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第七話 約束の星

本作をお読みいただき、ありがとうございます。

迫り来る闇の艦隊を前に、クリプトンとゼルグは未来への約束を交わします。

二人の友情が、物語の大きな軸となる大切な一話です。

 生命樹の塔に鳴り響く警報は、エルディア全土へ緊張を広げていた。

 穏やかな街並みを包んでいた優しい音楽は止み、人々は静かに空を見上げている。

 恐怖からではない。

 愛する故郷を守るという決意が、その瞳に宿っていた。

 クリプトンは生命樹の塔の最上階に立ち、宇宙を見つめていた。

 巨大な展望窓の向こうには、無限に広がる星々。

 その美しい景色の中を、黒い点がゆっくりと増えていく。

 闇の艦隊。

 その姿は、まるで宇宙そのものを侵食する病のようだった。

「予想より早かったな。」

 ゼルグが静かに隣へ立つ。

 その横顔には焦りはない。

 ただ、覚悟だけがあった。

「まだ避難は終わっていない。」

 クリプトンは低くつぶやく。

「だからこそ、時間を稼ぐ。」

 ゼルグは笑った。

「昔から、お前は変わらない。」

「誰かを守ることばかり考えている。」

 クリプトンも少しだけ笑みを浮かべる。

「お前もだろ。」

 二人は顔を見合わせ、小さく笑った。

 幼い頃から何度もこうして笑い合ってきた。

 学び舎で未来を語り合った日。

 生命樹の庭園を走り回った日。

 夜遅くまで星空を眺めながら、銀河の果てへ旅する夢を語った日。

 そのすべてが昨日のことのようによみがえる。

「覚えているか。」

 ゼルグが静かに口を開いた。

「十五歳の時、二人で生命樹へ登った日のことを。」

 クリプトンは笑顔でうなずく。

「あの日、お互い約束した。」

「どんな未来になっても、人々の希望を守ろうと。」

 ゼルグは懐かしそうに空を見上げた。

「子どもの約束だった。」

「でも、私は今も本気だ。」

 クリプトンはゆっくりと右手を差し出した。

「もう一度約束しよう。」

 ゼルグも右手を重ねる。

 二人の掌から柔らかな黄金色の光があふれ出した。

 生命樹が共鳴する。

 塔全体が優しく輝き始めた。

「どれほど闇が深くても。」

 クリプトンが言う。

「希望だけは絶やさない。」

 ゼルグが続ける。

「命が尽きても、魂は光を未来へ運ぶ。」

 二人は同時に空を見上げた。

 その視線の先には、小さな青い星が輝いていた。

「地球……。」

 クリプトンが静かにつぶやく。

「まだ幼い文明だ。」

 ゼルグが答える。

「争いもある。」

「悲しみも多い。」

「だが、あの星には無限の可能性がある。」

 クリプトンは青い星を見つめ続けた。

 なぜか涙があふれそうになる。

 行ったこともないはずなのに。

 まだ生まれてもいない時代なのに。

 魂だけは知っていた。

 いつの日か、自分はあの星へ向かうことを。

 その時だった。

 生命樹の塔全体が赤く染まる。

『警告。

 敵艦隊、第一防衛圏へ侵入。

 迎撃部隊、発進してください。』

 街中へ緊張が走る。

 展望窓の向こうでは、数百隻の光の戦艦が静かに飛び立っていく。

 人々は祈るようにその姿を見送っていた。

「行こう。」

 ゼルグが言った。

「この星を守る。」

 クリプトンは力強くうなずく。

「ああ。」

「そして未来も守る。」

 二人は光の剣を腰へ装着し、格納庫へ向かって走り出した。

 通路の両側には、多くの仲間たちが立っていた。

 誰も泣いていない。

 誰も絶望していない。

 皆が微笑みながら二人を送り出している。

「必ず帰ってこい!」

「生命樹の光は君たちと共にある!」

「希望を頼んだぞ!」

 その声援を受けながら、クリプトンは立ち止まり、静かに振り返った。

 エルディアの街は、黄金色の光に包まれていた。

 この美しい故郷を守りたい。

 この平和を、未来へつなぎたい。

 その願いが胸いっぱいに広がる。

 やがて格納庫の巨大な扉が開く。

 漆黒の宇宙。

 その彼方には、闇の艦隊が静かに迫っていた。

 光と闇。

 二つの運命が、今まさに交わろうとしていた。

第七話をお読みいただき、ありがとうございました。

クリプトンとゼルグが交わした「約束」は、この物語全体を貫く大切なテーマです。

光を未来へつなぐという想いは、時代や星を超えて受け継がれていきます。

次回、第八話「光の使命」では、エルディアを守るための戦いが始まり、クリプトンが自らの使命と向き合うことになります。

あなたの心にも、光の記憶がありますように。

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