第26話 ダンジョンL-26層・始まり④
――ズキン!
その時、鋭い痛みが左肩を走った。しまった、よそ見をし過ぎた。赤スライムが再度触手を細く伸ばして、俺の左肩を貫通させていた。
「ぬおぉ!」
俺は右腕で剣を振り上げ、貫通させている触手はそのまま左肩を犠牲にしながら、赤スライムを上から真っ二つに斬り落とす、
触手は引き、赤スライムは真っ二つに割れた。
……が、スライムはゆっくりと、再び合体を始めた。
「えーい!!」
俺はスライムの合体を阻止すべく、左に右に、乱斬りをした。
赤スライムは、細かい破片になって飛び散る。
飛び散った破片は、しかし、やはり動きを止めない。再生をしようと蠢いている。
「ヨース! 早く弱点を教えてくれ!!」
ヨースは、モンスター図鑑を焦りながら捲り、
「分かんないよー! こんなモンスター、図鑑にも載ってないよー!!」
モンスターに魅入っていた時とは一転、ヨースは明らかに取り乱している。
一方、ノボも苦戦をしていた。顔には火傷の跡のような傷をいくつも作りながら、ハンマーを振り回している。
「フンッ!」
ノボのハンマーがようやく緑スライムを捉えた。
――ブシュッ!
鈍い音がして、緑スライムが潰れて破片が飛び散る。
が、やはりその破片は動きを止めなかった。
ノボも、教えを乞うような顔で、ヨースを見つめる。
「分かんない、分かんないよ……。」
ヨースは一層焦りながら、図鑑のページを捲るのを早めた――
打開策が見つからないままに、俺達はジリ貧の戦いを続けていた。
致命傷を貰うのを避けながら、傷を増やしつつも、何度もスライム達を破片と化すのに成功させていた。
が、破片は何度でもくっついて、無傷の状態で再生させる。
一方の俺達は、傷も疲労も蓄積して、満身創痍の状態だ。
……その時、
「……きっとこれだ! 3体同時にコアを壊して!」
ヨースが叫んだ。俺は状況を理解した。
「ノボ、3体を一か所に寄せるぞ。マイ、寄せたところで特大を頼む。」
ノボも合点して、ハンマーで威嚇をしながら緑スライムを誘導する。
俺も赤スライムと剣を交錯させながら、押しながら、赤スライムを青スライムの方に寄せていく。
「マイ、今だ!」
俺とノボはその場をジャンプして離れた。
「……ウォータースクリュー・レベル7……」
さっきよりも大きい水のうねりが、3体同時に襲う。
――ブシャー……
3体とも破片を飛び散らして砕けた。
やった、のか……?
「ツインガーゴイルが、2体同時攻撃で倒せるっていうのと同じ理屈だよー。」
冷静さを取り戻したヨースが、解説を加える。
……が、砕けた破片が……、再び鈍く動き出した!
みるみる内に、元の赤・青・緑にその姿を取り戻していく。
「そんなー……」
ヨースが、膝から砕け落ちた。
そして、パニックになったように、また図鑑を激しく捲り始めた。
すると、ここまで一言も発していなかったコニーが、ヨースが掴む図鑑を取り上げた。
「あなたが見るのは図鑑じゃないわ。前よ。」
コニーはいよいよ呆然とした様子で、コニーを見上げる。
「そんなこと言ったって、分かんないんだよー……。」
コニーはそんなヨースを見て、すっと一息つき、今度は優しい口調で言った。
「この図鑑を作った人も、最初は訳が分からなかったはずだわ。今起きている現実を見て、理解をしなさい。」――




