第16話 ダンジョンL-20層②
あくる日も、俺達はダンジョンを突き進んでいた。
森を抜けると、ダンジョンは洞窟らしさを取り戻し、薄暗い広い一本道に収束していた。
魔鉱石の弱い光を頼りに、俺達は一本道を直進する。すると、一本道が二本の道に分かれる分岐点に差し掛かった。
「……私は左だと思う。」
おもむろに、マイが呟く。
真面目な顔のマイには申し訳ないが、マイは方向音痴だ。信用はしていない。
「ノボ、どっちだと思う?」
「右。たぶん、右の方が、苦い匂い。」
いよいよ参考にならない。
「ヨース、攻略本には何て書いてある?」
「ここは書いてないよー。攻略本もそこまで詳しくないよー。」
うーん、仕方が無い……。
「ポニーさんはどうお考えで?」
「私は雇用主の指示に従うわ。」
にべもない。
「……よし、コインで決めるか。」
俺が呟くと、コニー以外の3人もうなずいた。
「表が左、裏が右、と。」
懐から1ゼニ―を取り出すと、指で「ピンッ」と弾き、コインを宙に浮かせた。
コインは俺が思ったよりもフワッと浮き上がり、力を失って床に落ちた。
――コッ…… チャリンチャリン……!
コインは裏を示していた。
「右だな。行こう。」
俺は皆を促し、俺達は右に進んだ。
後ろからついてくるコニーが、一瞬顔を緩めた気がした――。
右の道を暫く進むと、魔鉱石の光を抑え込むように、黒い霧がゆらゆらと漂っている。
「うわ……視界が悪いね……。」
マイが左腕を押さえながら呟く。
「霧じゃないよー。これ、シャドウ系モンスターの瘴気だよー。」
ヨースがダンジョン攻略本をめくりながら続ける。
「シャドウミラーが今回のフロアマスターだから、この道で間違いないよー。」
ノボは霧の匂いを嗅ぎ、
「……苦い。」
とだけ言った。結局、あいつの味覚センサーが正しかったということか……。
進むほどに瘴気は濃くなり、俺達の薄い影がゆらゆらと揺れ始めた。
俺達は縦列になり、ノボを先頭に進み始めた。そのすぐ後ろを歩く俺からも、ノボの姿ははっきりとは見えない。
「ケイ、後ろ!」
その時マイが叫んだ。
その声に振り向いて目を凝らすと、自分の影がゆっくりと浮かび上がってきた。形を成して、剣士のような姿を現した。右手には、影でできた剣を持っている。
「シャドウナイトだよー!弱点は光―!」
ヨースが叫ぶ。俺はそれを耳に入れ、リクエストを投げる。
「コニー、剣を光強化してくれ!」
コニーは既に承知していたように、魔法の詠唱を始めていた。
「……シャイニングエンハンス・レベル6……」
コニーの魔法が発動すると、俺の剣が光を帯びる。
シャドウナイトは光を見ると、一瞬ひるむように影を揺らせた。
「今よ!」
マイの一声によーいドンするように、俺は反射的に踏み込んだ。
影の剣が振り下ろされるより早く、俺の剣が横一文字に走る。
――ザシュッ!
シャドウナイトは霧のように崩れ、消えた――
「ポニーさん、ありがとよ。」
俺は割と素直に御礼を言った。すると、
「……安心していいのかしら?」
コニーはダンジョンの奥の方を指さす。
「ノボが居ないよー。」
ヨースが悲痛な声をあげた。マイも心配そうに顔を曇らせている。
「進もう。」
俺達は、シャドウナイトを破った安堵感もそこそこに、歩みを進めた。
歩みを進めると、一分もせずに広い空間に出た――




