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王妃教育の謎から始まる溺愛 ~ 王子と婚約破棄?大歓迎です!  作者: 柚屋志宇
第4章 悪魔祓い

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43話 王国の歴史

 私たち四人は中央通りのカフェ『翡翠鳥の止まり木』の個室席に入りました。

 カフェの個室席は、劇場のボックス席のような小ぢんまりとした部屋です。


 上流階級をターゲットにしたカフェなので、少人数で悠々と使えるこういった個室席がいくつか用意されているのです。

 もちろん普通の席よりも格段に値段は張ります。


 個室席で、私とユベール様が並んで座り、向かい合わせにルシアン殿下とセリーヌ様が座りました。


「ご注文を賜ります」


 私たちを案内した給仕係はメニューを差し出すとそう言いました。


「私はミルク入り深煎り珈琲(カフェ・ノワゼット)猫の舌(ラングドシャ)を」


 私はいつもの飲み物とお菓子を注文しました。


深煎れ珈琲(エスプレッソ)を」


 ユベール様もいつもの珈琲です。


「ベルガモット紅茶」


 セリーヌ様は紅茶党でいらっしゃるのね。


「レモネード」


 ルシアン殿下は果実水(ジュース)ですか。


 みんな飲み物だけで、お菓子を注文したのは私だけでした。


 私がこれから話す内容を警戒して、セリーヌ様とルシアン殿下はお茶を楽しむどころではないのかもしれませんね。


「セリーヌ様もルシアン殿下と、ここへはよく来られるのですか?」

「はい……。何度か……」


 空気が張りつめている中、私が会話を投げかけるとセリーヌ様はぎこちなく答えました。


「お待たせしました」


 しばらくすると、給仕が私たちが注文した品を運んで来ました。


「ごゆっくりどうぞ」


 注文の品をテーブルに並べ終わった給仕が退室して、私たち四人だけになると、私は早速話し始めました。


「では本題に入りましょう」


 セリーヌ様とルシアン殿下の顔がにわかに強張りました。


「セリーヌ様にお聞きしたいのですが……」


 私は天使のセリーヌ様を信じていましたが、一応確認をしました。


「セリーヌ様はルシアン殿下とのご結婚を心からお望みなのですか?」

「はい……」

「もしルシアン殿下が王太子でなくなったとしても?」

「……!」


 私の質問にセリーヌ様は一瞬目を見開き、言葉を詰まらせました。

 ですがすぐに解答しました。


「はい。もちろんですわ」


 セリーヌ様のその答えに、ルシアン殿下は感動したような表情を浮かべてセリーヌ様の名を呼びました。


「セリーヌ……」


 セリーヌ様はルシアン殿下を振り向いて微笑むと、私に向き直って言いました。


「私とルシアン殿下の婚約は政略の形ではありますが、私は心からルシアン殿下をお慕いしております」


「そうですか。それならば……ルシアン殿下」


 私はルシアン殿下に言いました。


「セリーヌ様のために、位をお捨てになったらいかがでしょう」

「は?」


 驚いたように声を上げたルシアン殿下に、私はもう一度言いました。


「ルシアン殿下が王太子の地位を捨てれば、ルシアン殿下もセリーヌ様も幸せになれるのです」

「ふざけるな!」


 ルシアン殿下は不愉快そうに眉を歪めました。


「フェリシア、貴様はユベールを王太子にしたいのだろう。それで自分が王太子妃になるつもりだな。その手には乗らん」


「結果的にはそうなりますが、それは目的ではなく手段ですわ。消去法でそういう手段を選ぶことになったというだけです」

「はあ? 意味がわからん」


 ルシアン殿下は難問に悩むような顔をしました。

 私は質問を変えました。


「ルシアン殿下は国王に即位したいのですか?」


 私がそう問うと、ルシアン殿下はむすっとした表情で答えました。


「当然だ。私がいずれ国王となることは、私が生まれたときから決まっていることだ」

「国王に即位して、何をなさるおつもりですか?」

「国を治めるに決まっているだろう」

「どうやって治めるのですか? ルシアン殿下は最近、政策会議にも参加されていないようですが?」

「……っ!」


 王妃教育で、私が課題の回答を提出していたときには、ルシアン殿下は宰相が主催する政策会議に出席して、私の課題の回答を流用して意見していました。

 そして賞賛されていました。


 しかし私が王妃教育に行かなくなり、課題の回答が得られなくなると、ルシアン殿下は会議で失言を繰り返し、ついには会議を締め出されました。


 現在ルシアン殿下は、政策会議に呼ばれていません。


「ルシアン殿下が今までに政策会議で発表されていた案は、ルシアン殿下のお考えではありませんでしたよね。王妃様の言うとおりにご発言なさっただけでしょう。ルシアン殿下は王妃様の伝言係をなさっていただけ」


「伝言係だなどと、ぶ、無礼だぞ!」

「ご自分で考えた案だと言えるのですか?」

「……」


 私の指摘に、ルシアン殿下はくやしそうに顔を歪ませました。


「ルシアン殿下ご自身は解っていらっしゃるはず。政策会議で意見も言えず、それで国王になって、ルシアン殿下は何をなさりたいのですか?」


「……わ、私は国王になるのだ。国王になれば誰も私に逆らえない……」

「逆らえますわ」

「叛逆者は死罪だ」

「叛逆者が捕らえられた場合には、そうなりますね。でも……」


 お勉強ができないルシアン殿下に、私は歴史の知識を披露しました。

 学院で習った範囲のことなのですが。


「国王を暗殺してしまえば叛逆者の勝利です。その場合は叛逆者が国王になります。それで何度も王朝が代わりましたのよ」


「……」

「……」


 ルシアン殿下とセリーヌ様は顔色を変えて押し黙りました。


 ルシアン殿下はともかく、セリーヌ様はルシアン殿下の評判が落ちていることはご存知だと思います。

 廃太子を望む声が増えていることも。


 逆風が強いままで強引に即位したら一体どうなるのか。

 セリーヌ様ならそのくらいの想像はできるでしょう。


 私はもう一度、最初の提案を口に出しました。


「位を捨てれば、らくになれるのですよ」

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