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第十四話



 お互いの目は真っ赤だ。

 でも気が済むまで泣いたからこそ、頭が一度リセットされた。

   

「菜月、傷つけてごめんね」

「ううん、私こそごめんね」


 お互い飲み物を飲んで一旦落ち着く。


「子供みたいに泣いちゃって恥ずかしい」

「私も。お互い様だね」


 あんなに泣くつもりはなかったから、恥ずかしくて若干気まずい。

 たぶんそれは菜月も同じ気持ちみたいで、落ち着かない様子。

 どうしていいかわからず、お菓子を眺めている時間が永遠に感じてしまう程。

 グラスに付着している水滴が机に落ちる。

  

「……あのね、なんでその話をしたかと言うと、菜月に協力してほしかったからなんだ」


 今日菜月に会いたかったもう一つの理由。

 それは――


「二人を仲直りさせるのを手伝ってほしい」


 私は揺るぎない目で菜月を見る。

 そんな私を見て菜月は、驚いたあと戸惑う表情を見せる。

 当たり前だ。

 そんなにまだ仲良くなって時間も経ってなければ、菜月はまだ本心を人に言うのは苦手みたいだから。

 ダメだったかな……と思い始めたとき、菜月の強張っていた顔が少し緩み始める。


「私も協力させてほしい」


 その言葉に私はこみ上げてくるものを抑えられない。


「ありがとう!」



 二人でどうしたらいいかを考える。

 四人で集まるのが一番いいのかもしれないけど、どう切り出すべきなのだろうか。

 うーん、と悩んでいるところで、私はどうしても確認したいことがあるから、菜月に聞いてみることに。


「あのね、こんなときになんだけど……菜月の好きな人って高野くん?」


 飲み物を飲んでいた菜月はゴホッと咽る。

 

「あっ急にごめん!」


 急いで菜月の背中を擦りに行く。

  

「っ、ううん、ゴホッゴホッ、少しびっくりしただけ……うん、高野だよ」

「やっぱり、そうなんだね」

「うん」

 

 さっき咽たばかりなのに、また飲み物を飲んでいるから照れ隠しなのかも。


「どういうところが好きなの?」


 菜月のちぐはぐな行動が可愛くて、少し悪戯したくなる。


「はっえっはっえっ」

「はえがどうしたの?」


 口をパクパクするのが可愛すぎてニヤニヤが止まらない。

 

「悠理」

「へへ、ごめんね。つい」


 本当に人は見かけじゃなくて、実際話さないとわからないことだらけだ。


「じゃあお互いの好きな人な好きなところ話そう!」

「ええっ!」

「だって私だけ言うのは不公平でしょう? あっ、もしかして本当は悠理が惚気たかったから、私に話を振ったの?」

「ちっ違う!」


 菜月がニヤヤニヤしている。

 あっこれ反撃されたんだと気づく。

 負けた……頭を抱える。


「で、葉山の好きなところは?」


 期待を込めて見られるとどうしても無下にはできない。

 自分の手を見ながら話す。

  

「……っ、気にかけてくれて、守ってくれて、優しいところ。笑ったときの顔が犬みたいで可愛いところ。あと……大きくてゴツゴツしてて包み込んでくれる温かい手が……好き」


 初めて人に話す。

 そのまま顔を手で覆い、そのまま机に伏せる。

  

「へー、いいね。てか手が温かいって、最近繋いだことあるの?」


 ハッと顔を上げ、やってしまったと気づく。

 

「へー、どっちから?」


 なにも答えてないのに通じてしまうのはなんだか怖い。

 あのときのことを思い出し、確かあのときは……


「わっわたしっ!」

「すご! 大胆だね、悠理」


 何も考えず握ってしまっていたんだった。


「やらかしました」

「嫌がってたの?」

「わかんない。でも、握り返してくれた」

「えっそれ最高だね!」


 あのときの手の温もりまで思い出しちゃったから、頭から冷水を被りたい気分だ。


「で、菜月の高野くんの好きなところは?」


 話題を変えたくて聞く。


「うーん、明るいところかな。いつも気にかけてくれて笑わせてくれるんだ。周りにも自然に接しててさ、好きだけど尊敬もある。あと、見上げて話せるのはドキッとする」

「確かに!高野くんも身長大きいもんね」

「私身長大きい方だからさ、見上げて話せることあんまりなくて。だから見上げたときに八重歯がチラっと見える笑顔は、本当に可愛すぎるんだよね」


 高野くんの話をするときの菜月は特段に可愛い。

 こんな菜月を見たら高野くんはどう思うんだろう?

 こんなに高野くんのこと大好きなのに。


「大好きなんだね」

「うん、好き。仲間思いのところも大好きなの。私何度も助けられたんだ。だから、やっぱりあんなに仲良かった高野と葉山が仲違いのままは、嫌だ」

 

 菜月の瞳が潤んでくる。


「一緒に頑張ろう」

 

 菜月は私の言葉に頷いたあと


「私が高野に会って、誤解を解こうと思う」

「えっ」

「だって元はといえば私が葉山に口止めしたことで、起きた出来事だし。高野にちゃんと説明すれば……」

「菜月は今、高野くんに全部曝け出せる?」


 今少しずつ菜月は自分の鎧を脱ごうと頑張っているから応援したい。

 だけどさっき高野くんにはきれいなままの自分でいたいと言っていたから心配で。

 風がカーテンを揺らす。


「怖くないって言ったら嘘になる。好きだから、こんな私を知って幻滅されるかもと思うと不安でたまらない。でも悠理が私に本当のこと教えてくれたから、悠理が勇気出してくれたから、私も……頑張りたい」


 瞳は真剣だけど、体が微かに震えているのがわかる。

 (怖いよね、好きな人に向き合うのは。私もそうだから)


「私も……葉山くんに話してみる。勝手にこんなことしちゃったから、嫌われるかもしれないけど。ちゃんと今度は逃げないで伝える。一緒に頑張ろう」


 私の言葉に菜月は頷き、拳を出してくるから、その拳に拳を当てる。

 夕日がいつもより大きく濃いオレンジ色をしていているので、力強く私たちを後押しようしているかのように思えた。




 

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