第34話 ダンジョンL-26層・記憶の中で④
……
シーンは移る。
寝袋に包まっていたコニーが目を開けた。ただ、そこにある人影はコニー一人だ。
コニーは少し慌てたように周囲を見渡す。
「疲れていたのよ、私も。どちらかというと、自分の気持ちを押し殺して、サポートに徹することに。それで、気付くことができなかった。」
思念を通じて、姿が見えない方のコニーが言葉を俺に送った。
俺の目に映るコニーは、猛スピードで駆け出した。
モンスターを一匹、また二匹と蹴散らし、躱し、そのスピードを緩めることは無い。
そして、通路のようなダンジョンは、広い空間に突き抜けた。
その先には、巨大なモンスターが居た。
……レッドドラゴンだ!
そのレッドドラゴンの前には、崩れ落ちた2人の剣士が居た。
レッドドラゴンは一仕事を終えたように、その巨体を休ませていた。
「……」
目の前のコニーは全てを察していた。
そして、両手を目の前に突き出す。
「……ドラゴンブレーク・レベル35……」
――ジュッ……
いつか見た光景と同様に、レッドドラゴンは消え去った。
そして、コニーは再び駆け出し、ダンジョンの階下に消えていった――
……
シーンは移る。
コニーはひたすら走っていた。
ただ、走りながら、襲い掛かってくるモンスターを、獰猛に、一方的に、倒していた。
まるで封印されていた力を解放したように。
手元の手帳がぽとりと落ちて、目の前のポニーはそれを拾う。
手帳には、「Z-82層」とだけ書かれていた。
もう、これまで出会ったモンスターのメモ書きはそこにはなかった。コニーは調査隊の仕事を放棄していた。
「虚しい……。」
一言漏らすと、魔法も使わず、腰に差したショートダガーで熊系のモンスターを一刀に刺し倒す。そしてまた駆け出す。
「意味が無い……。」
やはり一言漏らすと、今度は魔法を帯びた素手でアンデッド系モンスターを殴り、一撃に屠った。
思念体のコニーが、俺に語り掛ける。
「パーティを失った悲しみは、全く無かったわ。」
続けて、吐き捨てるような思念を飛ばした。
「2人は、最後に自分の力を見誤った、それだけ。」
更に続けた。
「私は、ただただ、虚しかった。」
そして、俺の見るコニーは、階下を目指し続ける。
その時、目の前に現れたモンスターはブルードラゴンだった。
「私ひとりでここを片付けたとして、一体何の意味があるの……?」
目の前のコニーはそうこぼすと、ブルードラゴンを「キッ」と一瞥した。
ブルードラゴンは、既に戦意を喪失していた。
そんなブルードラゴンを見届けると、コニーは踵を返し、ダンジョンをまた駆けるように引き返した――
……
シーンは移る。
再び、トクリマ王国の王宮に。
「コニーよ。ダンジョンの調査、ご苦労であった。」
国王はコニーに向かって言った。
「これまでのダンジョン調査のレポートは特筆に当たる。十分な成果を得たことは認めよう。……ただ、失うものもあった。」
国王は続ける。
「この調査で、我らはタカとアヤナを失った。この損失は大きい。悲しみや不満を隠さない者もいる。不問という訳にはいかない。」
国王は、最後はため息を吐くように言った。
「王国調査隊の任を解く。今後は、王国ハケン補助魔術師としての任に着け。ダバン王国にも許可は取っておる。」
コニーは国王を真っすぐに見つめた。
「畏まりました。一切の異存はございません。むしろ、望むところです。」――




