第27話 ダンジョンL-26層・始まり⑤
今、ヨースは、人型スライム3体と策も無く戦うしかない俺達を、ひたすら目で追っていた。
「何か、何か、見付けなきゃー……」
――ブシュッ
緑スライムの触手がノボのこめかみを裂き、血が噴き出す!
ヨースは目を背けたかった。
「前を見なさい。」
コニーがヨースを諭す。
目を背けてはいけない!
ヨースはそう心で呟くと、勇気を振り絞って目の前を受け止める。
「ヒント、ヒントが欲しいよー……。」
するとコニーは、
「ヒントは、挑戦する人に降ってくるものよ。」
そう言うと、おもむろに魔法の詠唱を始めた。
「……エンパワー・レベル5……」
その魔法は光を帯びて、俺の手に絡みついた。
俺の意図に反して握力が急激に増加し、剣を握る手はバランスを失う。
その時、俺は剣を振りかぶって思い切り赤スライムを斬りつけようとしていた。
――スッポーン!
バランスを崩した俺の剣は、手からすっぽ抜けて壁に向かっていった。
その時、3体のスライム達は、凄まじいスピードで一斉に駆け寄り、ジャンプ一番俺の剣をキャッチした。
俺は、剣を奪われてしまった!
仕方が無く腰に差しているショートダガーを抜いて構え直す。
いよいよ不利な状況だ。
「おい、コニー。どうすんだよ!」
俺はイライラと焦りを隠さずに、コニーを問い詰める。
が、コニーは何も答えない。
「……ウィンドカッター・レベル7……」
マイの魔法が発動した。
マイはスライム3体が一堂に会したその状況を逃さなかった。
「……エンスパーク・レベル7……」
コニーがまたも魔法を発動した。
ウィンドカッターが爆発して、風の刃がまき散る。
いや、風の刃がまき散ろうとしたところを、なぜかスライム3体は円陣を組んで抑え込むように自ら食らい、ウィンドカッターの飛散を抑えた。
俺はその際にスライム達が落とした俺の剣を拾い上げて、ウィンドカッターのダメージを負う3体を斬りつけて破片にする。
が、結果は同じ。
スライム3体は、再び再生を始めた。
「コニー! 何したいんだよ、お前!」
俺はスライム達が再生に時間を要している間、コニーに詰め寄った。
「剣、取り返せたわね。」
コニーは俺が食って掛かっても意に介さない。
その時、俺はコニーの横でワナワナと震えるヨースを見た。
「ノボ―! 壁に残っているスライムをハンマーで潰してー!!」
壁の一角には、ヨースが言うように、3体とは合体せずに残っているスライムが10匹程度散在して張り付いていた。
ノボは訳が分からなそうな顔をしながら、それでもヨースを信じて壁に向かった。
俺もマイも、ノボを壁に集中させるために、再生を終えようとしている3体の合体スライムを妨害する。
――ガン、ガン………… パキッ!……
ノボが壁の打ち付けを繰り返し、最後のスライムを潰した時、それまでとは違う、鋭い音がした。
その瞬間!
俺とマイが向き合っている3体のスライムが崩壊した。崩壊したスライム達は、ぴくりとも動かなかった。
「やった……。」
俺は左肩を抑えながら、へたへたと座り込んだ。
マイもロッドを床について立ち尽くしている。
ノボも、ハンマーと盾を置いて仰向けになった。
「やっぱり壁に居たスライムが、本体だったんだ……」
ヨースがへたり込みながら、呟いた……。
「本当の敵は、いつでも自分が思い込んでいるものとは違うところにあるものよ。」
コニーが誰に言うでもなく、ポツリとこぼした――




