第37話 ダンジョンL-26層・決着①
「……それで、あなたはどうするつもりかしら?」
「俺は……、決着を付ける。自分の戦いに。自分の力で……。」
そう言うと俺は、すっと立ち上がった。
「ちょっと待ちなさい。」
ダンジョンの奥に向かおうとする俺を、コニーが呼び止めた。
「餞別よ。追加料金は取らないわ。」
そういうと、コニーは魔法の詠唱を始めた。
「……エンハンス・レベル8&リリース&メッセージ・レベル15……」
コニーの魔法が、刃こぼれしている俺の剣に掛かる。
すると、俺の剣 ――ルミタスの剣 ―― が光を帯びた。
「今度は折られないことね。」
俺はハッとしてコニーを真っすぐに見つめた。
そんな俺に、コニーはやはり真っすぐに見つめ返した。
そして俺はコニーに対して、ただ、黙ってこくりと頷いた。
俺はヨースが気付いていないのを確認して、ダンジョンの奥に歩みを進めた――
そして今、俺は再びベビードラゴンと対峙した。
ベビードラゴンは興奮しているように見えた。
ベビードラゴンの尻尾はまだ切れたまま。
片目も潰されている。
傷が癒えていない。
自らを手負いにした相手を目の前に、威嚇するように、待ち望んでいたように、
「ギャウゥー!」
ひと啼きすると、挨拶代わりに火を噴いた。
――ボワァー!
眩い炎が俺を襲う。
俺は身を翻し、その炎をくぐるようにベビードラゴンに駆け寄った。
――ザンッ!
俺のひと太刀がベビードラゴンの右前脚を捉える。
「よし!入った!」
俺はベビードラゴンに太刀を入れられたこと、そして、刃こぼれした剣が強化され、まだ十分にベビードラゴンにダメージを与えられることへの手ごたえを感じた。
が、まだ浅い。
――ドーン、ドーン!
前右脚を傷つけられたベビードラゴンが、地団駄を踏むように、その四肢で踏みつけを試みた。
そのでたらめな攻撃は、ひと踏みひと踏みが致命傷にも思えるぐらい重いものだった。
しかし俺は、それらを丁寧に躱しながら、再び距離を取る。
「ギャオウー!」
距離を取った俺に対して、ドラゴンはもうひと啼きした。
「来る!」
俺は読んでいた。
――ボワァー!
眩い炎が再び俺を襲う。
それを俺はやはりかいくぐる。
――ザンッ!
再び、俺のひと太刀がベビードラゴンの右前脚を捉える。
「ヒャオーウ!」
今度は一撃目よりも深く入った俺の斬撃に、ベビードラゴンは悲鳴を上げた。
それでもベビードラゴンは、その右前脚で、俺に対して蹴りと踏みつけを試みる。
俺は再びベビードラゴンと距離を取る。
よし! 削れる!
地味な攻撃だが、ヒット&アウェイのこの攻撃に俺は手ごたえを感じていた。
ベビードラゴンの右前脚は確実に傷つき、どことなく動きも鈍くなってきている。
「ギャー!」
ベビードラゴンは堪らずに啼いた。
また来る!
俺は先読みをして、身を捻りドラゴンに近寄る。
が、ベビードラゴンは火を噴かなかった。
「フェイント?!」
しかし、頭は状況を理解しても、身体は追いつかない。
そのままドラゴンに突っ込む形となる。
そんな俺を待ち構えていたベビードラゴンは、左前脚で俺を蹴り上げた。
「ガッ!」
俺はベビードラゴンの蹴りをまともに受けて、吹っ飛ばされた。
口からは血の味がする。
ベビードラゴンはそこを見逃さない。俺の方に向いて、首をもたげる。
「炎が、来る!」
頭で分かっても、身体が動かない。
俺はここまでなのか……。
その時、俺の頭の中で、走馬灯のように過去が巡り始めた――




