第86話「本物」のタロットカードwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
天使に魔法陣の中へガルムを「ハウス」させ、佐藤さんからミニミ軽機関銃を受け取り僕の無限のバックに隠した。
とんでもないことをバレるようにやらかしてるのに「本物」達が全く慌ててないのにめっちゃストレスを感じたが証拠は問題なく隠した。
僕は元玄関だったあたりからサンダルを発掘すると、それを履いてパジャマのまま3人の「本物」達と学校へ向かった。
これからどうするんだよ。制服も教科書もないよ。
とりあえず学校でジャージに着替えて、先生に家が全壊したって説明するか。
あ、スマホは沙織が昨日僕の制服から抜き取ったままだから、スマホと無限のバックだけは無事残ったな。
沙織に後でスマホを返してもらおう。
3人の「本物」達は僕の家が崩壊したのにもかかわらず、どいつもこいつもマイペースに騒ぎながら歩いていた。
こいつら人の家を壊したことの重大さを絶対にわかってない。
でも「本物」同士のシンパシーがあるのか、この3人の「本物」は妙に仲が良さ気だった。
多分、今初めて3人で話してると思うんだけど、この全然バラバラに見える「本物」達はめっちゃうまく絡んでいた。
「差身君、ガルムが遊びたがってたから今度遊んであげて」
天使が僕によってきて無表情のまま僕を見上げながらそう言った。
「え?だって、さっき僕を殺すために、うちの家壊してたんじゃ…」
「違う。ガルムは差身君と遊びたがってただけ」
「そうなの?ガルムは昨日僕を殺そうとしてたけど…」
「犬は単純。昨日ガルムが負けたから、差身君の方がガルムより上の格付けになった。差身君の言うことは全部聞く。さっきも差身君を楽しそうに探してた」
おい…何が楽しそうに探してただよ…
あれはガルムがじゃれてた感じなんだろうね…
でも僕の家、なくなっちゃったじゃん!!!!
あと天使…ガルムが僕と遊んでいると、僕がいつの間にか死んでるじゃないのかな!!!!!
まあ大きさは違うけど、僕達の世界の犬も飼い主の家族にランキングをつけてるらしいし、魔界の犬も同じなんだろうね。
「のわあああああああああああああああっ!!!あの犬凄いね!ツインテールの家で飼ってるの?屋根くらいまである大きさの犬って初めて見たよ」
佐藤さんはめっちゃはしゃぎながら天使にそう言うんだけど、そもそもこの世にあってはならないガルムに違和感を覚えていない感じだった。
佐藤さん…あなたもなんでガルムを簡単に受け入れちゃってるのよ!
魔獣を見たら少しは怖がった方が良いんじゃないのかな!
警戒感なさすぎて、そのうちとんでもない事件を起こしそうで怖いんですけど!!!!!
「普段は魔界にいる。ガルムとはずっと友達。他の友達も魔界にいる」
天使は佐藤さんを見上げると無表情でつぶやいた。
え?まさか他にも色々呼び出せるのか?
あと何の躊躇もなく魔界とか言っちゃってるけど、どうしてみんな平然とした顔をしてるのかな?
というか、天使!おまえ、どうやって魔界とか行っちゃってるのよ?
「魔界凄い!魔界凄い!私にも友達紹介して!」
めっちゃ興奮している佐藤さんの前に割りこむように、沙織が病んだ笑みを浮かべながら出てきた。
「ツインテールよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwガルム以外にも仲魔がいるのかwwwwwwwwwwwwwwwwもう我々3人wwwwwwいや他の沙織達の手も借りてこの腐った世界を叩き壊すことも夢ではないなwwwwwwwwwwwwwwwまずはあの腐れ高校から壊滅させたいwwwwwwwwwwwwwwwww」
「沙織!私もリア充を殺すよ!ミニミの破壊力はオート25より凄いよ!あれを学校や駅のホームで撃ったら…」
何の躊躇もなく「絶対に言ってはいけない不文律」を犯しかけた佐藤さんに、僕の「死亡フラグ回避センサー」が唸りを上げて作動した!!!
「やめろおおおおおおおおおおおっ!!!それ以上言うなああああああああああああああああっ!!!結構これ見てる人が増えてるからああああっ!!!削除!!削除されるからああああっ!!!!佐藤さん!もう僕の許可なくミニミ軽機関銃を持ち歩いたら駄目だ!人を殺したらダメなんだあああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
消される!!!この世界がまた大宇宙の意志的な人達の手によって消される恐怖に襲われた僕は、そう叫びながら佐藤さんを後ろから羽交い締めにした。
するとなぜか佐藤さんは、特に抵抗することもなく満足そうに微笑んだ。
「えー、せっかくいつでも大量にリア充を殺すことができるようになったのに。でも差身君の扱い方がわかってきたな…あと私だけさん付けやめて。若菜と呼んで」
「じゃあそうする若菜ちゃん。天使も僕の許可なくガルムを召喚したらダメだ。これは約束してくれ」
「わかった」
天使は無表情で返事をすると、沙織は2人を気遣うように病んだ笑みを浮かべながら声をかけた。
「まあまあ2人とも差身を殺すにしても作法があるんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww明日は土曜日だから放課後にでもその辺のレクチャーを私の家でwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww何なら泊まっても良いwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww議題が山積み過ぎてこなすのが大変wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はどこかからコンバットナイフを取り出すと、クルクル回しながら病んだ笑みを浮かべていた。
楽しげに「本物」のガールズトークが続いていく。
めっちゃ僕の精神を削っていく「本物」達。
僕は廃人に追い込まれそうになりながらも、現実逃避しながら学校へ向かうのであった。
その日の授業は洗濯してロッカーに入れておいたジャージを着て過ごした。
先生に「家が全壊したから制服もないし教科書もない」と説明したら、あまり関わりたくなさそうにすぐ納得してくれた。
最近、僕と沙織に対して先生達は何故かよそよそしいのだ。
お昼は天使と沙織が作ってきたお弁当を食べたので飢えることはなかったが、親ともまだ連絡取れてないしこれからどうやって暮らしていくんだよ…
沙織はめっちゃ僕を自分の家に泊まらせたがっていて、どうすることもできないし今日は沙織の家に泊まらせてもらうことになるんだろうな。
少しで良いから休ませて欲しいんだけど、これで完全に無理になった。
気を抜くといつも以上に死ぬ危険性がある。
放課後、みんなが帰り始めた頃。
僕が天使の席まで行くと、不意に現れた僕を見た天使が慌てたのか鞄の中のものを床に落とした。
それはトランプみたいなものだったんだけど、そのカードに描かれたものはトランプの絵柄ではなかった。
そのトランプのようなものを拾い上げた天使に僕は話しかけた。
「天使、それは何?」
「タロット」
僕は天使を驚かせないようになるべく優しく聞くと、天使は無表情で僕を見ながらポツリといった。
へー、見たことはないけど聞いたことあるな。
タロット占いとかって確かあったはず。
天使も占いとかするのかな?
「天使もタロット占いとかするの?今度占ってもらおうかな」
僕は何の気なしにそう言ったんだけど、しばらく天使は黙って僕を見つめていた。
あれ?何か悪いこと言っちゃったかな?
天使からの無言の圧力に押され僕も何も話せなかった。
ちょっと僕が心配していると、天使は立ち上がり僕に詰め寄るように近づいてきた。
「タロットは危険。差身君、簡単に占ってはいけない…」
天使はいつもの無表情で、いつもの小さな声で、僕を見上げながらそう言うんだけど、その言葉はどこかいつもとは違う重みを感じた。
禁忌に触れた者を戒めるような感じ。
普通の人間が知ることさえできない「本物」の神秘の世界を知る天使。
それはシャーマンが神のルールを犯した民に警告するようであった。
この「本物」のタロットが「本物」の事件を起こすきっかけになるとは、まだ僕は気がついていなかった。




