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第28話 ダンジョンの踊り場で・3 ~ ヨース ~

 僕達は今、湖畔で夕食を囲んでいる。今日は、大量のお魚料理だ。

 刺身に、焼き魚に、ムニエルに。

 魚醤も取れて、ダンジョンレモンの隠し味も付けた。

 コニーの魔法で干物も作れたし、当分の食糧も確保できて、大満足だなー。


「ヨース、このムニエル、私の大好物!」

「久しぶりの、魚。うまい。」

 傷ついたマイもノボも、とても喜んでくれる。嬉しいなー。


「ポニー、おま、俺にもよこせ!」

 ケイはまたコニーの隣に座って、コニーの魚を横取りしている。仲が悪いなら、コニーの横に座らなきゃいいのにー。


「ケイ! もー。私のお魚分けてあげるから、こっち来なよ!」

 マイが向かいに座るケイを呼びかける。

 ケイがコニーに絡んでいると、マイはいつもちょっと不機嫌だなー。


 僕の趣味は観察。モンスターはもとより、ヒトを観察するのも大好きだ。このパーティは賑やかで、観察していても飽きることがない。


 ……

 夕食が終わると食器を洗う。

 マイはいつも手伝ってくれる。魔法で水を召喚して、それを使って丁寧に食器を磨く。

 僕はこの時間が好きだ。

 食器を洗いながら、これまで出会ったモンスターに思いを馳せる。

 そして、明日はどんなモンスターと出会えるのだろう。


 ……

 食後は、就寝時間になるまで皆が思い思いの時間を過ごす。

 ケイは、僕からダンジョン攻略本を借りながら、次の層の予習をする。


「なあ、ヨース。この煙幕コウモリってのは、どうやって倒せばいいと思う?」

「煙幕コウモリは超音波で相手との距離を測っているから、マイのストームで乱してやるといいと思うよー。煙幕コウモリが煙幕を出すと僕達は視界が見えづらくなるけど、煙幕コウモリの動きは止まるから、その瞬間を狙うといいと思うなー。」

「ふみふむ、それなら問題なさそうだな。」

 ケイは勉強熱心だ。その姿勢はパーティの皆も認めている。


 マイはいつもこの時間はロッドを磨いている。

 ロッドを磨きながら考え事をするのがマイの習慣だ。

「マイー、左腕はまだ痛むー?」

「あら、ヨース、モンスター図鑑を読んでたんじゃないのね。左腕の回復は順調よ。ほらっ!」

 マイはそう言いながら左腕をぐるぐる回した。

「痛っ!」

 やはりまだ完治してはいないようだ。マイはいつも無理をする。

「今日はたくさん魚が捕れたから、魚の油で軟膏を作ったよー。塗ると治り早いから使ってー。」

「ありがとう、ヨース!」

 マイは爽やかな笑顔を僕に向けた。僕は戦闘では役に立てないから、こういう時に役に立てると嬉しいなー!


 ――グーッ!


 横でノボが釣りをしながら横になって、お腹を鳴らしている。

「ノボー、夕飯足りなかったー?」

「オレ、もう少し食べたい。」

「待って、魚で干物を作ったから持ってくるねー。」

 ノボは嬉しそうな顔をする。ノボの食欲に付き合うのは大変だが、ノボが台車を引いて調理器具を始め色んな荷物を持ってくれるから、自分もダンジョンで仕事が出来る。

 ノボは縁の下の力持ちなんだなー。


 今度はコニーに目を向けると、いつも通り帳簿を付けている。

「コニーはさ、今までどんなモンスターを見てきたのー?」

「そうね、どんな話を聞きたいかしら?」

「じゃあね、今までで一番きれいなモンスター!」

 コニーは優しく微笑むと、幻影ピクシーの話をしてくれた。群れになって、その華麗な舞で冒険者達を魅了する。でも、一度魅入ると、幻影ピクシーの魔法が発動し、苦しい幻想の世界に引きずり込まれてしまう、そんな話。

 楽しいなー。

 見てみたいなー。

 どうやって倒したんだろー……??


 ……

 ――コトコトコト……


 よし、魚のスープの仕込みは十分だー。

 朝6時、僕は今、見張りをしながら朝食を仕込んでいる。フロアマスターを倒したとはいえ、気が抜けない。

 僕は見張りの時間が苦手だ。戦闘能力が無いから、敵が現れたとしても、仲間を起こす事しかできない。見張りの時間はいつも緊張する。

 料理をしたり、モンスター図鑑を読んだり。

 周囲を警戒しつつも気を紛らわしている。


 スープも後は煮込み続けるだけ、モンスター図鑑でも読もうかなー。

 モンスター図鑑を読んでいる時間は、至福の時間だ。

 もう遭遇したことがあるモンスターに対しては、かつての戦闘シーンを思い浮かべる。

 まだ会ったことがないモンスターには、いつどこで会えるのかなんて、妄想を展開する。

 このダンジョンⅬでは、どんなモンスターが今後待っているんだろう――


 ……ハッ……


 しまったー! ついウトウトしちゃったよー。

 僕はモンスター図鑑を広げたまま、居眠りをしてしまった。

 幸い、モンスターの襲撃は無かった。

 周囲を見渡すと、一つの影が立っているのが見えた。


「緊張感と向き合うことね。」


 コニーだ!


 コニーが近寄って話しかけてきた。

「これ、その図鑑の栞に使いなさい。」

 そういうと、一枚の黒い羽根を渡してくれた。


 これは……。


 煙幕コウモリの羽だー。嬉しいなー。


 でもどうしてコニーはこんなものを持っているんだろうー……。

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