第131話、大西洋遠征艦隊
「新堂くん、大西洋だよ」
伊藤 整一軍令部次長は、穏やかな調子で告げた。相手は、海軍兵学校39期卒業の同期である、新堂 儀一中将であった。
予備役編入を待っていたら、開戦となって軍に留まることになった。砲術畑の軍歴を歩んできた彼だが、水雷、航空その他諸々と範囲が広く、これといって派閥に属することなくやってきた。そんな新堂は、ここ半年は魔技研の無人艦隊計画の監督役をしていた。
「君には大西洋遠征艦隊を率いてもらう」
特破隊はインド洋を越えて、とうとう大西洋に乗り出すか。新堂は、無人艦隊運用試験を監督しながら、遅かれ早かれ予感はしていた。
特破隊の作戦構想にあって、こんなものが本当に実現するのかと懐疑的ではあったものの、現在のところ、その構想通りに事が進んでいた。となれば、もはや疑うまでもなく、やってみせねばならない。
新堂は6月――世間ではMI作戦が実行されているのをよそに、大西洋遠征の準備を整えていた。
そして、特破隊の頭脳である神明 龍造大佐から、大西洋に進出する前に、マダガスカル島にやってきた英米艦隊を撃滅するよう伝えられた。
「この艦隊を叩ければ、大西洋での通商破壊が楽になります」
自分たちの仕事がやりやすくなるというのであれば、否も応もなかった。
かくて、大西洋遠征艦隊は出撃した。
●特破隊・大西洋遠征艦隊:指揮官、新堂 儀一中将
旗艦:戦艦「紀伊」
戦艦 :「紀伊」(バーラム)
哨戒装甲空母:「雲鶴」(アクイタニア)
航空母艦:「白鳳」(マウントバーノン)
:「海鳳」(エンプレス・オブ・ジャパン)
:「蒼鳳」(ウェイクフィールド)、「飛鳳」(ウェストポイント)
:「飛隼」(ナルクンダ)、「雲隼」(アオランギ)
:「尖隼」(エンプレス・オブ・オーストラリア)
:「海隼」(エンプレス・オブ・アジア)
:「星隼」(フィリックス・ルゼル)
重巡洋艦 :「笠取」(ヒューストン)、「石動」(コーンウォール)
:「道後」(ドーセットシャー)、「八海」
軽巡洋艦 :「黒瀬」、「玖珠」(ガラティア)
:「小矢部」(アルベルコ・ダ・バルビアーノ)
:「阿仁」(アルベルト・ディ・ギュッサーノ)
駆逐艦 :「赤雪」「春雪」、「真潮」(ネスター)「逆潮」(ノーマン)
:「白波」(ラフォーリー)、「逆波」(ライトニング)
:「八重波」(ルックアウト)
:「五百重波」(バケナム)「徒波」(パラディン)
:「小波」(パンサー)
護衛駆逐艦 :「千草」(アクティブ)、「若草」(アンソニー)
:「夏草」(ダンカン)、「秋草」(インコンスタント)
:「薄」(デコイ)、「野菊」(フォーチュン)
:「蓮」(グリフィン)「蓼」(フォックスハウンド)
:「梶」(ホットスパー}
潜水艦:「伊742」(U-127)「伊743」(U-131)
:「伊744」(シーライオン)「伊745」(O20)
:「伊746」(アミラリオ・カラッチェロ)
:「伊747」(アミラリオ・サンボン)
:「伊748」(アミラリオ・ミロ)
:「伊749」(グラウコ)
:「伊750」(アルベルト・グリエルモッティ)
:「伊751」(ミケーレ・ビアンキ)
:「伊752」(マッジオーレ・バラッカ)
:「伊753」(アレッサンドル・マラスピナ)
:「伊754」(グリエルモ・マルコーニ)
:「伊755」(スピアフィッシュ)「伊756」(シードラゴン)
:「伊757」(ソードフィッシュ)「伊758」(スカルピン)
:「伊759」(セイルフィッシュ)「伊760」(シーレイヴン)
:「伊761」(ソーリー) 「伊762」(スナッパー)
:「伊763」(スティングレイ)「伊764」(スタージョン)
:「伊765」(スキップジャック)「伊766」(サーモン)
:「伊767」(シャーク)「伊768」(パーチ)
:「伊769」(ターポン)「伊770」(ピカーレル)
:「伊771」(ポーパス)「伊771」(パイク)
:「呂741」(U-580)「呂742」(U-583)
:「呂743」(U-433)「呂744」(U-95)
:「呂745」(U-206)「呂746」(U-577)
:「呂747」(U-434)「呂748」(U-574)
:「呂749」(U-567)「呂750」(U-79)
:「呂751」(U-208)「呂752」(O-16)
:「呂753」(K11) 「呂754」(K17)
:「呂755」(K18)「呂756」(U-75)
:「呂757」(U-93)「呂758」(U-133)
:「呂759」(U-82)
開戦前の、イギリス戦艦「バーラム」、そして第四通商破壊隊の重巡「八海」、軽巡「黒瀬」、駆逐艦「赤雪」「春雪」を除けば、すべて開戦以降に、沈めてきた艦艇で構成される。
クイーンエリザベス級戦艦『バーラム』を再生した『紀伊』は、主砲を41センチ連装砲に改装。長門型に似た外観ながら、速力は28ノットを発揮する。
空母は、アクイタニアから再生された『雲鶴』が全長274メートルと飛び抜けて大きい。
続く「白鳳」「海鳳」「蒼鳳」「飛鳳」が全長205メートルから220メートルの間と大きく、艦載機は40から45機を搭載する。
残る「飛隼」「雲隼」「尖隼」「海隼」「星隼」は大体、全長180メートルに達しない小降りの空母であり、艦載機は27機となっている。
これら水上部隊に加え、五個潜水戦隊が、大西洋での通商破壊任務のために投入される。
大西洋遠征艦隊は、転移中継ブイを活用して、一気にマダガスカル島海域へ出現。同島を攻略しようとしていた英米艦隊の前に立ち塞がったのである。
「先制攻撃をかける。第一次攻撃隊、発艦せよ」
新堂 儀一中将は命じた。マダガスカル島基地から飛び立った零式哨戒機によって、敵艦隊の位置は把握済みである。
装甲空母『雲鶴』を除く9隻の空母、その飛行甲板に並べられた九八式艦上偵察戦闘攻撃機が発艦を始める。そして装甲空母からも、転移板を利用して基地航空隊が順次発進する。その攻撃隊は総勢216機。




