第8話 ダンジョンL-17層④
俺達はその後も、ダンジョンL-17層の攻略を順調に進めていた。
レッドエルフ、アースエルフ、エルフバード……、まるでダークエルフ類の見本市のようなこのフロア。日を跨ぎながらも、慎重にクリアしていった――
――ギンッ!……
俺は向かい合うエルフナイトの一撃を剣で受け止めていた。そのまましゃがみこんで、膝に蹴りをお見舞いする。エルフナイトはバランスを崩した。
―― よし、バランスを崩した ――
片膝をついたエルフナイトは少し混乱をしている。
――シュッ!……
エルフナイトは剣をなぎ払いのように振り回した。
俺はジャンプをして、エルフナイトの弱点である首を凝視する。
「オリャー!」
力いっぱいエルフナイトの首にめがけて剣を撃ち下ろす。
――ブシュ―ッ……
エルフナイトの首は胴から離れ、切腹した武士のように胴体は崩れ落ちた。
「ふぅー、こちらは終わった。」
横を振り向くと、マイが既に息の無いサモンエルフを指さして目配せした。マイも無事仕留めたようだ。
その先では、相手にしているノボがハミングコッコーに最後の一撃を食らわせようとしていた。
「……トランス・レベル3……」
ノボを後方で支援しているコニーが補助魔法を発動すると、手にする巨大ハンマーが鋭利なつるはしのように変形した。
――ザンッ!
ノボのハンマーはハミングコッコーを胴から貫き、ハミングコッコーは肉の塊と化した。
「やったー!全部倒したー! 今晩は鶏肉だよー!」
ヨースがジャンプを重ねて喜ぶ。
ノボは息を切らしているようだが、よく見ると、よだれを垂らしている。
否!
あいつだけではない、コニーも倒れている鶏に似たハミングコッコーに熱い目線を寄せている。
「……今日はもう終わりにするか。」
俺も人のことは言えない。「グーッ」という腹の音が今日の潮時を告げていた。
「サモンエルフがハミングコッコーを召喚してくれて良かったねー!」
ヨースが無邪気に喜ぶ中、マイは真面目な顔をしてこちらにやってきた。
「今日はここで休むわよね? 私、この先を見てくるわ。」
マイは、休憩場所の安全を確認するための偵察を買って出てくれた。
「俺も行こうか?」
俺はマイに持ちかけると、マイは優しく首を振った。
「ううん、大丈夫。今日はケイとノボに頼って楽だったし、コニーについてきて貰う。」
「大丈夫か?」
「うん。ケイとノボは休んでて。ヨースが夕飯を作り終わるまでには戻ってくるわ。」
まだ少し不安だったが、確かに今日は疲れた。
俺は素直にマイの優しさに甘えることにした。
「おーい、ポニー!」
俺は、コニーに向かって呼びかけた。コニーは、ヨースが見事な手さばきで肉塊の解体をする姿に見とれている。
「マイと一緒に偵察に行って来てくれよ。」
すると、コニーは鞄から懐中時計を取り出し、目を落とした。
「定時まで、あと10分も無いわよ。」
「わーってるって。ちょっくら見てくれればいいからさ。ポニーさんのそのおきれいなおメメで確認してくれれば、ボクタチ、もう超安心!」
融通が利かないコニーを煽るように俺は言った。
「……定時になったら戻るわ。」
俺もマイも、了解と受け取る。
「それじゃあ、ケイ。マイと行ってくるわ。」
「気を付けてな。」
そう言うと俺は、キラキラ光る魔鉱石に影を作りながらマイとコニーがその奥に消えていく様子を見送った。




