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第十六話



 どうしても行こうと言うので、玲奈と二人は不安だから咲乃にも一緒に来てもらうことに。

 ちなみに千佳は用があるから来れなかった。


「ねぇ、本当に行くの?」

「うん! 会いたいんでしょう?」

「それはそうだけど……急に行ったら迷惑だよ。いるかもわからないのに」

「でも葉山くんも急にきたじゃん」

「あれはっ」


 玲奈はあのときの話をしているんだろうけど、今と状況が違うというか。

 学校を出る前に一応連絡は入れた。

 見てないみたいだけど。

 嫌な顔されたら立ち直れなくなりそうで、まだ学校に着いてもいないのに胃がキリキリする。


「玲奈、やっぱり私……」

「あっ星名さーん!」


 この声――玲奈へ向けていた目線を声がした方へ向ける。


「佐伯くん」


 こっちに向かって手を振りながら笑顔で走ってくる。


「どうしたの? こんなところで」

「えっ、そのー佐伯くんは?」

「カラオケに行くところ」


 佐伯くんの後ろからひょっこり顔を出す戸川くん。


「久しぶり」


 そう手をヒラヒラさせている。

 その横には葉山くん。

 かなり驚いた様子で、すぐ目を逸らされる。

 すごく気まずい。

 でも久しぶりに目が合って心が少し弾んでしまう自分もいる。


「久しぶりだね」


 頑張って笑顔を作るけど、ちゃんと笑えている自信はない。 

 隣にいる玲奈が腕をグイグイしてくる。

 何か言わなきゃなのはわかるけど、上手く言えそうになくて頭を巡らす。


「よかったら一緒にカラオケ行かない?」


 戸川くんからの助け舟だ。


「おいっ」


 葉山くんは慌てているのが見てわかる。


「それいいじゃん! 星名さんたちはどう?」


 それでも佐伯くんはお構いなしに聞いてくる。

 横にいる玲奈と咲乃に目を向けるが、二人共頷いていて。

 一度葉山くんの方を見ると複雑そうな顔をしている。

 一瞬躊躇うけど皆が協力してくれているのがわかるから、私も頷いた。




 ***




 6人でカラオケに来て、軽く自己紹介をしたあと、玲奈と佐伯くんが盛り上げてくれている。

 みんな楽しそうだ。

 私ももちろん楽しい。

 でも葉山くんとは目が合わない。

 話しかけたけど、すぐ話が終わってしまう。

 大体いつも受け身だったから、葉山くんからどうやって話しかけられてたのだろうと考える。

 葉山くんが頑張ってくれていたんだと、あの時と反対だと気づいてなんだか笑えてきた。

 お互いぎこちなさが目立つ。

 近くに好きな人がいて、横顔を見つめていたくて、あの時握った大きな手がすぐそばにあって――だけど、すごくすごく遠い。


「星名さんは何か歌う?」


 戸川くんが機械を渡してくれる。


「えっ」


 咄嗟に受け取ってしまったけど、音痴だから歌うのはあんまり得意じゃなくて。

 助けてほしくて咲乃に目線を向けると、咲乃が気づいてくれた。

 機械と咲乃を交互に見る私に、手招きしてくれるから戸川くんにごめんねと言いながら前を通らせてもらう。


「わっ」


 机に足がぶつかり、倒れそうになる。

 すると後ろから手が伸びてきて思いっきり引っ張られる。


「あぶなっ、大丈夫?!」


 葉山くんの声が耳元で聞こえ、お腹の辺りに腕がある。

 私は今、葉山くんに抱きかかえられている状態。

 驚きと恥ずかしさでうまく言葉が出てこなくて、コクコク頷く。


「よかった、ほんと」


 葉山くんが安心してくれているのがわかる。


「おーい、そこのお二人さん」


 声のする方へ目線を向けると、先程までノリノリで歌っていたはずの佐伯くんが歌うのを止め、マイクを握りしめながら真顔で


「お前らこんなところでいちゃつくなよ」


 その言葉に葉山くんはハッとして、私を抱きかかえていることに気づく。


「わっえっごめん! わざとじゃなくて、えっ」


 勢い良く腕を引き抜き、後に飛び下がる。

 助けようとして無意識に抱えたのだろう。

 私も葉山くんも慌てふためく。


「助けてっ、くれて、ありがとう」

「うっうん」


 皆の生温かい目線が刺さり、目を瞑る。

 葉山くんはそれに耐えられなくなったのか、飲み物取ってくると部屋から出ていってしまった。

 一人で残すなんてひどいと思って、私も席を立とうとする。


「あんなに焦る旭初めて見たわ」


 そう言って笑って話す佐伯くんの言葉に体が止まる。


「確かに。旭はいつも基本冷静だもんな」


 戸川くんも同じように少し驚いたあと笑っている。

 

「じゃあ今回の慌てっぷりは珍しいの?」


 透かさず玲奈が不思議そうに聞く。


「うん。やっぱり星名さんのことになると旭は余裕なくなるんだな」

「えっ……なんで、私」


 葉山くんの後を追う予定だったのに、いつの間にか席に座ったまま。

  

「さすがにそれは俺たちからは言えないかな」


 苦笑いしながら佐伯くんが答える。

 頭に浮かんだ言葉があって、前ならそうかもしれないと淡い期待を持てたのが、今は全く持てなくて。


「私、葉山くんに避けられてるんだ」


 消え入りそうな声で頭がどんどん下がってくる。


「あーやっぱりなんかあった?」


 戸川くんが気まずそうに聞いてくる。


「な、んで?」

「最近旭機嫌が悪くてさ。本人は隠してるつもりだけど全く隠れてなくて。だから今日聞き出そうとしたんだよ」


 佐伯くんにも目を向けるとうんうんと頷いている。


「星名さん関係かなとは思ってたんだけど、やっぱりそうなんだな」


 佐伯くんはいつの間にかマイクを置いて席に戻っている。

 理由は私にもわからない。

 葉山くんが何を考えて、何を思っているかも、何もわからないまま。

 目線を四人に向けると、心配してくれているのが伝わってくる。

 もし私が関係しているなら、私がどうにかしたい。

 

「私、ちょっと葉山くんと話してくる」


 そう言って立ち上がり、部屋から飛び出す。

 皆が悠理が出て行ったドアを眺める。


「二人とも早く仲直りできたらいいな」


 佐伯くんの呟きに、咲乃が


「今の悠理なら大丈夫だと思う」


 そう言って微笑む。

 皆は咲乃の言葉に一度頷く。


「俺たちは俺たちで楽しむかー!」


 四人は四人で楽しむことにした。



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