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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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106/110

第106話、進攻の前日


 米空母、ミッドウェー方面に移動中は、暗号を傍受した連合艦隊各部隊に、一定の動揺をもたらした。


 特にひどかったのは、第六艦隊である。


 潜水戦隊による哨戒線を形成する予定だったはずだが、特破隊C偵察隊の通報位置では、すでに予定哨戒線を通過していたからである。


「米空母、いましたな」


 宇垣 纏参謀長が言えば、山本 五十六連合艦隊司令長官は、うむと小さく頷いた。


「ミッドウェーへの兵員強化か、あるいは我々の動きを察知しての行動か」

「ともあれ――」


 黒島 亀人先任参謀は言った。


「ミッドウェー攻略前に出てくるのは予定外ではありますが、米空母がミッドウェーに来ることは確実になりました。好機到来。ここで撃滅しましょう」


 元よりそのつもりのMI作戦なのだ。敵が出てこないのでは、とヤキモキすることもない。

 そこで山本は、視線を黒島にやった。


「特破隊は、敵空母に攻撃を仕掛けるかな?」

「どうでしょう」


 指揮系統の異なる部隊である。こちらから命令することは不可能であり、特破は特破で軍令部の指示で動いている。


 その軍令部が、連合艦隊が全力をあげてミッドウェー作戦に挑んでいるのは周知しているので、それを汲んだ行動を特破隊も取ると思われるが……。


「おう」


 黒島が通信兵に気づいた。


「特破隊偵察隊より追伸です。ハワイ方面の航空索敵が厳重になりつつあり。我、一時退避す」


 特破隊の正確な位置はわからないが、ミッドウェー島を越えて、よりハワイに近いところにいるのは間違いない。

 黒島は言った。


「敵の索敵機から逃げるということは、空母のない偵察部隊なのでしょう。敵機動部隊の攻撃は不可能かと」


 あくまで偵察部隊。敵空母の存在を通報してきただけでも上出来と見るべきだろう。


「特破の連中の力を借りるまでもありません。敵機動部隊は、連合艦隊で叩きます」


 うむ、と山本は再度頷いた。


 連合艦隊は、なおも進撃を続ける。

 艦隊の行く手に、深い霧が立ち込めつつあった。



  ・  ・  ・



 6月3日。先行する第一機動部隊は濃霧にあって、隊列の維持に苦労していた。


 航行中、戦艦『霧島』と空母『飛龍』が衝突しかけるほどだったから、どれほど霧が濃かったかを物語る。


 しかし艦隊は、針路をミッドウェー島に変針しなければならない頃合いであった。無線封鎖中であったが、やむなく長波発信を行い、何とか変針を行うことができた。


 この電波を敵に察知されれば、せっかくここまできたのに奇襲は望めなくなる。それはいかにも勿体ない。だが、事故って作戦に支障が出ても困るのである。


 昨日、米空母がミッドウェー島に接近しつつあるという通報があったので、制空隊の集合、収容など、より警戒するよう各艦に通達を出した。


 変針後、しばらく霧に悩まされたものの、順調に移動。視界が晴れてしばらく、陸上攻撃機の航続距離に入ると、空母『飛鶴』を経由して基地航空隊を偵察に発進させて、敵空母の捜索を行った。


 一方、米ミッドウェー基地航空隊も、接近する日本軍に対して索敵を行っていた。


 PBYカタリナ飛行艇による哨戒で、最初に発見されたのは近藤 信竹中将のミッドウェー攻略部隊だった。


 通報を受けたミッドウェー島はB-17爆撃機9機を出撃させ、爆撃に向かう。そして見つけたのは上陸部隊を乗せた輸送船団と護衛につく第二水雷戦隊であった。


 さっそく爆撃を行うが、被害は輸送船『あるぜんちな丸』と『霧島丸』が至近弾を受けたのみであった。


 なお、爆撃隊は、戦艦、空母、輸送船多数を撃破したと報告した。……視界が悪いとこんなものである。


 ミッドウェー航空隊の日本艦隊発見の知らせは、太平洋艦隊司令部の知るところになった。


「……これは、ロシュフォートの解読情報から察するに空母部隊ではないな」


 チェスター・ニミッツ太平洋艦隊司令長官は、ステーションHYPOの通信解析から、ミッドウェーへ上陸する部隊を乗せた輸送船団であると判断した。この部隊は、ミッドウェー島の南西から接近していた。


「前線の任務部隊に通達しろ。敵機動部隊は予定通り、島の北西方向から接近してくる」


 太平洋艦隊司令部からの通達は、第17任務部隊、旗艦『サラトガ』のオーブリー・フィッチ少将のもとに届いた。TF16はスプルーアンス少将が率いるが、航空戦の全体指揮は、航空指揮官であるフィッチが預かることになっていた。


 アメリカ機動部隊は、日本機動部隊の予想される攻撃地点に移動するため、ミッドウェー島北方200海里地点に向かった。……そしてこれを、『飛鶴』を飛び立った一式陸上攻撃機の1機が発見。第一機動部隊に通報した。


 そして翌日、双方、空母の存在を知った状態で、ミッドウェーを巡る戦いが開始されようとしていた。



  ・  ・  ・



 6月4日。この日の第一機動部隊の方針を、南雲 忠一中将は定めた。


「第一群は、米機動部隊を撃滅。第二群はミッドウェー島を爆撃、飛行場を無力化せよ」


 第一、第二航空戦隊――空母『赤城』『加賀』『飛龍』『蒼龍』はミッドウェー北方へ。


 第六航空戦隊――『翠鷹』『蒼鷹』、『飛鶴』は、直進してミッドウェー島を空爆する。


 昨日までの偵察の結果、米空母は2隻が確認されており、これは『ホーネット』と『エンタープライズ』であろう。『ワスプ』がいないなら第一群の4隻で敵を上回る。……実際は、3隻目――『サラトガ』が存在しているのだが。


 04:30。第一機動部隊第一群は、米空母を捜索するため索敵機を発進させた。同第二群は、ミッドウェー島に対して第一次攻撃隊を放つ。


 同時刻、アメリカ機動部隊、TF17の空母『サラトガ』から、索敵のSBDドーントレス10機が発艦した。


 日米両機動部隊は、互いに敵を求めて動き出した。

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― 新着の感想 ―
とりあえず、装備転換でドタバタは回避されたか。後は真っ向勝負。
日本もアメリカも、互いを発見しつつも損害はほとんど出ていない状況ですが、それぞれに伏兵的な特破隊と空母サラトガの任務部隊がいるわけだから、これらがどう影響してくるかですね。 いよいよこの世界でのミッ…
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