させられるものではないと想像できそうなものだが。


「それに問題は、FS作戦対象外の島もだ」


 フィジー、サモアとソロモン諸島の間に、ニューヘブリディーズ諸島があり、そこのエファテ島を今年3月にアメリカ軍が上陸、占領した。ハバナ港があり、それなりの艦隊が利用できるのをはじめ、水上機基地や飛行場の整備も進められている。


 ニューカレドニアの北方、フィジーと、ソロモン諸島の間ということで、転移で移動できる日本軍は、FS作戦を実施することに問題はないが、それがなかった場合、目標に向かう前に米軍に発見され、作戦前提の『奇襲』にならなくなっていただろう。


「連合艦隊としても、フィジー、サモア攻略が奇襲にならないと知れば、ニューヘブリディーズ諸島の敵もどうにかしたいと考えるだろう」


 後ろから索敵されて通報されても面白くないはずだ。それを元に、アメリカの空母がふらっと現れて襲撃してきたら目も当てられない。

 今の米軍の空母戦力は、日本海軍の機動部隊に比べて正面から戦うのは難しいが、ヒット&アウェイ、一撃離脱に徹するなら、戦場をかき回すだけの能力はあった。


「ニューカレドニア攻略の日時を遅らせても、まずはエファテを黙らせる必要があるな」


 特破隊の空母で襲撃し、無力化。勢力圏の真ん中に米軍拠点があるという気持ち悪さを、軍令部や連合艦隊が許容できるかはわからないが、スケジュールから見て、占領に回す陸軍兵力の余裕はない。フィジー、サモア攻略のための兵力を回せば、そちらの攻略の日時が遅れることになるわけで。


「となると、魔技研の陸戦隊を使う、か……」


 今回のFS作戦の攻略は日本陸軍第17軍が担当する。つまり、特破側の陸上戦力は、作戦に加わっていない。アリューシャン、アラスカ方面での作戦を考えている神明とすれば、そこから一時的に兵力を引き抜く算段もつけられた。


 そうと決まれば、ニューカレドニア攻略の実行日変更の要請のため、軍令部にまず話を持っていこう。陸軍も絡んでいる作戦なので、日時変更などは早めに伝えねばならない。軍令部からは、特破隊がニューカレドニア攻略を担当するにあたって、連合艦隊のフィジー攻略より前であれば、変更も許容されると言われている。


 何せ、特破隊にしてもいきなり担当を押しつけられたもので、準備期間の短さでいったら連合艦隊とどっこいなのだ。さすがの軍令部もその辺りの事情は汲んでいる。


 軍令部に出頭する準備を進める神明。ニューカレドニア攻略における特破隊の戦力と概要の最新版――打ち合わせのたびに更新しているそれなので、細かなことを抜きにすれば、軍令部の作戦課も大まかにはすでに理解している――をまとめていると、オフィスに来客がきた。


 大西洋遠征艦隊司令長官、新堂 儀一中将である。


「これは、新堂長官」

「相変わらず、忙しいそうだな、神明」


 転移連絡網で九頭島司令部へやってきた新堂は、来客用の椅子に腰掛けた。神明は従兵を呼び、お茶を用意させた。


「大西洋での通商破壊を行う。まあ、その挨拶にきたのだ」

「ご足労をおかけいたします」

「貴様の考えた作戦だ。これも一つの礼儀というやつだ」


 新堂は笑った。魔技研の、あるいは特破隊のボスと言われている神明である。南雲機動部隊といわれる第一航空艦隊でも、航空参謀の源田 実中佐が考えて動くので『源田艦隊』などと言われることもあるが、それと似たようなものであった。


「複数の通商破壊空母群と潜水戦隊による、大西洋での船団攻撃。ドイツ海軍と協力して、アメリカから欧州への船団を手当たり次第、喰っていくわけだが」

「彼らとは極力、狩り場が重ならないように」


 誤射されて、味方に沈められましたではたまらない。それはドイツ海軍だけでなく、特破隊も同様だ。不審な潜水艦を見つけて攻撃したらUボートだった、では洒落にならない。


「青葉(ときわ)とも話した」


 新堂は、軍令部第五部の青葉 琢朗大佐の名を出した。特破隊が大西洋に出て作戦行動を起こすにあたり、ドイツ海軍と緊密な打ち合わせを行っている。


「それでも事故は起こるだろう。いくつか対策はしているが、まあ気をつけるとしかいいようがないな」

「やれることをやっての上でなら、そうするしかありませんね」


 神明は頷いた。新堂は視線を地図に向けた。


「で、通商破壊の実施と共に、大西洋上にある島――アセンション島を攻略する」

「南北アメリカとアフリカ大陸を繋ぐ航空フェリールートの拠点です」


 神明は言った。


「爆撃機の欧州への派遣、引いてはインド、中国への爆撃機移動ルートは潰しておきたいところです」


 大陸からの日本本土爆撃を防ぐ意味を含めて。もっとも、北方航空フェリールートというのもあるので、南半球のアセンション島ひとつでどうこうというわけでもないが。

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― 新着の感想 ―
この世界ではエスピリトゥサント島ではなくエファテ島が米軍の重要拠点ですか。広いエスピリトゥサントだったら攻略が大変でしたから、まあ良かったですね。 そして、いよいよ大西洋へも艦隊が。
マダガスカル島の攻防が落ち着いたと思ったら、次は南太平洋ですか(苦笑) ほんと特破隊というより神明大佐は、題名通り忙しい男ですね(笑) もともとタイトなスケジュールだったせいではあるのでしょうが、今度…
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