第85話「本物」の自由な「本物」達wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ガルムに襲われた翌朝、僕は過労死しそうな体を何とか起き上がらせた。
カーテンを開けずに電気もつけていないので暗い部屋の中でベッドに座り込み、昨日起こった新たなる「本物」の事件を思い返していた。
自分でも気がついてはいるんだけど、さっきからずっとブツブツ独り言を言っていた。
ガルムとかないから…リア充パーフェクト殺しでガルムを倒すとかもっとないから…
そもそも魔法陣から魔獣が出てくるとかないから…好きな人を殺すために魔獣呼び出すとかないから…
でもそれ以上に天使が「本物」の魔術で「本物」の魔獣を呼び出し、その魔獣で僕を「本当」に殺そうとしたことの方が印象深い…
あいつ「本物」の魔女なのか?
ああああああああっ!魔獣まで僕を殺そうとする!
ファンタージが!!!ファンタジーがあああああああああああああああああああああああっ!!!!!
ファンタジーにまで殺されそうになる!!!!!
異世界が僕を襲ってくるんですけど!!!!!!!!!!!!!!
天使にも色々聞かなくてはならないことが増えてきたな…
あと沙織の言うことを真に受けないように言い聞かせないとな…
そして、まあいつものことなんだけど、時計が6時半を指した時、けたたましい車のエンジン音が外から聞こえたかと思うと、何かとぶつかったような衝突音が聞こえた。
ギュィィィィィィィィィィン!!!と僕の「死亡フラグ回避センサー」が作動し、いつものように無限のバックを手に取るとめっちゃ素早く窓から屋根に駆け上った。
おい…こっちは疲れてるんだよ…
体もいっぱいいっぱいなんだけど、精神的に回復しきれてないんだよ…
普通は魔獣を見ちゃっただけでも、狂いそうになると思うんだよね…
どうしてガルムに僕を襲わせた6時間後にまた殺しに来るの?
ペース早くない?っていうか、お菓子でも食べるようなペースで殺しに来るっておかしいって!!!!!
僕は屋根から下を見下ろすと、乗用車がうちの門を破壊して庭の方に突っ込んでいた。
あー、あれ間違いなく爆破するよ…
何回かこのパターンあったよね…
自動車に近づいたら駄目だ…あの中に爆弾が仕掛けられているから…
そして僕の予想は当たった。
見事に庭に突っ込んだ乗用車は轟音とともに火に包まれた。
「のわあああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」
何度も聞いた佐藤さんの雄叫び。
しかし、響き渡る銃声音はオート25と違い、めっちゃ凶悪なものであった。
ズババババババババババッバッ!!!!!と銃弾が連射される音とともに、家のガラスや窓が破壊される音が聞こえてくる。
それと同時に家の周りで次々と爆破が起こったんだけど、いつもより火薬の量が桁違いで「ガゴンッ!!!!」となんか家が傾いて屋根が斜めになった。
「ニャンパスウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
姿は見えないがめずらしく攻撃中に沙織の声が聞こえてきた。
めっちゃ興奮して移動してるみたいだけど、今日はやり過ぎなんじゃないんですか!!!!
これもう修理とかそういうレベルの問題じゃなくなってるよ!
君達のやってることは「ニャンパス!!!!」とか叫んで許されるレベルじゃないと思うんだけど!!!!
あーあ、どんどん爆破してるし、銃撃音も鳴り止まないよ!!!!
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!」
あたりを震撼させるこの世のものとは思えない咆哮。
地球上の生物の枠を超えた大きさの生き物が家に向かって走ってきた。
あれは?ガルム?!昨日倒したガルムがなんか蘇ってるんですけど!!!!
ああああああっ!これ駄目だ!屋根の上も無理だ!!!
逃げるぞ!!!!避難するぞ!!!!!
僕は屋根から一気に下まで降りると、隣の家の屋根に駆け上り、その影に隠れ自分の家の様子を見た。
ガルムは近くに来ると一気にうちの家に跳びかかっていった。
家の半分以上がそれで吹っ飛ぶと、ガルムは残った家の部分に噛みつき食いちぎり、その残骸を他所の家の方に放り投げた。
前足でガシガシうちの家を踏み潰しては、僕の家を容赦なく破壊していく。
あれ?ガルムの背中に何かいるって思ったんだけど、天使が無表情でガルムに乗っていた。
うん、それ新しいよ!天使は魔獣を乗りこなしてるんだね!
魔獣に乗って僕を殺しにやってきたんだね!!!
あーあ、何かガルムが僕の家を壊してるし…
お父さんとお母さんとうちのねこはちゃんと避難したのかなあ…
近所の方すみませんね…でも僕の家が悪いんじゃないんですよ…
ガルムがいけないんですよ…魔獣が僕の家を壊してるんですよ…
でも元はといえば、あの親子が天使に余計なことを吹き込んだから、こんな「本物」の事件を引き起こしたんだよな…
僕が震えることもできず、自分の家がガルムに破壊されていく様子を固まってみていると、僕の背中にボンッと誰かが飛び乗ってきた。
寝そべって身を潜めてた僕の背中に重みが加わる。
こんなことする奴は1人しかいないし、この感触は間違いなく沙織だった。
「差身wwwwwwwwwwwwwwwwwなんか大変なことになったなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は病んだ笑みを浮かべながら、そんなに慌てた様子もなく、むしろ興味津々な感じで話しかけてきた。
「おい…沙織…家なくなったぞ…どうするんだよ…ガルムが壊してるぞ…」
「ああwwwwwwwwwwwあの魔獣生き返ったみたいだなwwwwwwwwwwwwwwww差身の家はパパが直すから安心してくれwwwwwwwwwwwwwwwwwwwいやもうここまで来ると建て直しだなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwそれよりそろそろ止めに行かないと色々面倒なことにwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「そうか…佐藤さんと天使を連れてきたのは沙織なのか?」
「いや?wwwwwwwwwwwwwwあいつら勝手に集まってきて勝手に差身の家を壊してるだけだぞwwwwwwwwwwwwwwww全部私のパパが直すわけだがwwwwwwwwwwwwwwwwあいつら頭がオカシイのかもしれないなwwwwwwwwwwwwwwwww堂々と差身の家を破壊しているwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww魔獣も見せびらかさない方が良い気がするwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
めずらしく沙織の言うことが正論に聞こえてきた。
そうだよ…もっとこう沙織みたいに見つからないようにやりなよ…
魔獣も現代兵器もここにあったらいけないと思うんだけど、おまえたち見つかる心配とか全くしてないでしょ!!!!
「そうだな沙織。じゃあ、そろそろ止めに行こうか…」
僕と沙織は他所の家の屋根から降りると、僕の家で暴れてるガルムの元へ走った。
全く沙織の言う通りだよ…車に爆弾仕込んで突っ込ませたのと家の周りを爆発させてたのは沙織なんだろうね。
それだけならここまで酷いことにならなかったよ。
でも、その爆破ですらいつも以上に炸裂してたんだよな。
いわゆる「魔法少女の定理」が発動してる。
「魔法少女1人=1人分の魔法少女のパワー」だけど2人なら「魔法少女2人=4人分の魔法少女のパワー」3人なら「魔法少女3人=9人分の魔法少女のパワー」になる。
つまり魔法少女の人数が増えるたびにそのパワーは自乗されていくわけだ。
正義の心が増えれば力が増すんだろうね。
だがしかしこの場合は「本物」が集まると心の闇が高まり勢いが増し「本物」のパワーが自乗されていくんだ。
「本物=沙織」と定義して…つまり今は「沙織9人分」の「本物」パワーが炸裂している最中なのだ。
僕は今ここに名付けるよ…「『本物少女』の定理」と…
しかしまさか沙織が「あいつら頭がオカシイ」とか言い出すレベルの「本物」の事件が起きるとは思ってなかったよ!!!!
僕達が暴れるガルムのそばに駆けつけると、沙織はどこからかデザートイーグルを取り出し空に向けて2発ぶっぱなした。
ガルムは動きを止めるとこちらをゆっくりと振り返り、天使がガルムの足のつかまりながら下まで滑り降りてきた。
「おいwwwwwwwwwwwツインテールwwwwwwwwwwwwwwwwwやり過ぎだwwwwwwwwwwwwwwwwwwww殺すにしても作法があるんだwwwwwwwwwwwwwwwwwそろそろ学校に行くぞwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は天使に近づくと病んだ笑みを浮かべながらそう言った。
「わかった。気をつける」
天使はいつも通り無表情で沙織を見上げた。
「天使…ガルムは生き返ったのか?」
僕は昨日リア充パーフェクト殺しで殺したはずのガルムが蘇っているのが気になっていたので天使に聞くと、天使はゆっくりと僕の方を見上げた。
「地返しの玉を使った。全部回復」
天使は小さな声でそう言うと、めっちゃ沙織が笑い出した。
「うういひひっひひひっひひいいいいwwwwwwwwwwwwwww地返しの玉wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 女神転生wwwペルソナwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwなんでゲームの中にしか存在しないアイテムをツインテールは持っているんだ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「応用した。簡単に手に入った。色々実験中」
「そうかそうかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwツインテールは色んなことができるんだなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
感心したように病んだ笑みを浮かべる沙織。
そして相変わらず無表情な天使。
しかし噛み合わなさそうな2人ではあったが、2人しかわからない感覚でもあるのか気持ちは通じあっているようだった。
僕には良くわからなかったんだけど、どうやら天使がこの世の中にあってはならないものでガルムを蘇生したのは間違いないようだ。
「若菜ちゃんも出てくるんだ!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww早めに学校に行って会議を行うwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww議題が山積みwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織がそう言うとどこからか佐藤さんがオート25なんかよりめっちゃ大きい銃を持ってやってきた。
「沙織!このミニミって凄く使いやすいよ!この軽機関銃、凄くかわいい名前だけどリア充を一気に倒せるね!」
佐藤さんは満足そうに手に持つ銃を眺めた。
今までは手のひらサイズの短銃オート25を佐藤さんは使ってたんだけど、今佐藤さんが手にしている銃は軍人の人達が戦争で使っているような「本物」の銃だった。
「ああwwwwwwwwwwwwwwwそれ自衛隊も使ってるぞwwwwwwwwwwwwwwwwミニミ軽機関銃は仕入れやすいが使い勝手は良いwwwwwwwwwwwwwwww若菜ちゃんは銃の扱いがうまいなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「うん、今日でだいたいどれくらいの火力があるのかとか、実際の射程距離とか、よくわかったよ!銃は撃てば撃つほどうまくなるから頑張るね!」
佐藤さんが嬉しそうにそう言うんだけど、めっちゃいい話で終わらせようとするんだけど、3人とも楽しそうなんだけど、僕は重要なことを伝えるために折れかかってる心を奮わせて佐藤さんの銃を持つ手を握った。
「ねえ…みんな…頼むから銃とガルムを隠してくれ…捕まるから…こんなことしたら駄目だから…」
僕がなんとかそう言うと、3人は不思議そうな顔で僕を見た。
頼むよ…理解してくれよ…早くここから逃げ出した方が良いと思うんだよ…
あまりのことに思考が止まっていたが、僕はあることに気がついた。
沙織がみんなに学校に行こうと声をかけているのだ。
めちゃくちゃな状態ではあるんだけど、沙織も「本物」の友達が増えてきて学校が楽しくなってきたのだろうか。
また1つ、沙織の中で何かが変わったのかもしれないな。
しかし、まだ僕は「『本物少女』の定理」を甘く見ていた。
このまま、何とか縛り付けて国家権力に裁いてもらうべきだったかも知れない。
「本物」達が集結するということがどういうことになるのか、僕は思い知ることになるのであった。




