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第二十話



 それから月日は流れ。

 悠理ちゃんから大貴と会ったことの話を聞いた。

 ガタガタ震え、顔面蒼白になる。

 全然大貴は俺のこと許してなかった。

 やっぱり信じて……いなかったんだ。

 大貴だから気づいていたんだと思う。

 俺がずっと悠理ちゃんが好きなことに。


「くそっ」


 ベッドを思いっきり叩く。

 また巻き込んでしまった。

 大貴が悠理ちゃんを傷つけることはないと思う。

 ……いや、今の大貴はわからない。

 俺の知っている大貴なのかも、もうわからなくなってしまった。


「ごめん、悠理ちゃん」


 膝を抱えて嘆くことしかできない。

 とりあえず、大貴に話を聞こう。

 スマホを手に取り、大貴に連絡をする。

 『会いたい』と。



 後日、大貴と公園で待ち合わせをした。

 少し早く来たからまだ大貴はきていない様子。

 今から俺はまた大貴を傷つけるんだ。

 落ち着かない心臓の音が何よりもうるさい。


「よっ、旭」


 そこにはニカっと笑っている大貴がいた。


「久しぶり、大貴」

「なー久しぶり! 連絡は取ってたけど、こうやって会うのは久しぶりだなー」


 ベンチの俺の横にドカッと座る。

 いつもと変わらなそうに見える大貴。

 俺はこんな明るい太陽のような大貴を頼りにしていて、尊敬していた。

 ごめんな、大貴。


「大貴」

「なにー?」

「……星名悠理に会った?」


 先程まで楽しそうに笑っていた大貴がぴくっと反応した後、もう一度笑う。


「うん。会ったよ。たまたまね! 星名さんから聞いた?」

「あぁ。星名から聞いた。大貴、星名に俺と加原が付き合ってるって嘘ついただろ」


 沈黙が長く感じる。


「あー、あれね。ちょっと間違えちゃったんだよ」


 ヘヘって笑うから、俺は息を呑む。


「嘘はつくな。俺と加原は付き合ってない。あのとき、やっぱり納得してなかったのか?」


 大貴は目をぱちくりさせる。

  

「そんなことないよ。ちゃんと納得した。俺は旭を信じているから」

「だったらっ」

「俺が星名さんのこと好きになっちゃったんだよ。だから気を引こうとして、ついね」


 何言ってんだ、こいつ。

 唖然とする。

 明らか嘘だってわかる。


「嘘つくなよ」

「嘘じゃない。話したとき可愛いなって思ったし、連絡取り合うの楽しいし……俺が星名さんを好きでも旭には関係ないだろ?」


 その言葉にどう返していいかわからなくて狼狽える。

 俺も好きだと答えたら、大貴は悠理ちゃんに何かするかもしれない。


「もしかして、旭も星名さんが好きなの?」


 言葉に詰まる。


「あんなに楽しそうにしてたもんね。星名さんの隣を幸せそうに歩いてた。妬けちゃうなー」


 大貴がクスクスと笑う。

 

「……っ、星名は関係ないだろ。それにあれはっ」

「後を着けられていたから、助けてあげただっけ?」

「あぁ。だから」

「ローファー」

「は?」

「茶色のローファー」

「だからそれがどうしたって」


 急に意味不明なことを言い出したことに違和感を感じる。

 大貴の顔には何か含みがありそうで急に寒気がしてきた。

 

「鞄に熊のぬいぐるみがついていて、ベージュのカーディガン、青の花の髪飾りにポニーテール。一階の端にあるクッキーが売っているところのピンクの紙袋を持っていた」


 それは――あの日の悠理ちゃんの外見。

 俺の鼓動は早くなる。

 そして大貴に恐る恐る目線を向けると、目が――笑っていない。


「もしかしてあのとき、悠理ちゃんをつけていたのってっ」


 信じたくない、嘘だと言ってほしい。

 体から温度が消え、震えながら微かに首を横に振る。


「ははは……だったら何?」


 心の中にあるパズルのピースが、一気にぐちゃぐちゃにされて零れ落ちる。

 そして隠れて見えていなかったマグマが勢い良く飛び出す。


「おまえっ!!」


 気づいたら思いっきり大貴の胸倉を掴んでいた。


「悠理ちゃんは関係ないだろ! 気に食わないなら俺にすればいい! なんで関係ない人を巻き込むんだよ!」


 怒りで声を荒げる。


「お前にも俺みたいに絶望を味わってほしかったからだよ! 信じてた奴に裏切られて、好きな子を奪われるってな!」

 

 大貴が力強く俺の腕を振り解く。

 やっと大貴が本性を現した。


「裏切ってない! 確かに俺の立ち回りは悪かったけど。だから加原に聞こうってあのとき言ったじゃないか! 拒否したのは大貴だろ!」

「聞けるわけねぇだろ! ずっと好きで、やっと告白する決心ついたのに、加原呼んで目の前で旭が好きって言われたら、俺はっ! 親友に裏切られて、好きな子に振られて……そんなの耐えられねぇよ!」


 ハッとする。

 加原は大貴が好き。

 でもそれを大貴は知らない。

 俺は知っているから少し余裕があったけど、大貴は知らなかった。

 自分の髪をくしゃっと握り締める。

 俺は、大貴に甘えてたんだ。

 大切だから、ずっと一緒に頑張って乗り越えてきたから、背中を預けた――親友だから。


「……ごめん、大貴。大貴の気持ちちゃんと理解できてなかった」

「ハハ、何を今更。それで謝ったつもり?」

「そんなことない! ちゃんと大貴の誤解を解く。そしてちゃんと大貴と向き合って、」

「俺はそんなの望んでない」


 俺は言葉を失う。

 悔しさで握る拳がミシミシと鳴るようだ。


「俺が望んでいるのは、お前が、旭が、もう星名さんに会わないことだ」

「えっ……」


 なんでそんなこと。


「いやだ、って言ったら」

「星名さんはどうなるでしょう」


 片方の口角が上がっている。

 

「悠理ちゃんは関係ないって言ってんだろ」

「でも旭の好きな子だろ? 旭が俺から奪ったように、俺も旭から奪う」


 怒りに満ち溢れた顔だ。


「悠理ちゃんは俺の何よりも大切な子だ。だから何があっても守る。それに悠理ちゃんの心は悠理ちゃんが決めることだから大貴が勝手にできるものじゃない」


 今度こそ傷つけない。

 

「やっと星名さんが大切だって認めたな。守れるって大口叩いて、昔守れなかったやつが言うことか?」


 不敵に笑う大貴が不気味だ。


「それに旭がそう言ってても、星名さんに旭のことチラつかせたら……星名さんはどうするかねぇ」


 




 

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