第十八話
――ずっと、ずっと、大切で何があっても守りたい子。
ただ君の笑顔を守りたいだけなのに、どうしていつも傷つけることしかできないのだろう。
どうしていつも間違えてしまうのだろう。
ごめん、守るって約束したのに。
ごめん、いっぱい一人で泣かせて。
繋いだ手を、温もりを、笑顔を、絶対守るとあの時誓ったはずなのに。
好きになってごめん。
それでも俺は――
***
「旭!」
一人で部屋に戻り、財布からお金を出して悠理ちゃんのことを頼んで足早に出てきた。
皆驚いた顔をしていたけど、迷惑かけるってわかってるけど、気に止める余裕もなくて。
今も呼ばれているのに振り向けない。
「旭!」
腕を掴まれる。
振りほどこうとするけど、湊はそれを許さない。
「俺はいいから、悠理ちゃんを」
「星名さんのところには啓太が残ってるから」
「なら俺のことは」
「そんな顔してるのにほっとけないだろ!」
掴まれている腕に力が更に加わる。
やっと湊と目線を合わせると、怒っているような、悲しそうにしているような、そんな顔をしているのが見える。
俺は驚いて自分の腕の力をいつの間にか抜けていた。
「ちょっと話そう」
そう言われるがまま、俺は頷いて湊の後に着いていく。
何故かファミレスにやってきた。
ドリンクバーを頼んで、沈黙が続く。
「ごめん」
せっかく皆で楽しんでいたのを、自分の感情をコントロールできないばかりに、台無しにしたから頭を下げる。
「少し落ち着いた?」
「……うん」
「そっか」
また沈黙が続く。
ファミレスには人が多くてガヤガヤしているはずなのに、そんなの聞こえないくらい今は頭がぐちゃぐちゃで。
皆に迷惑かけて、悠理ちゃんを泣かせて。
泣いている顔が頭から離れない。
「泣かせたかったわけじゃないのに……」
無意識に呟いていた。
こんなはずじゃなかったんだ。
俺さえ関わらなければ、悠理ちゃんはまた平穏な日常に戻って、毎日笑って過ごせていたはずで。
俺が欲が出て長く関わってしまったから。
あんな話をしてしまったから。
今も――好きでいるから。
あの時、悠理ちゃんに再会しなければ。
首を横に振る。
あの時再会したことに後悔はない。
だって怖がっている悠理ちゃんを放ってはおきたくなかったから。
きっと何度繰り返しても同じことをする。
「旭はさ、星名さんと何かあったの?」
湊がポツリと話しかけてくるので、顔を上げる。
そして、一度考えたあとコクと頷く。
「そっか。きっと何かあったのかなとは思ってたけど、旭隠すからさ。俺じゃ頼りない?」
バッと湊の方を見るとなんだか寂しそうに笑っていて。
「そんなことない! けどっ」
言い淀む。
関係ない湊を巻き込むのは違うし、こんな話したところで……
「俺はさ、旭に話してほしい」
「え……」
真っ直ぐ見てくるから目線を奪われる。
「俺が今楽しい高校生活を送れているのは旭と啓太のお陰なんだよ。二人が根気強く俺の話を聞いてくれて、しつこいなとも思ったけど。でも、どんな格好悪い俺も全力で受け止めてくれただろう? 一緒にたくさん間違ったけど、今笑ってるだろう?」
あぁ、そうだった。
今の俺らがあるのはたくさん間違ったけど、それでも諦めないで前を向いたからだ。
湊と仲良くなりたい一心で、ウザがられても話しかけたり、関わりに行った。
喧嘩になって、湊に心の中の想いを聞いたとき、俺らの心の中の想いを伝えたとき、お互いの想像と全く違ってポカーンってなって。
旭、不器用すぎない?って笑われて。
でも、それでも、お互いの本当の想いを知れたからこそ、誤解が溶けて今心から笑うことができている。
「ごめん……俺、湊に聞いてほしい」
今度は俺が真っ直ぐ湊の目を見る。
「ちょっと待ったー! 俺にも聞かせて」
声をする方へ向けると、横によっと言って啓太が座ってくる。
「啓太っ! 悠理ちゃんたちは?!」
勢い良く声をかけるけど、啓太は気にしてなさそうで、注文している。
「ん、三人とも駅まで送ってきたよ」
心のざわめきに安堵が広がるけど、複雑で。
「ごめん。そしてありがとう。助かった」
啓太にも頭を下げる。
「ううん。てか旭が星名さんと何かあったんだろうとは思ってたんだけど。今回俺と湊がカラオケに誘っちゃったのが悪かった。こっちこそごめん」
啓太も頭を下げてくるし、横を見ると湊もごめんと言って頭を下げている。
「やめろよ。二人は悪くない」
俺は少し動揺が走りながら首を横に振る。
「それに……二人のお陰で悠理ちゃんが何をしているのかかわかったから」
そう、あのまま避けていたら気づけなかった。
悠理ちゃんが今していること。
自ら俺達の問題に足を踏み入れていること。
……自ら危険な道に進もうとしていることを。
「どういうこと?」
その問いかけに俺は一度湊と啓太の目を見たあと話し始める。
「実は――」




