第十五話
菜月とあの後、進展があったらお互い連絡し合おうという話になり、別れた。
家に着いた後ベッドになだれ込み、天井をぼーっと眺める。
色々なことが繋がってきた。
でもふと疑問が残る。
なんで葉山くんは菜月に伝えなかったんだろう?
言えばここまで複雑にならなかったのでは?
まだピースは埋まらないままだ。
そして、葉山くんと私のこと。
「私が知らないだけで、ずっと葉山くんは私のこと気にかけてくれてたのかな。あんなに傷つけたのにどうしてなんだろう」
未だに約束を守ろうとしてくれている?
あのときはまだ小さくな世界でしか生きていなかった。
あれはおままごとの延長みたいなもので、今はもう私たちも高校生だ。
世界は広がったのに、葉山くんはまだ私のこと気にかけてくれるのかな。
不意にベッドから起き上がり、カーテンを開けて窓の外を眺める。
「あっ……」
葉山くんだ。
道路挟んで向かい側だからそんなにはよく見えないけど、たぶんあの部屋は。
葉山くんも私に気づいたのか、勢い良くカーテンを閉められた。
「えっあっ」
突然の出来事に固まる。
一瞬目があった気がするけど、あれはなんだったのだろう。
(葉山くんは私の部屋を見ていたのかな)
その言葉がふと頭に浮かんだことで急に恥ずかしくなり、私もカーテンを閉め、ぬいぐるみを思いっきり抱きつく。
ぬいぐるみにも心臓があるのではないかと疑うほど、鼓動がうるさい。
葉山くんもあのときからずっと、私のこと好きでいてくれているのかもしれないと淡い期待が膨らむ。
でも同時に避けられている理由がわからないから不安も。
これが避けられている行動の一種かもしれないから。
きっと葉山くんも菜月も高野くんも、そして私も。
相手のことを考えすぎていて、空想の相手と向き合っていることに気づいていない。
本当の想いはその人にしかわからないのに。
「でも菜月と一緒に頑張るって決めたし、菜月は高野くんと向き合ってくれるから……あれ? でもなんで高野くんはわざわざ私に二人の話をしたんだろう?」
私が二股かけられないようにと言ってたけど、たぶんあれは本心じゃない。
何を考えているんだろう。
葉山くんを傷つけるため?
あのときの違和感を思い出し、手足の先から冷たくなっていくのがわかる。
「大丈夫かな……」
あんなに熱い鼓動が、いつの間にか冷たい鼓動になっていた。
***
あの後、葉山くんに連絡を入れた。
会って話がしたいと。
でも忙しいからと断られ、じゃあ電話でと伝えたけど、それも断られて。
メッセージを送っても、前はすぐ返ってきていたのに、今はなかなか返ってこなくなっていた。
全く話せずじまい。
菜月も同じ感じらしい。
二人の間に本当に何があったのだろう?
「なーに、項垂れてんの」
顔を上げると千佳、咲乃、玲奈がいる。
クラスでいつも一緒にいるメンバーだ。
「……避けられてるの。葉山くんから」
「えっなんで?」
「わかんない」
「葉山くんってあの前に悠理を迎えに来てた人でしょう?」
「うん」
三人共驚いている。
「全く心当たりないの?」
咲乃が心配そうに聞いてくる。
「全くってわけじゃないけど……」
「連絡とれないの?」
千佳が私の隣りに座る。
「連絡は取れるけど、返信かなり遅くて。電話も会うのも断られた」
「あの人が? 私が悠理と帰っているときに横から掻っ攫って、悠理を見て嬉しそうにしてた人だよね?」
玲奈が変なこと言うから、益々顔が上げられなくなる。
「掻っ攫ってとか、ハハッ」
千佳はツボに入ったのか笑ってる。
「あの人がねー。なんか信じらんないな」
「……」
玲奈の言葉に何も言えない。
「やっぱり何かあったんじゃない? もしかしたら悠理関係のこととかで。悠理から聞いてる話だと、葉山くんが不誠実な人には思えないし」
いつの間にか笑いが止まっていて、千佳がこっちを見る。
「だよね。きっと何かあったんだと思う。でもどうやって会えばいいのかな。さすがに家に行くのは悪いから」
「うーん、確か高校近いんだよね?」
「うん。同じ駅の高校」
「ならさ!」
玲奈の顔がニンマリしているから、なんだかものすごく嫌な予感がして顔が引きつる。
その先の言葉は絶対聞いてはいけない気がして、耳を塞ごうとする前に。
「会いに行こうよ!」
やっぱり聞いちゃいけない話だった。




