第129話、ルビコン川を渡る
英米艦隊、マダガスカル島に接近。
零式哨戒機による長距離偵察は、喜望峰を超えて進軍する連合軍艦隊を捉えた。
オペレーション・ジャイアントステップに投入された陣容は、以下の通り。
●英米連合軍艦隊:指揮官、アルヴァン・T・B・カーティス中将
戦艦 :「ネルソン」「ロドネー」「テキサス」「ニューヨーク」
空母 :「イーグル」「アーガス」「フューリアス」「レンジャー」
重巡洋艦:「ウィチタ」「タスカルーサ」
軽巡洋艦:「ケニア」「リヴァプール」「ブルックリン」「フィラデルフィア」
防空巡 :「カリプディス」「カイロ」
駆逐艦 :「オンズロー」「イカロス」「エスカベイド」「アンテローブ」
:「ヴィデット」「「ウェストコット」「ウィシャート」「レスラー」
:「ペドウィン」「イサリエル」「マーン」「マッチレス」
:「バッドワース」「ブランクニー」「クヤヴィアク」「ミドルトン」
:「ラインド」「ローワン」「メイランド」「ウェインライト」
掃海艇 :「ヘーベ」「スピーディー」「ハイス」「ライ」
輸送船:「ブラウンレンジャー」「ケンタッキー」「チャント」「バードワン」
:「トロライス」「オラリ」「ラニンバル」「クラン・シモント」
:「デンポ」「ケープラウン・キャッスル」
:「シティ・オブ・ケープタウン」「エンプレス・オブ・カナダ」
:「レイナ・デル・パシフィコ」「オービタ」
:「ハイランド・チーフテン」「ハイランド・プリンセス」「マロジャ」
:「マルニックス・ファン・サン・アルデゴンデ」「ニュージーランド」
:「オルドゥナ」「フェミウス」「ランギタタ」「リムタカ」
:「ワイパワ」「モートン・ベイ」「キャセイ」「タリス」
:「アカロア」「アスローン・キャッスル」「クラン・マッカーサー」
:「ホリンゲン」「ハイランド・ブリゲード」「ハイランド・モナーク」
:「ラナークシャー」「モナーク・オブ・バミューダ」
:「ムールタン」「オリサバ」「パスツール」「スキタイ」「アラワ」
:「ストラスエアード」「ストラスナヴァー」「ブリタニック」
:「クリスティアン・ホイヘンス」「ジャワ」「ラコニア」「メキシコ」
:「ニュージーランド・スター」「オロンテス」「オトラント」
:「ポエラウ・ロビア」「スタッフォードシャー」「サンタポーラ」
:「ヴィザロィ・オブ・インディア」「シャドー・ティエリー」
戦艦は、本国から東洋艦隊の補充として送られる予定だった『ネルソン』と『ロドネー』。
こちらは海軍休日で世界に7隻しかない40.6センチ砲搭載戦艦。そのイギリスの2隻である。艦首に主砲三基をまとめたシルエットは、ずいぶんとずんぐりと、しかし異様さを醸し出す。生真面目に条約の排水量を守ろうとした結果、攻撃と防御に重点を置いてこの姿となった。
残る2隻の『テキサス』『ニューヨーク』は、35.6センチ砲10門と装備するアメリカ戦艦だ。ただし、標準型戦艦の前の旧式であり、速度こそ21ノット――それでも現代の戦艦からすれば低速であるが――だが、艦隊戦で用いるのは少々厳しいものがある。今次大戦では船団護衛がもっぱらだったが、今回はそれに加えて、上陸支援。そして可能であれば艦隊戦に参加という扱いである。実際、ネルソン級の速度も23ノット程度なので、そこまで決定的な差はないのである。
空母は4隻あるが、『アーガス』『イーグル』は、それぞれ艦載機20機程度と、偵察と直掩が精一杯。引っ張り出した『フューリアス』にしても艦載機搭載数36機。アメリカからの援軍である『レンジャー』が76機を運用するが、レキシントン級の半分の排水量で搭載数を優先した結果、防御性能に難がある。それゆえ太平洋戦線に回されなかったが、この中では一番まともな戦力となっている。
重巡洋艦、軽巡洋艦は2隻ずつアメリカ海軍からの派遣戦力で、駆逐艦は大半がイギリス艦だが、4隻ほど米艦も加わっている。
輸送船、タンカー、兵員輸送船は、WS18、WS19、WS19Pなど、本来はアデンやボンベイに向かう予定だった船団である。
しかしマダガスカル島が敵地になったことで足止めされ、それがそのまま投入された。2万トン超えの兵員輸送船が14隻あり、1万5000トン超えの船にも英軍兵が乗り、マダガスカル島への上陸に備えている。
これらの艦隊は、日本軍の駐留艦隊が留守のマダガスカル島へと前進した。モンバサへ派遣された偵察型の長距離爆撃機による偵察によれば、島の北部に日本軍の空母はいないとのことだった。
好機である。飛行場の基地航空隊が現れるだろうが、現在の4空母でも充分であると、艦隊司令部――アルヴァン・カーティス中将は考える。
鬼の居ぬ間に、島を攻略できればよし。英米艦隊は、堂々とマダガスカル島へ進撃した。
・ ・ ・
「前進したか」
九頭島司令部にて、報告を聞いた神明 龍造大佐は、その報せを持ってきた諏訪 将治先任参謀を見た。
「それで、敵艦隊の陣容は?」
「戦艦4、空母4、重巡、軽巡あわせて8、駆逐艦20以上。輸送船など50隻以上の大艦隊です」
本気でマダガスカル島を奪い取ろうとする艦隊といったところか。神明は傍目にはわかりにくいが、うっすらと笑みを浮かべた。
「こちらの艦隊がいないとみて、動いてきたな」
「英軍としては、マダガスカル島をとらねば、北アフリカへの補給が滞ります。座していれば、アフリカは独伊の枢軸軍の手に落ちる。さらに中東も脅かされるとなれば、彼らは進むしかないのでは?」
「私としては、ここで戦艦、空母を全滅させておきたいんだがね」
神明は言った。
「大西洋での通商破壊のためにも、邪魔者は少ないほうがいい」
イギリス人は船団護衛を最後までしない傾向にある。戦艦・空母の損失を恐れて、船団と護衛は突っ込ませるが、支援部隊と称する戦艦と空母が、肝心な時にいないことも散見される。
確かにマダガスカル島はインド洋の補給線に影響するが、英軍としてもこれ以上の戦力の低下は看過できないはずである。やらねばならないとわかっていても、ジレンマである。
だから、こうして逃げられないラインを超えてくるかどうか、神明も一定の不安はあった。が、英軍は超えた。後は、これを叩くのみである。




