第3話 冒険のはじまりと出会い②
「補助魔術師がいないとダンジョンⅬに挑めない?!」
首都デノーンの冒険者ギルドで、地下ダンジョンへのエントリーシートを提出した俺は、仲間3人を背に、ギルドの受付に詰め寄っていた。
「……はい。『ダンジョンF』までは補助魔導士は不要ですが、『ダンジョンG』以降では補助魔術師同伴でないと、ギルドでは挑戦は認めておりません。」
「じゃあ、『ダンジョンE』でも『ダンジョンF』でもどこでもいいから挑戦させてくれよ!」
「お話しした通り、ダンジョンは既に『ダンジョンK』まで、攻略済み、あるいは攻略中のステータスになっています。」
受付は、淡々とマニュアル通りの回答を行いながら続けた。
「ご希望であれば、王国のハケンの中から補助魔術師を用意しますが、如何ですか?」
この言葉に、俺も含めたパーティ4人がピクリと反応する。
「なんだよ、『ハケマ』使わなきゃならないのかよ……」
ハケン魔術師 ―
通称、「ハケマ」。冒険者達の間では、すこぶる評判が悪い「ハケン」の魔術師。
「ハケン」とは、言ってしまえば、ギルド側が王国の公務員戦闘員を仲介し、協力要員を派遣する制度だ。
パーティはハケンと契約を交わすと、人員派遣を得られる代わりに、パーティの安全よりもハケンの安全を優先することを約束させられる。
一方、ハケン側も義務的に参加している者が多い。パーティの生死には関心が無く、自分のやれる範囲でしか協力をしないハケンもザラだ。
パーティが全滅の危機に瀕している目の前で、ハケンがさっさと逃げ出してしまったという噂も多々ある。
ハケンの中でも、特に後方支援が多い魔術師は逃げ出すことが多く、「ハケマ」という蔑称が根付いている。
到底そんな輩に、パーティの命運を託すことは出来ない……。
「他に方法は無いのかよ?」
「ダンジョン挑戦実績のある補助魔術師を連れてきて、挑戦申請をし直してください。それ以外には、ハケン魔術師を受け入れるしかないです。」
受付は、やはりマニュアル通りにきっぱりと答えた。
この受付もきっと「ハケン」だな……。
受付の回答は想像通りだったが、俺達には信頼できる補助魔術師にアテは無い。
俺は後ろを振り返り、メンバーに目を向けた。
「マイ、お前はどう思う?」
「私は……、ハケマって一緒になったことないからから良く分からないけど……、やめた方がいいんじゃない?」
うん、それは俺も同意だ。
「ノボ、お前はどうだ?」
「……分からない。オレ、飯、食べてから相談したい。」
こいつは空腹で今は相談できる状況ではない。
「ヨースはどう?」
「ハケマのパフォーマンス次第だよー。モンスターに詳しい魔術師だったら僕は大歓迎だなー!」
天真爛漫な回答だが……、確かに、要はパフォーマンス次第だな。
俺は今一度振り返って、受付を睨みつけるようにすると、問いを投げた。
「ハケマの条件は、こちらから指定できるんだな?」
「はい、今回は補助魔法使いである前提の上で、その他の希望も受け付けます。」
「4週間待つ。その代わり指定した条件通りのハケマを用意してほしい。」
「ご希望に沿えるかどうか確約はできませんが、全力は尽くします。こちらの『ハケン魔術師希望申請書』にご希望を添えて提出してください。」
そう言うと、受付はご丁寧に一枚の紙を差し出した。
見ると、名前や連絡先住所などのお決まりの記載事項の一角に、「ご希望スキル」と書かれた小さな欄がある。
俺は定形欄をササっと埋めると、希望スキルの記載欄に「裏面参照」と一言だけ書き、真っさらな裏ページを捲り返した。
「マイ、どんなハケマを希望する?」
「私はねー……可愛い女の子!」
可愛い女の子、ね。俺好みのポニーテールを追記しておこう。
「ノボは?」
「……オレ、グルメな奴。」
その能力は何の役にも立たないと思いながらも、「格付能力アリ」と記載する。
「ヨースは?」
「モンスターに詳しいひとー!」
まあ、こいつはそう言うだろうな。「モンスター検定1級」、と。
俺は各メンバーの意見を取り入れながらも、更に高めのボールを、考え付く限りに追記していった。
■希望条件
・ポニーテール。
・格付能力アリ。
・モンスター検定1級。
・全系統魔法を習得済み。
・戦士並みの体力アリ。
・責任感が強く、規律を重んじる。
・魔道具整備士1級。
・戦闘武具補助強化大会入賞。
・戦闘員特別看護師の国家資格。
・ダンジョンマップ製作検定士。
・退役冒険家ライフプラン相談士1級。
……etc.
空白の申請書裏面を埋めるに埋めて、思いつく限り、自画自賛するほどの分量の資格を並び立てた。まるで、頭の固い受付を困らせるように。
「はい、これが俺達の希望条件。」
そう言うと、俺は受付に「ハケン魔術師申請書」を突き出した。
「……はい、受け付けました。ご希望に沿えるか分かりませんが、結果は伝書鳩でご宿泊先に連絡します。当ギルドが合致する人材を用意できましたら、一切の拒否や変更はできませんのでご注意ください。こちら、約款です。」
と、諸条件が記載された約款を渡された。
約款には、ハケマの命を最優先する旨を始めとした各種誓約事項、時給などの契約緒条件が連なっていた。
俺は内容を詳しく確認もせずに、「どうせ無理だろう」と思いながら、踵を返した。
「さあて、飯を食いに行こうぜ!」――




