第31話 ダンジョンL-26層・記憶の中で①
「……ここは、どこだ?」
ごつごつした天井が見える。光る魔鉱石が、チカチカと目を照らす。
「……ダンジョンに居るのか?俺は……」
そこに見慣れた顔がぴょこんと現れた。
「ケイー! 目が覚めたのー? 大丈夫―??」
目を開けた俺を見ると、ヨースがぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ。
「……俺は逃げられたのか ?あのベビードラゴンから……。」
「うん、ベビードラゴンの攻撃を受けた後、コニーと僕で、倒れた3人を運んで来たんだよー。」
「ベビードラゴンは、一体どうしたんだ?」
「追って来なかったよ。ラッキーだったね!」
……追って来なかった?
俺は、まだ回らない頭で思案を重ねた。
「コニー! ケイが目を覚ましたよー!!」
「こっちももうすぐ終わるわ。」
顔を傾けると、コニーの傍らに、マイと、ノボの巨体が横たわっている。
コニーは、マイとノボに向けて手を広げ、光を発している。何やら魔法を掛けているようだ。
「終わったわ。ヨース、後は薬草を付けて、患部を水で良く冷やしてあげなさい。」
「分かったー!」
ヨースはコニーに呼ばれて、マイとノボの方に駆け寄っていった。
入れ替わるように、コニーが俺の方に向かって歩みを寄せる。
「幸運だったわね。」
「……何がだよ。」
俺は自暴自棄のように言葉を吐き捨てる。
「定時が過ぎていたことよ。」
俺は、コニーが言っている意味がさっぱり分からなかった。
「今日は定時が終わったら、プライベートで久しぶりにヒール(治癒魔法)を馴らす予定だったのよ。たまたまそのタイミングで良かったわね。私も良い練習台が出来たわ。」
コニーのその言葉を聞いて、俺の頭は完全に目を覚ました。
そして、コニーののらりくらりとした言葉に、いよいよ業を煮やした。
「……お前、一体何者なんだよ?」
「どういうことからしら?」
「ヨースから聞いた。ベビードラゴンは追って来なかったって。あのプライドの高い竜族のベビードラゴンが、それも、手負いにされてだぜ……?」
「……それで?」
「追って来ない理由は2つ。俺達を追う価値が無いと思ったか、追うのを恐れたからだ!」
「……」
「ベビードラゴンは、お前を恐れて追って来なかった。違うか?」
コニーはすっと一息置いて、口を開いた。
「だったら、どうだって言うの?」
「俺は、お前が何者かを知りたい。お前、一体何者なんだよ?」
「もう気付いているんじゃないのかしら?」
そう、俺は既に想像していた。コニーは……
「……王国調査隊のメンバー、違うのか?」
コニーは口元に少し笑みを浮かべながら、
「半分、正解よ。」
ポツリと呟いた。
――やはり、そうなのか……
「でも、半分正解ってどういう意味だよ?」
「それを知ってどうしたいの?」
「……俺は知りたい。俺が目指しているものが何なのか。」
するとコニーは、俺の言葉にかなり思案する素振りを見せて、時間を掛けた。
そして口を開く。
「今日でダンジョンに入ってちょうど一か月、これは理解している?」
「はあ? それが今何の関係があるんだよ?」
「ハケン契約は、一か月更新。今日がその更新日に当たるわ。これは理解しているわよね?」
「……いや、碌に約款読んでなかったからわかんねえ。」
コニーはフーッとあきれ顔をする。
「まあ、知らないなら知らないでいいわ。とにかく今日は更新日。更新に当たっては、雇用主側がハケンを切れる権利があるのと同様、ハケン側も更新を拒否する権利を持っているわ。」
「それが、この話とどう関係あるんだよ?」
「あなたが、私のことを知りたいというのならば、教えてあげる。ただし、これ以上のハケン契約の更新は、私の方から拒否するわ。」
「……」
俺は返答に詰まった。補助魔術師の離脱は、今後のダンジョン攻略を諦めることに繋がる。それをしかも、俺一人で決めていいのか?
……ただ、知りたい!
俺の本心は知ることを望んでいる。この気持ちには抗えない!
「分かった。その条件は飲む。」
「そう、なら私との契約はここで終了。」
「あいつらには、後でしこたま謝らなきゃな。」
「それはお任せするわ、じゃあ、目を瞑りなさい。」
「……どうして目を瞑らなきゃならないんだよ?」
「話すより、視て来なさい。」
すると、コニーは俺に向かって両手を広げて、光を解き放った――




