第15話 ダンジョンL-20層①
俺達は、ダンジョンⅬ17層攻略後も、数日掛けて地下ダンジョンⅬの攻略を進めていた。
ピンチもいくつかあったが、致命的なことはなかった。
そして、Ⅼ-20層まで到達していた。
「ふーっ、さすがに疲れたな。」
まだコニーが言うところの定時(午後6時)には及ばないが、俺達はジュニアオーガ3体を倒したところで、この日のクエストを終了することにした。
ダンジョンⅬ-20層は、見渡せるほどの広大なダンジョンで、木々や草はもちろん、湖まで存在していた。俺達は、その湖畔に陣取っていた。
俺が皆のテントを用意する横で、先程のジュニアオーガとの戦いで左腕に深めの傷を負ったマイが、自分自身にヒールを当てて、回復に努めている。
その更に後方では、ノボが太めの木の枝(というか細めの丸太)をアレンジして作った釣り具で、釣りをしていた。
「もうすぐ夕食できるから待っててねー!」
ヨースの声が聞こえる。
ヨースには悪いが、今日の夕食には期待していない。なぜなら、献立はモグラだからである。
……シャインモール……
ダンジョンの鉱石から発せられる光を主食とするモンスターだ。光る魔鉱石が点在するダンジョンなればこそ、割とどの階層にもいる。
すばしっこいだけで攻撃力は低く、害も少ない。
光を吸えば吸うほど、表皮が硬くなって倒しづらくはなるが、逆に脂が乗って美味しくなるというのがヨース談だ。ただ、その見た目も相まってさして美味しくない。もとい、既に食べ飽きたというのが本音のところである。
ノボはお腹が膨れれば何でも良い方だが、ここにきて釣りを始めたということは、やはりあいつも飽きているのだろう。
一方、コニーの方に目をやると……
いない……??
「マイ、ポニーの奴どこに行ったか知ってるか?」
「あっち見て。」
マイは右手でヒールを当てながら、傷を負った左腕で俺の後ろを指さした。
森エリアから、コニーがポニーテールを揺らしながら歩いてくる様子が見えた。
……何か両手に丸いものをいくつか抱えている。
コニーはその中の一つを投げ、見事マイのもとに着地させた。
「わー、リンゴだ! コニーありがとう!」
続けて、ノボにもリンゴを投げ渡す。
「これは、これは、ポニー様! ……して、俺のは??」
「私は『コニー』よ。欲しいなら別料金で1万ゼニ―になるけど?」
「はぁ? なんでそんな高えんだよ!」
「時価よ。」
踵を返すと、ヨースに声を掛ける。
「ヨース、これ、リンゴよ。あと、ダンジョンレモンがあったわ。あいつ以外の肉にかけてあげて。」
……こいつ、俺の嫌味を意外に根に持ってるな……。
すると、後ろでノボがポツリと言った。
「木が、引いてる。」
見ると、何か大物を当てたのだろうか、ノボが持っている重そうな丸太の枝の竿が引いている。ノボの力でも、なかなか引き上げられない。
「よーし、大物だ! ノボ、絶対逃がすなよ!」
ノボも、本気モードだ。目が「魚」の文字になり、文字通り目が泳いでいる。
ググっと力を入れて、精一杯手繰り寄せる。
「ふっふっふ、ポニーさんよ、ノボがやったぜ! ぜってぇお前には分けてやんねーからな!」
俺が子供じみた嫌味を言うと、
「……フンッ……」
ノボは一息気を吐き、とうとう「何か」を引き上げた。
「パシャッ……」
地面に着地したそれは……
――でっかいワニ??
ただ、そのワニは既に絶命していた。表皮の大部分が不自然にそぎ落とされ、肉塊はところどころ食われて、腐肉となっている。
「これ、食べれない。」
ノボが悲しい目をしている。
騒ぎを聞きつけ、ヨースが駆け寄ってきた。
ジーっとワニの死骸を観察すると、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「ノボ、すごいよー! これ、エルメクロコダイルだよー!」
……エルメクロコダイル? どっかで聞いた名前だな……。
「ほらー、この皮が残っている部分、コニーのバッグと同じ色だよー!」
ヨースが興奮しながら、コニーのバッグを指さす。
確かに、同じ色だ。模様も似ている。
しかし、俺の頭には一つの疑問がよぎった。
……何、もしくは、誰が皮を剝いだんだ??
腐敗は進んでいるが、エルメクロコダイルの皮は、食物連鎖で食われた感じではない。まるで、鋭利なナイフで切られているように見える。
「まさか、な。」
俺は自分で想像しておきながら、あり得ないと思い、頭を振った――




