第32話 ダンジョンL-26層・記憶の中で②
俺は空に漂っている。
これは一度経験したことがある。
マイの記憶に潜った時だ。
「その通りよ。」
コニーの声が聞こえた。
どこだ?
「探しても無駄よ。思念で伝えているわ。それよりも前を見なさい。」
俺はコニーの声に導かれるように前を向いた。
そこには一体の巨大なモンスター、そうだ、これはレッドドラゴン!
当然、俺は初めて見るが、そんな俺でも分かる。
竜族の中位ドラゴン。
ただ中位と言っても、一体現れれば、一晩で街一つ壊滅させられる程の力を持つと言われている。
そして、そんなレッドドラゴンに向き合う小さな影がもう一つ……。
コニーだ!
ひとりで向き合っているのか……?
「……ドラゴンブレーク・レベル33……」
コニーが魔法、いや魔法というよりはもはや獰猛な光を放出する。
――ジュッ……
き、消えた! 跡形もなく……。
「一発よ。」
姿の見えない方のコニーが、思念を飛ばした。
「まずはあなたが知りたかった私の実力。」
鼻に掛けるような言い方にも聞こえたが、俺は気にならない。
むしろ、放った魔法が対竜最大級の魔法、ドラゴンブレーク……。
底の見えなさに驚愕していた。
「さあ、次よ。」――
……
シーンが変わる。
ここはどこだろう?
俺の意識は、立派な柱に彫刻まで置いてある一室に漂っていた。
ここにもやはりコニーが居る。
そして向かいには、騎士風の老兵が立っていた。
「将軍、レッドドラゴンを狩りましたことを報告申し上げます。次の指令をお願いします。」
「うむ、一撃にて屠ったと聞いているぞ。大したものだ。」
「力を認めてくださるのであれば、私に早くあのブラックドラゴンを当ててください。」
「うん……。」
コニーに「将軍」と呼ばれた男は、一言、間を置く。
「コニー、我々『王国対竜特別隊』は、メンバー全員がお前の実力を評価している。ただ、それは単体戦力としてだ。」
「……はい。」
「お前も分かっている通り、知性が高くその能力も高い上位ドラゴン戦は、あらゆる角度で戦略的な戦闘となる。故に、我々も単体での戦いを認めていない。」
「……はい、存じております。」
「お前は、パーティでの戦いを行うには勝気が逸り過ぎている。今のお前に、ブラックドラゴン討伐メンバーを任せる訳にはいかない。」
「……お言葉ですが、それでは将軍は私にどうすれば良いというのでしょう。」
将軍は苦笑いをする。
「私が言っているのは、お前のそういうところだよ、コニー。まあ、いい。我々の討伐悲願『ドラゴンロード』が、先月強い魔力を発動した。これは聞いているな?」
「……その噂は聞いております。」
「調査によると、隣国トクリマには、地下ダンジョン26個を生み出したようだ。ダンジョンは、今はまだ成熟していないが、時間を掛けて、強い妖魔を生み出そうとしている。」
「はい。」
「トクリマ王国から、我が国に応援要請が来た。トクリマは、平和が続いていたが為に、碌な戦力が居ない。そこで、お前に出向を命じる。」
「私が……ですか。拒否権は無いのですね。」
「無い。お前には、トクリマ王国調査隊に入ってもらう。トクリマ王国所属の部隊とパーティを組み、ダンジョン調査をサポートするミッションだ。色々学んでくるがよい。」
「一つも学ぶものは無いと思いますが。」
「行ってみれば、分かるものよ。」
2人の会話はここで切れた。
俺には、『王国対竜特別隊』、『隣国トクリマ』という言葉がこびりついて離れなかった。ということは、コニーは……。
「そう、私はダバン王国の対竜特別隊出身よ。」
――ダバン王国……
モンスターと紳士協定が結ばれ平和なトクリマ王国とは異なり、その隣で竜族と百年戦争を繰り広げている、武力大国。
竜族との戦いに決して屈しない強力な戦士・剣士・魔術師を擁している国でもある。
コニーは、そこの出身だったのか。「半分正解」とは、そういうことか……。
「次よ」
コニーの思念が頭に響いた――




