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復活の艦隊 太平洋戦記  作者: 柊遊馬


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第10話、米豪分断作戦


 日本と米英蘭豪との戦争。日本海軍はアメリカを仮想敵と定め、軍備を整えていた。

 いざ戦争となった時、その戦いの中心はアメリカ海軍との決戦が中心となり、雌雄を決するものと考えられてきた。

 しかし1940年に入り、日米間の関係が悪化。双方の海軍は戦争になった場合を想定しつつ、従来の構想から方針を変えつつあった。


 アメリカ海軍の対日戦――オレンジプランにおける、太平洋艦隊が一気に進撃し、日本の連合艦隊を打ち破る。

 またそれを潜水艦、航空機ほかあらゆる手段で叩きつつ、日本近海もしくはマリアナ諸島で決戦を挑む日本の漸減邀撃作戦。

 そのどちらもが現実的ではないと、上層部では考えられるようなったのだ。


 アメリカ海軍の場合は、アイランドホッピング――島づたいに進撃し、確固たる制空権を確保しながらの進撃というプランに切り替わり、日本においても、米軍のそのような周到かつ堅実な進撃をされては漸減邀撃が成り立たないと戦略の転換を余儀なくされた。

 もっともこれらは、連合艦隊司令長官、山本 五十六大将の真珠湾攻撃で、物理的に戦略の変更せざるを得なくなってしまったが……。



 ともあれ、日本海軍、特に軍令部においては、漸減邀撃作戦が成り立たないのであれば、役割が空いた潜水艦を哨戒、通商破壊戦に積極的に投入しようという流れになった。


 史実後年において、日本海軍の艦隊決戦主義は批判にさらされてきたが、潜水艦の通商破壊への投入が進められていたのは事実であり、ハワイ、真珠湾攻撃により始まった大戦初期より、ハワイ近海や米西海岸に潜水艦を派遣して通商破壊を実施している。


 そんな史実に加えて、別世界線からの転生者である神明 龍造と彼主導の魔技研は、より通商破壊に重きを置いた軍備と、日本海軍に不足する長期戦を見越した装備の開発を進めた。

 軍令部直轄部隊である特破隊は、世界大戦に発展した戦争において米国のみならず、英連邦との戦いもまた考えて準備してきたのであった。

 そしていざ蓋を開けたら――


「戦艦3隻撃沈……。まあ、よくやったのは確かなんだろうけどね」


 軍令部一部一課長の富岡 定俊大佐は、温厚そうに見えて何とも微妙な表情を浮かべた。対面するのは、海軍兵学校の同期である神明 龍造大佐だった。


「軍令部直轄部隊の活躍としては、期待以上ではあるが……扱いが難しいね」


 作戦を担当する軍令部第一部の課長である富岡である。いわば海軍のエリート。対するは軍令部第五部、魔技研という胡散臭い特破隊の神明である。同期ということもあって、偏見はないが、扱い難い相手という認識はあった。


「大本営は発表していないのだろう?」


 神明は淡々と言った。特破第一戦闘群があげたサンディエゴ沖海戦について。


「扱いが難しいのはそこだ。発表しようか大本営海軍部でも意見が分かれていてね」


 富岡曰く、真珠湾攻撃で大打撃を与えた米戦艦が3隻も、半月も経たないうちに動いていたということを発表することは、真珠湾での戦果に疑いをもたれる可能性があるというのだ。

 実は南雲機動部隊の戦果は当初のそれよりアメリカ海軍の実害が少なかったのではないか、と。


 一方で、真珠湾の復活組であることは伏せて、純粋に米戦艦3隻を撃沈した事実を発表し、戦意高揚に繋げようという意見もあった。経緯はどうあれ、戦艦を沈めたのは確かなのだから。

 第一戦闘群が、撃沈した米戦艦を回収したので、それを公開すれば誰も嘘や誇張とは見ないだろうとも。


「その辺りは大本営が、近々扱いを決めるだろうが――」


 富岡は、じっと神明を見た。


「特破隊が思いのほか使えるというのが、ここのところの軍令部の考えになりつつある」

「実績に勝るものはない」


 神明が言えば、富岡は頷いた。


「これまでは、机上の空論。魔法使いの戯言、成果を示してみろ、というのが海軍省や連合艦隊の大方の見方だったからね」

「軍令部の作戦課もだろう?」

「私は信じていたよ、うん」


 富岡は笑みを浮かべたが、神明は信じていなかった。


「それで、おれを呼んだ理由は?」

「君のぶちあげた対米戦の計画案について、再考すべきと個人的に思ったんだ」


 臆面もなく富岡は言い放った。これまで見向きもしてこなかったら魔技研の対米戦略にようやく耳を傾ける気になった、というところであろう。


「あれは米国のみを相手にした戦略案だ。残念ながら、イギリス、オーストラリア、オランダ植民地軍も相手にしている状況では、話も変わってくる」

「それはそうだ。だからこそ、それも含めた連合国を相手にした君の戦略案を聞きたい」


 富岡は嘆息した。


「君も知っているだろうが、日本には長期的に見てアメリカに勝つための明確な計画がない。連合艦隊――山本長官は、短期決戦でなければ日本に勝ちはないと公言している」

「例の半年かそこらは暴れてみせましょう、というやつか」


 神明は思い出しながら言った。富岡は首をわずかに傾ける。


「それで終われば楽ではあるが、日本は石油ほか資源を絶たれ、アメリカどうこうの前に資源を獲得せねばならない。第一段作戦もそのために行う。長期持久態勢を構築し、欧州での戦いに期待する……」

「ドイツ頼みという話か」


 イギリスを相手にし、同時にソ連も相手にしているドイツ。


「イギリスをこの戦争から脱落させれば、この戦争の風向きも変わる」


 だから軍令部としては、アメリカと戦いつつ、まずイギリスをどうにかしたいと考えている。


「だが連合艦隊は、対米戦ばかりを考えている。ドイツからはインド洋に進出してイギリスの通商路を叩いてほしいという要請がきているが……」

「山本長官は、ハワイ攻略を考えている」

「そうなんだ」


 富岡は頭を抱えた。


「日本の国力で、ハワイ攻略なんてナンセンスだ。だが真珠湾奇襲を成功させたことで、山本長官の内外の影響力は高まっている。軍令部からの指示も無視とまでは言わないが、軽く見られている」

「そこで、おれたち特破隊があるわけだろう」


 神明は言った。


「こちらは軍令部直轄部隊だ。連合艦隊でやってくれない部分は、こちらで補えばいい。それに――」

「それに?」

「イギリスを大いに困らせることは、米国の負担を増やすことに繋がる。それを含めて狙うのは、オーストラリアだな」

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